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*曖昧な理由に踊らされる1(アベミハ)
おおきく振りかぶって/阿部×三橋





「阿部さまー!」

「誰が「さま」だ」



先週末、金曜日の昼休み。

我らが4番、田島のサルが7組へ駆け込んできた。
駆け込んでくるのはいつものことだが、今日は少し違った。

まっすぐ俺の目の前にきてパンッと手を合わせて。



「数学教えて下さい!!」

「…は?」

「自力じゃ無理なんだよー。お願いっ」

「ちょっと待て。状況を説明しろ。あと、三橋入ってきて構わないから」

「ふぁ はいっ!」


とりあえず話を聞く前に、7組の入り口でつっ立っていた三橋をこっちへ呼び寄せた。









「ふーん、数学の宿題ねぇ…」

「また面倒なもんが出たな」

「てゆーか、なんでいきなり「様」なんだよ」

「泉がそう言えって言ってたから!ってそーだ、なー?頼むよーっ!テストで稼げない分ここで稼がなきゃならないんだよっ」

「う、う、」


お願い〜、と必死に頼み込む田島の後ろで、三橋は取れるんじゃないかという程こくこくと頭を前後に振っている。


「わかったわかった。教えてやるよ。阿部が」

「ありがとーっ!」

「なっ…!勝手に引き受けるな水谷!」


三橋だけならなんとかなるものを、田島と三橋だぞ!!
こいつらを俺一人で相手しろと!?


「だってさー、チームの4番とエースが落ちこぼれなんてイヤじゃん」

「そりゃあそうだけど…。てゆうか、嫌ならお前が教えりゃいいじゃねぇか」

「えぇーやだよ。俺の説明じゃ解ってくれないもん」

「説明も下手なんだなクソレ」

「え、そうくる?」


確かに並の説明じゃあいつらには伝わらない。その辺はたぶん俺がよく解ってる。
だからって二人はねぇよな…。


「あー…なぁ、田島は俺が見ようか?」


ショート寸前の俺を見兼ねて、花井が助け船を出してくれた。さすが頼れるキャプテン。
ぶっちゃけ待ってた。


「うーん、花井かぁ。花井数学出来たっけ?」

「なっ…!お前に教えられるくらいには出来るぞ!」

「そなの?んじゃ俺花井に教えてもらうー!三橋は阿部に見てもらえよ!」

「うっ、うん!」

「……」


花井が田島を引き受けたか…。まぁ、どうしたって三橋は俺に来るんだな。


…あれ、俺いま満足した?
三橋=俺みたいな……


まぁいい。しかしそうなると俺は三橋と二人きりということになる。
三橋と二人っきり…か…。








そんなこんなで、部活のない土曜日に三橋が俺ン家にやってきた。


「適当に座って」

「う、うん!」


やけにぎこちないな。緊張してるのか?

三橋を俺の部屋に通すと、予め机の上に用意しておいた飲み物を手渡した。


「いまウチ烏龍茶しかねぇんだ。いいよな?」

「う、うんっ!俺、なんでもいい よ!」


こういうとき、三橋が絶対に断わらないことを解ってて言う俺は、すげぇ意地悪いんだろうな。きっと。


「じゃ、宿題見してみ」

「…う…うん…」


あの金曜の部活帰り、「やれるとこまでやってこい。解けなかったやつを教えてやる」って伝えておいた。

いくら苦手といっても全く解らないなんてことはねぇだろう。

三橋が申し訳なさそうに鞄から取り出したノートを見て、俺はがく然とした。


…なんだこりゃ。


ほとんどが白紙じゃねぇか。問題文しか書いてねぇ…。

青ざめている俺を見て怒られると思ったのか、さらに三橋は自ら墓穴を掘った。


「ちゃ、ちゃんと考えたんだよ!」

「なら答え出せや…」

「ひっ!」


ちゃんと考えて"コレ"だとしたらこいつの頭マジでやべぇぞ。
中間試験で赤点免れたのはかなりの奇跡だったってわけだ。


「…お前さ、進級できんの?」

「し、しん…!」


俺の口から出た"進級"というリアルな言葉に慌て始める三橋。

ま、そうならないように宿題引き受けたんだが。

そんなことを思いながら三橋から目を逸らした瞬間




バシャッ




「あ」


やりがった…!


「三橋いぃぃ…」

「ごっごごごごごめっ、なさ…っ!!」


音の正体は俺が手渡した烏龍茶。ひっくり返ったコップの中身は見事に三橋のズボンのみにかかっていて、幸い床は濡れていない。

けど面倒なことになってるのには変わりねぇ。


「あ゙ーもぅめんどくせぇ…」

「あ、あの阿部く…」

「あーいいから動くな。洗ってやるからズボン脱げ」

「う…ご、ごめんなさい…」


ズボンにたっぷり水分含んだそんな状態で動き回られたらたまらないっつの。

三橋は耳まで赤く染めて「ごめんなさい」と繰り返しながら、恥ずかしそうにズボンを脱いでいく。

……当たり前だけどその下は下着しか穿いていないワケで。
三橋の生足が露になるワケで。


う、わ…。なんでコイツこんなに白いんだよ…。
合宿のときこんなに白かったか…!?
しかも長めのTシャツでいい具合に隠れて…ってあーもう!


「あ…阿部くん…?」

「え?」


あ、ヤベ…思わず眺めちまった。

けど悦に入ってた俺とは対称的に、自分を見つめてくる俺を怒っていると勘違いしたらしく、三橋はさっきより涙目になっている。

そりゃあ多少怒ってはいるけど、それ以上にお前の足が白いんだよ…!


「あ、あの、おれ、ごめ」

「大丈夫、わかったって。じゃあ洗濯してくるからちょっと待ってろ」

「う、うん」


あんな状態の三橋と一緒にいたら理性が飛びそうだ。
俺は三橋を部屋に残して洗濯機へと向かった。


さてと、着替えどうすっかな…。
ん、そうだ、確かタンスの奥にアレがあったな…。

















つ、続いちゃうよ!(笑)

後半から*なかんじになります



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あきゅろす。
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