海水

 両手で一掬いすれば、ぱしゃんと音を立てて零れていく海水。

「………」

 何度繰り返しても、直ぐにこの手を擦り抜けていく。

「………」

 何度も繰り返して、でも留めれなくて。

「…ッ!」

 酷く淋しくて、腹立たしくて。右手で思い切り、水を斬った。

「あ…」

 勢い良く跳ね上がって、また落ちていく水の向こうに。
 もう二度と掴めない、あんたが見えた気がした。

 海、水。
 光の、幻。


end

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