初任務
「あ…俺、明日任務だから」
夕飯を終えリビングでそれぞれ寛いで居ると、クラウドが突然そう言った。ソファでテレビを見ていたザックスの笑い声が、ぷっつりと途切れる。
「…訓練期間はもう、終わったのか」
「うん、明日からは殆ど任務」
「………、場所は」
押し殺したような声でザックスが尋ねる。
「スラム」
「内容は」
単語だけの会話は、まるで任務中のような重い空間で行なわれる。
「大した物じゃないよ。反神羅組織が動くって情報があるらしくて、一応警備しとけって感じの…」
「馬鹿。そりゃ警備兵は何もなければ安全だけどな、何かあれば巻き添えを食らう可能性が高いんだぞ」
「…解ってる、よ」
「油断するなよ」
そう言うとザックスはソファから立ち上がり、テレビを消してさっさとベッドルームに引っ込んだ。残されたクラウドは何だか嫌な気持ちが冷めず、ザックスを追ってベッドルームに入る。
「ザックス?」
暗い部屋に入ると、ザックスはベッドに座ってクラウドの事をじっと見詰めてきた。
「クラウド…」
酷く無表情で、低い声でクラウドの名を呼ぶ。クラウドがゆっくり近付くと、細い腰をそっと抱き寄せた。
「………頼む、から…」
腰に両腕を回しながら呟く声は、弱々しく擦れている。
「…無事で、帰ってきてくれよ…」
クラウドは大袈裟だと言おうとして、止めた。決して大袈裟ではない。どんな任務にも、いつでも死ぬ可能性は付いている。
「………うん……」
クラウドの腰を抱き締め、縋り付くように頭を押し付けてくるザックス。クラウドはその肩や腕が震えているのに気付き、そっとザックスの頭を抱き締めた。
溢れそうな涙と嗚咽は、息を飲んで必死に堪えた。
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