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Black Number
狂った世界。狂った僕等。H
やっと前方に目的の部屋の扉が見える。陽は蹴破らん勢いで扉を蹴り上げた。

…バァアアンッ!

意外にも扉は呆気なく開き二人は中に飛び込む。
陽は部屋に入るなり、続けて雪崩れ込もうとする人形達の姿を確認し急いで扉を締め、開かぬよう固定させた。

―ガタガタと音を立てながら歪む扉。


しかし開く様子はなく、陽は身体の緊張を解すようにハァ〜…っと大きな息を吐いた。






「よーちゃん、安心するのはまだ早いみたいよ…」
「え?……ッ」


クロの言葉に吐いていた溜息を飲み込み、陽は扉から部屋の中へと視線を流す。

西洋チックなシャンデリアにレトロな雰囲気で統一された部屋…そこには、廊下に長々と飾られていた作品達とは比べモノにならないくらい、鮮やかに艶やかに飾られた人形が並べられている。





―その中に佇む男…





「リアス…J.シフォードッ」

男の姿を視界に入れるなり陽はクッと構えを取る。
人形達に囲まれ嫌な微笑みを浮かべている男。正気を失った濁る瞳で二人を映し、うっとりとするような緩やかな手つきで人形を撫でていた。

逃げる様子一つしないその姿に、クロは歪ませた表現を、更にピクリと引き攣らせる。



「オレ達が乗り込んで来たのが判ってて、逃げ出さないんだね…そんなに狩られたかった?」


真っ直ぐにリアスを睨み付け、冷たく突き刺すような声色でクロが呟く。


「…ハハ……逃げる必要なんてないだろう……ここが私の居場所……私の最高の舞台なのだから。フフフ、ハハハ」


男はゆったりとした口調で答えた。クロと視線を交わられていながら全く怯えを見せない瞳…二人はピリピリと肌を突き刺すような雰囲気に包まれる。



「………」
「………クフフ…」


睨み合ったまま動かなくなったリアスとクロ。





「チッ、だったら……その最高の舞台とやらの上で死なせてやるよっ!」

二人の様子にたまり兼ねて、陽は瞬時に床を蹴りリアスへと突っ込んで行った


「ハハ、ハハハ…
さぁ…舞い踊りなさい…私の作品達よ!」

陽の拳がリアスに届く直前、リアスの挙げた声に答える様に辺りにあった人形達が一斉にカタカタ動き始める。
「おいおい、またかよ!」
後少しの所で再び人形に襲い掛かられた陽は恨めしそうに言葉を吐き捨て一歩後方に飛びのいた



―カタカタ…バキィッ

ガッ…



―陽の周りに広がる人であったはずの残骸達。

「クロォ!コイツらどうなってんだよっ…つうか、何で俺にだけ群がってくんだって!このッ」

陽は己に次々と襲い掛かって来る人形達を片っ端から破壊しつつ声を張り上げ、クロへと視線を流す。
―しかし、クロは必死な陽の問い掛けに答える事なくじっとリアスを見詰めていた。リアスも微笑みを浮かべたままクロだけを見ている…



「……ふぅん、なるほどねぇ…」
静寂を破ったのはクロであった。
リアスに向けていた視線を相変わらず無茶苦茶な戦い方…しかし、確実に人形の数を減らしていっている相方の方へとむける。


「あれは大方、紐の見えない操り人形…ってとこか」





狂ったように唯ひたすらに襲い掛かってくる人形の正体…
―それは体内に埋め込まれたiCによりリアスの使っていたコンピューターから送られる電波で動かされている。

憐れな操り人形…―



「ははは…その通りだよ。賞金稼ぎ君……美しいだろ、私の作品たちは。まるで舞い踊る天女のようではないか……ふふ、ははは」
「さぁね、俺には唯の気持ち悪いガラクタにしか見えないんだけど…?」
「気持ち悪いとは酷いねぇ…君ならこの美しさを分かってくれると思ったのだが…フフフ」
「……何?」










「フフ、君は私に似た目をしているからねぇ……」

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