「ほら、啼け……」

イラストに置いていたものです
 甘い甘い果実の時間。



「ほら、啼け……」



 赤い絨毯に赤いソファーのある部屋。
 甘く濃密な香りが漂うこの部屋に、二人は居る。
「こんなこと……ぅあっ……誰が悦ぶって言うんだよっ……!」

 克哉は眼鏡をかけた<克哉>にしっかりと腰を掴まれ、後ろから激しく突かれている。
 既に熱く反り勃っている肉棒は、だらしなく腹の前で揺れ射精寸前だ。

 それをきつく縛り塞いでいるのが、もう一人の<オレ>から生えている長い尻尾。
 柔らかで、高貴な猫のような艶のあるそれの中で肉棒は脈打ち、いやらしく濡らしている。

 克哉にも生えた尻尾は性感帯の一部となり、愛撫されれば、皮膚を伝う熱とは違う感覚に身悶える。
 白くふさふさした少し短めの尻尾の先を甘噛みされ、克哉はソファーに爪を立て打ち震えた。

「もう……こんな……っ……無理だっ……て……」
「猫は言葉を話さないぞ? ほら、にゃ〜んって啼くんだ。でないといつまで経っても解放してやれないな」
「くっ……そんな……こと言えるわけ無……」
「今更恥ずかしがることも無いだろう。俺とお前の関係だ。他人にバレることはない」

 猫耳や尻尾が生えたことを存分に楽しんでいる口調で言われると、快楽に浸り続けた克哉の頭では理性やプライドはあっけなく崩れていく。
 素直になれば途端に快楽がやってくることは分かっていた。
 このまま終わらないほうがよっぽど苦しい。

(そう、だよな……。こいつは<オレ>なんだし……)

 克哉の口から零れ出る唾液をぺろりと舐められ、それがまるで猫がじゃれているように思わす。
(俺もコイツも猫……)

 その時、肉棒に絡んでいた尾の力が僅かに緩み、根元から先端まで一気に扱きあげられた。
「ああぁーーっ!!」
 突然訪れた強烈な快感に、克哉はビクビクと身体を震わす。
 そのまま果ててしまいそうだったが、再び肉棒を握られてしまい、それは叶わなかった。
(もう……本当に限界っ……!)

 苦しさと気持ちよさで目の前が大きくぶれる。

「そろそろ……言う気になったか?」
 掠れた<オレ>の声が聞こえた。
 克哉の肉壁を満たしているそれも限界まで膨らんでいる。
 もう一人の<克哉>も感じている……。そう思うと、身体の中が更に熱くなった。
 前からも後ろからも、そして尻尾も刺激され、最早羞恥心など頭で考える余裕もない。
 ただあるのは快楽に溺れたいという本能的な欲望だけ。

「んぁ……! に……あ……ぅ……にゃぁ〜……んっ」

 猫が餌をねだるように克哉は啼いた。
 嗚咽と吐息の混じった淫らな声で。
 
「くくっ……。いい子だ。ご褒美をやる」
 くつくつと咽喉を鳴らして満足げに笑う声が聞こえ、克哉は与えられる褒美を貪った――
「ほら、啼け……」*END




――存分に愛してやるぞ。……<オレ>?



2008.04― 加筆:2008.05.24


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