バイバイ

 後悔なんて、してない。
 これは恋愛感情じゃない。



 セフィロスを、倒した。全て終わった。

「セフィロス…」

 飛空艇からライフストリームに包まれた星を見ながら、そっと呟く。直ぐ近くに居るティファや、他の仲間達にも聞こえない程の小さな声で。

「………」

 最後に見たセフィロスは、血に塗れていた。

(…俺が、望んだんだ)

 ずっとずっと、憎んでいた。
 母さんも村もエアリスも、全部あいつに奪われた。でもザックスを奪ったのも、セフィロスを作ったのも神羅だ。

(…でも…)

 俺が憎んだのはセフィロスで。俺が求めたのはセフィロスで。
 ずっとずっと、執着していた。

(…ずっと、憧れてたんだ)

 小さい頃から、ずっと憧れていた。セフィロスが居たから、ソルジャーになりたくて。村を出て神羅に入って、色々あって。憧れていた分、憎しみも大きくて。
 敬愛、していたのかも知れない。

「クラウド?どうかしたの?」

「…いや、何でもない」

 もう、考えるのは止そう。
 もう、セフィロスは居ない。全部終わったんだ。終わり、それで良いじゃないか。

「そう…?」

 首を傾げて覗き込んでくるティファを、安心させたくて微笑んだ。けど失敗したのか、ティファは悲しそうな苦笑を浮かべて首を横に振った。

「無理、しないで」

 小さく聞こえたティファの声が、もう居ないエアリスの声と重なった。

「………バイバイ」

 自分の口から出たその言葉は、誰に向けられた物なのか。
 ライフストリームを見詰めながら、霞んだ脳裏に数人の人影が過る。



 恋とか愛とか、そんな感情じゃない。きっと、ただの執着。
 けれど銀色の影が脳裏に浮かんだ時、何故か俺の目頭は熱くなった。


end

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