触れたいと思う

 神羅屋敷を抜け出してから、クラウドに触れる事が多くなったと思う。もともと俺はスキンシップの激しい奴で、今はクラウドが自分では動けない状態なんだから、当然と言えば当然かも知れない。だけど、違う。
 俺の横で静かに寝息を立てるクラウドの髪を分け、頬を撫でる。確かな温もりが心地良くて、もっともっとと求めてしまう。

「ん…」

 首に手を滑らせると、クラウドが息を漏らし薄く唇を開いた。薄紅色の唇、小さな隙間から覗く白い歯と赤い舌。触れたくなって、唇を親指でなぞる。もう片方の手を服の裾から差し入れようとしている自分に気付き、慌てて離れて頭を横に振った。

「こんなの、違う」

 親友とのスキンシップの域を、疾うに越えてしまっている。
 横目でクラウドを見やれば、白い肌が目に付いた。瞬時に掌に残った肌触りの良さが思い出され、触れたくて仕方なくなる。拳を握り、可笑しくなりそうな頭に押し付け俯いた。
 クラウドが喋れないから、動けないから、触れ合う事で温もりを確かめたくなるのかも知れない。最初はそう思っていたけど、どんどんエスカレートしていく欲求を異常だと思い始めた。
 髪を撫でても、頬を撫でても、触れたくて触れたくて仕方ない。もっと、もっと、もっと、温もりを感じたくなる。
 女への欲望とは違う。でも、勢いで抱いてしまいそうな、危険な欲求。

「……トモダチ、だろ…」

 小さな声で呟き、自分に言い聞かせる。握った拳に力が入り、爪の刺さった掌から生温い物がじわりと滲んだ。


end

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あきゅろす。
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