剣
廃墟と成り果てたミッドガルの近くにある小高い丘の上、そこには一本の剣が突き立てられていた。
一台のバイクが大きな音を立てながら近付いてきて、剣から少し離れた場所で停まった。金髪の青年がバイクから降りて歩み寄ってくる。
「…ただいま」
そう剣に語り掛けたのは、一人の運び屋だ。彼は荷物の配達を終えるとエッジに居る家族より先に剣に「ただいま」と言う。
「今日は、チョコボファームに行って来たんだ」
剣に背を預けて座り、まるで家族に今日あった事を報告するように話し始める。
「あんた、昔よく俺に似てるって言ってたよな」
クスクスと笑う声は、まるで友達とでも話しているように楽しそうだ。
「なぁ…」
大分錆びてきた、昔は白かっただろう大剣を指先で撫でながらどこか思い詰めたような顔になり、一瞬視線を彷徨わせる。崖の先に見える崩れ、廃れたミッドガルを見て皮肉げに笑んだ。
「幸せ、だったよな…俺達」
片足を立てて膝の上で腕を組み、ポツリと呟く。
「何で…もう、居ないんだろうな」
それが誰に対する、どんな感情から漏れた言葉なのかは判らない。
廃墟と成り果てたミッドガルの近くにある小高い丘の上。地面に突き立てられた一本の剣が、預けられた背中の重さに微かに軋んだ。
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