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短編
死亡フラグ?

死亡フラグ?

目を見開き、真っ直ぐと空を睨み付ける。
掌で目の前を覆えば、ゆっくりと閉じられた。
ポツポツと雨が降り始める。
銜えていた煙草が雨に濡れ折れた。
「名前」
「あぁ…」
折れた煙草を放り投げ立ち上がる。
「わりぃ、俺のせいで囲まれたか」
落ちていた刀を拾い上げ辺りを見回せば天人に囲まれていた。
仲間が死んだからといって気を落としすぎた。
俺のせいで生きている仲間まで危険に合わせるなんてな…。
「気にすんな、こんくらい平気だろうよ」
伊達にここまで生き残っちゃいないさ。
なんて…強がりにしかきこえねぇよ。
こいつらが死んで一番辛いくせに…。
「そうはみえねぇな、特に銀時は」
「そう思うなら戦って!」
必死で血路を開こうとする銀時に冗談交じりに言えば天人を切りながら応える。
うわぁ〜余裕ですか。
さすが白夜叉と呼ばれてるだけあるな。
「あ〜はいはい、戦うって」
適当に銀時に返事を返しながら襲ってきた天人を斬る。
勢いよく刀を抜けば血を盛大に被った。
チラッと銀時を見れば、銀髪が血に染まっていく。
嫌だなぁ…。
「なぁ、銀時」
「何だよ!いい加減集中しないと斬られるぞ、コノロヤー」
悪態付きながらも返事を返す銀時に僅かに笑みを浮かべた。
俺は銀時が血に濡れるのが嫌なんだ。
天人の血なら別にいい。
でも…自らの血でその銀髪を染めさせはしない。
だから、こいつらは俺が斬る。
銀時の後ろに居た天人を斬り、銀時と互いに背中合わせになった。
「俺達は帰れると思うか?」
本拠地に…平和な時代に…。
全てのことをさしながら聞く。
「さぁな」
銀時にしては曖昧だった。
当たり前だ…。
こんな戦場で帰れるなんて豪語していた奴は直ぐに死ぬ。
死亡フラグだからな。
「安心しろよ、銀時は絶対に帰れるからな」
「その自信は何処から沸いてきたんだよ」
死亡フラグね。
大いに結構じゃねぇかよ。
「俺が銀時だけは死なせない」
銀時の返答には答えずに言い切れば後ろで固まった気配がした。
「なに言ってんの!格好良いつもりですか?うわぁ恥ず、なんか銀さんが恥ずいんですけど、こんな時にキャラじゃないこと言わないで下さい、ホントマジで」
盛大に突っ込んでくる銀時に笑った。
こんな場所で本当不謹慎だよな。
でも、今じゃなきゃ言えない気がしたんだ。
「いや、男なら惚れた相手に一度は言ってみたいもんだろ」
「な、なんだよそれ、こんな時に死亡フラグ立ててんじゃねぇよ!死にたいのかよ!!」
怒りながら天人を斬っていく銀時に合わせて俺も動く。
天人を斬りながら、なんで俺も死亡フラグを今更立てたのか考えてみる。
けど、その答えは直ぐに解った。
死ぬと解ったからだ。
俺も遠くない未来に自分が斬った奴らと同じ様に死ぬ。
仲間の死を見てそう直感した。
だから、後悔しない様に言っておきたかったんだ。
「別にそういう訳じゃ…って銀時!!」
銀時の後ろから迫る刃…時間が止まった様に思えた。
俺が守るって言ったそばから油断してるんじゃねぇよ。
なんて思う前に身体が動いていた。
ザンッ
銀時を突き飛ばした直後に刃が振り下ろされる。
熱の様な熱い痛みが感じられ斬られたのは直ぐに解った。
「名前!!」
必死な銀時の叫びが聞こえる。
言っといて良かったなぁ。
なんて事を本気で思った。
「おい!言いたい事だけ言って死ぬんじゃねぇよ…俺の返事はどうでもいいのか!!」
どうでもいいね…。
そんな訳が無い。
銀時じゃなければ誰にどう思われてもどうでもいい。
好きな奴にどう思われてるのか気にならない訳無いだろ。
「だったら言えよ」
刀を持ったまま、斬られた腕を強く掴む。
掠った程度だが一応止血しとかないとな。
「おまっ、普通に生きてるんじゃねぇよ」
銀時の焦りとは裏腹に普通に立ち上がった俺に逆切れしてくる。
まぁ、死亡フラグ立てといてあのタイミングじゃ死んだって思われても不思議じゃねぇからな。
「あの程度じゃ死んでらんねぇよ、それで銀時は「ぜってぇに言わない」そうかい、んじゃ帰ろうかお姫様」
再度、返事を聞いてみるが銀時は頑なに拒否をする。
無理に聞くつもりはなかった。
けど、頑なな銀時に嫌がらせぐらいはとお姫様呼ばわりをしながら手を差し出す。
俺たちの周りにはもう屍しかいない。
今回はちゃんと二人とも帰れるんだ。
「誰がお姫様だ!」
バシッと差し出した手を払いのける。
素っ気無く先に歩き出す銀時の背中を見詰める。
逞しい背中、守られるじゃなく何かを守ってきた。
そんな力強い銀時を俺が守るなんて事できないのは知っている。
俺は銀時や高杉…皆より弱い。
今生き残っているのが不思議なくらいにな。
だから…。
「死ぬ前には返事をくれよ」
小さく呟きながら銀時の横を通り過ぎる。
銀時が立ち止まり、小さく息を呑んだのはわかった。
振り返れば返事をくれるかも知れない。
そうは解っていても俺は振り返る事はしなかった。
死亡フラグを立てたんだ。
報われるのは死ぬときって決まってるだろ、なぁ銀時?



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