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Black Number
始まりの謳
―西暦2XXX年
人口の著しい減少に伴い、大和(やまと)帝国政府は国の存続と人類生命維持の為、国内を『A.F.G.T.S』の5つの区域に分断し子宮レベルに及ぶ国民管理を開始した。
また1つの区域はA〜Eまでの地区に分けられており、その全てに政府管理局が設置され地区間の移動や移住も厳しく制限されている。

分けられた区域の内の一つ F-Town
5つの区域の中で最も治安が悪く、犯罪者やGA(Government Arrangement)のたまり場になっていた。これ以上の危険要素の集蓄と他地域への犯罪の流出を恐れた政府はF-Townのみの特別法として犯罪者に賞金を掛け犯罪の抑制を狙った。
 










《F-Town A地区 》 

「ハァハァ…此処ま、で来れば…」
薄暗い路地の一角に男は倒れ込むように逃げ込んだ。
息を切らし、恐怖に満ちた瞳で仕切と辺りを見回している。男は辺りに人影が無いことを確認すると、震える身体を慰めるように抱き壁に背を預けた。
「は、はは…やっと巻けた」
―…ズゴォォオッ
「ッ!」
男が安堵の息を吐こうとした瞬間。向かい側の壁が吹き飛んだ。
「な…」
「やっと見つけたぜ。ちょこまか逃げやがって、いい加減諦めろよオッサン。」
舞い上がる土煙の中、吹き飛んだ壁の先から一人の青年が姿を現した。
深紅の短髪に漆黒のシャツ、橙のツナギを腰で纏め些か幼さの残る顔には左目の下に牙の形を模したペイントが施されている…
青年は口許に笑みを浮かべながら、驚愕の表情を浮かべる男に近づいて行く。
「―ッ、は、化け物かよ…テメェ…っ糞がぁ!」
恐怖が限界に達した男は背を預けていた壁から勢いよく飛び出すと懐に隠し持っていたナイフを出し、額に血管を浮き立たせ発狂しそうな叫び声を上げながら目の前に立つ青年に切り掛かって行った…
「遅いんだよ!」
青年はひょいと身を翻し男のナイフを避けると直ぐ背後へ回り込み、そのまま背中を蹴り上げる。
―…バキィイ
宙に舞う男の身体からは骨の砕ける鈍い音が響き、その後グジャッと蛙が潰れる様な音を立てながらアスファルトへ叩き付けられる。
青年は自身の頬に付いた生暖かい深紅の血を指で拭い、もう虫の息である男に近づいていく。

「たっく俺様のどこが化け物だっつの…冥途土産によく覚えとけよ。陽(よう)って名前…」
陽は血と涙で覆われ切望と恐怖に歪む男の顔を愉しそうに眺めながら…ゆっくりと距離を詰める。
―…スパァンッ
「ッ…!」
陽が男に到達する前に空間を切り裂くように鋭く響いた銃声が男の頭を貫いた。
全く動かなくなった男の身体…打ち抜かれた頭からは中身が飛び散り、アスファルトには深紅の水溜まりが広がっていく…
陽はすでにタンパク質の塊となった人間であったモノを見下ろす。
「ぁ…あぁああーッ!」

先程まで笑みを浮かべていた表情を歪ませ自身が壊した壁の方へと身体を翻すと、その先に立っている青年を見た。
「クロ!また美味しいとこだけ取りやがって!」
「よーちゃんが早く仕留めないのが悪いんでしょ?それにどっちが仕留めたっ
てオレ達の手柄に帰り無いんだから、文句言わないの。」
さらりと交わされた会話。
―クロと呼ばれた青年。肩まで無造作に伸ばされた銀髪、半分程チャックが開けられた白のパーカーの下からは黒のシャツが覗いている。陽よりも少し大人びた精悍な顔は細められた瞳の下に96のペイントがあり、愉快そうな笑みを浮かべていた。
「そんなこと言って、毎回トドメだけクロが刺してんじゃん!」
―ずりぃ…と呟いた陽の顔はぶすっと膨れとても幼く見える。そんな陽の姿に漏れる笑いを隠しもせずクロが近づいてくる。
 「ほら、そんなに拗ねないの。今日の夕食はよーちゃんの好きな物にしてあげるから。」
くしゃり…と優しく頭を撫でてやりながら言葉を繋げば、先程まで膨れていた陽の顔が簡単に笑顔に戻る。
「よっしゃ!じゃぁ今日はハンバーグとシチューとデザート二つな」
「はいはい、でもまずは仕留めた賞金首引き渡さなきゃだからね。」
「分かってるよ、チャッチャと引き渡して賞金貰おうぜ?」
微かな火薬と生臭い錆の臭いが充満する薄暗い空間に似つかわしくない明るい会話。二人は静かに男の亡骸へと視線を流した。

―…賞金稼ぎ

政府公認のハンターIDを持ち、賞金首を始末する事で生活をしている者。
ID取得には政府が定期的に行っている試験を受ける必要があり、政府担当者の面接と戦闘能力検査に基準点以上で合格した者のみ正式に賞金稼ぎとして認められる。
賞金の支払いは賞金首を仕留めた後、支給されている携帯から大和帝国上空にある管理衛星に自分のハンターIDと賞金首の手配番号を発信する。衛星が賞金首の本人確認と生命活動停止を確認後自動的に指定の預金通帳に賞金が振り込まれる仕組みである。
ハンターIDを持つ者に限りF-Town内の自由な移動が認められている…。

 …日々生と死の狭間に立つ者達…


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あきゅろす。
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