本当に救いたかったのは金色の

 銃声が響いた後、身体が軽く宙に浮いた。俺達の逃亡、最後の最後。これで終わりか。
 身体が勝手に倒れていく間がやけに長くて、懐かしい事を思い出してた。

 小さい頃、ゴンガガであった小さな祭り。近所のオッサンが、小さなビニールプールで金魚掬いやってて。近所のよしみだって、一回ただでやらせてくれたんだ。
 一匹だけ金色の、小さいくせに粋がいいのが居て。他の赤いのなら何匹でも掬えるのに、そいつは本当になかなか掬えなくて。俺は自棄になってそいつを掬おうとしてた。
 でも気付いたらもう遅くなってて、祭りはもう終わりで。オッサンがどうせもう終わりだしやろうかって言ってくれたのが、何だかやけに悔しくて。俺は子供っぽく断って、何匹かの赤い金魚の入った袋を持って家に帰って。次の日、適当に女の子に全部あげた。

 簡単に掬える奴程、どうでも良くて。なかなか掬えない奴程、救いたくて。
 ああ。俺、意地っ張りで不器用なお前が大好きだったよ。

 ごめん、な。

 もう、何も見えない。何も聞こえない。
 もう何も、誰も救えないんだ。

 ごめん、クラウド。


end

top



第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!