朝食

 失敗した。

「…頂きます」

 俺は今日少し寝坊して、今から朝食を食べる。テーブルを挟んで向かいの椅子には、既に食べ終えて笑顔で俺を見詰めるザックス。

「ん、好きなだけ食べたら?」

 やたらニコニコして俺の目の前にあるコーンフレークの箱と、ミルクと皿とスプーンを指差す。

「…ザックス…」

「ん?どうした?」

「……俺…」

「俺が作った飯なんか、食いたくないんだろ?」

「………」

 本当に失敗した。寝起きで機嫌の悪かった俺は「早く起きないと飯が冷める」としつこく言ってくるザックスに、つい「ザックスが作ったご飯なんか要らない」と言ってしまったんだ。

「………」

「ほら、食えよ。嫌なら自分で何か作れば?」

「ザックス……ごめん、その…あれは弾みで…」

「別に良いって。食いたくないなら無理して食わなくても」

「…じゃなくて、その…」

 あくまで満面の笑みは崩さないザックスが憎らしい。でも今回は完璧に俺が悪い訳だし、ザックスも折れそうにないし。

「俺、あんたが作ったご飯…好きだから」

 一人で暮らしてた頃は毎朝コーンフレークが普通だったのに、今ではザックスが作ってくれたご飯じゃなきゃ嫌なんて。俺の半分寝言みたいな言葉にザックスが怒ってるのが悲しくて、何だか自分が情けなくて涙が滲んでくる。

「…泣くなよ」

「……っ」

 仕方ないなって感じに苦笑しながら俺の頬に手を伸ばしてくるザックスに、安心して益々涙が滲んできた。

「ごめん、ちょっと傷付いたから意地悪した」

「っ……俺も…ごめん」

 大きな掌に後頭部を包まれて引き寄せられて、目元に優しくキスを落とされる。もう少し落ち着いたらもう一度謝って、俺に朝ご飯用意してってお願いしよう。きっとザックスは叶えてくれるから。


end

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あきゅろす。
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