黒豆様から(眼鏡×御堂-sideS-)
眼鏡違い/黒豆 様
御堂サイド佐伯サイド【AA創立後半年以内】








私の知らない -sideS-



「先に入ってこい」

振りかえる姿勢のまま、チュっと音をたてて、唇が離れると、熱い吐息を漏らして御堂が言った。

キスだけで呼吸まで乱れて。

触れたら落ちそうな、そんな風情で。

この部屋の浴室に鍵は付いていない。

何度か、御堂が先に入浴している時に、押し入ってから、そうやって牽制される様になった。

いくら自分を先に風呂に追いやっても、もう一度、入ればいいだけのことで、実際そんなこと、ちっとも手間じゃない。

その気になれば、いつだって可能だったが、そんな風に顔を赤く染めて。

怒ったような素振りで。

どうせ、ベッドに行けばすることなんだから、先に風呂場でしたって構わない。

―――その方が、処理も楽だろう?

にっこり笑って言ったら殴られた。

男同志のSEXは、受け入れる方に準備が必要だ。

準備だって事後だって手伝ってやりたい。

だいたい監禁していたころは、全部自分がやっていたのだ。

今更、見ていない、知らないところは皆無だと言うのに、なぜ、いちいちそう、断固として拒否をするのか不思議だ。

まぁ、それも、この年上の恋人の可愛いところではある。

一緒に入りたくない、というのなら仕方がない。

本人には納得してもらえないかもしれないが、それなりに自分は御堂の意思を尊重している。

「俺が出るまで、ちゃんと我慢しておけよ?」

「馬鹿っ、さっさと入ってこい!」

悪態に背中を押されて、浴室に向かう。

本当は知っている。

なぜ、御堂が風呂場でするのを嫌がるのか、部屋の錠を下ろす瞬間体が強張るのか、俺の一挙一動を息が詰まるほど警戒しているのか。

多分、自分自身では意識していないほどの。

トラウマ、というほどには小さな。

ただ、裸になり求めあうときだけ。

混じり合う瞬間だけ、御堂のすべてがこちらに流れてくる。

人を好きでいると言うことは、こんなにも誤魔化しがきかず、真っ直ぐなものなのか。

まるで、まるで、制御の利かない嵐のようだ。

会えないと寂しい、一緒にいると嬉しい、困っている時は助けたいし、無茶をすると腹が立つ、笑っていて欲しいし、俺の前でだけは泣いて欲しい。

でも、それは俺の勝手な一方的な感情で、お前に望むものは本当は、何もない。

ただ、そこにいて、いつだってお前らしくあればいい。

だから、「私も君と並びたいと思っている」と言われたときは驚いた。

好きだと言われた。信じていいのかと聞かれた。

でも、俺は実際のところ、それを本当には受け取っていなかったのだろうと思う。

初めて会ったその時から。

ずっと、一人天を仰ぐように。

ただ、お前の前に俺を供物のように差し出すだけだと。






「5つ・・・」

ポツン、と御堂が呟いた。

子供のような悪戯をして、御堂を引き込み、シャワーの下でやった後、水滴を拭うのももどかしく、ベッドの上で絡みあう。

「今日は私にさせろ」

と言うのに、反対に抱かせろと言う意味かと思えば、俺の全身を確かめる様に愛撫し、育て上げたものに、自ら腰を落とす。

「・・・どうしたんですか、今夜は本当にやけに積極的だな」

「ん、受け、止めるだけでは・・・、知る、ことが、出来ないから、な・・・」

俺の上に乗り上げ、淫らに腰を振りながら一度受け入れて柔らかくなった鞘に、熱く猛った刀身を埋め込んでいく。

「ん、くっ・・・」

それでも苦しいのか、短い息をつきながら必死に眉を寄せる顔に煽られる。

「どういう意味だ・・・?」

問いかけに、途切れ途切れ、満たされるだけで無く、慈しんでやりたいのだ、とそう言われた。

体中の血が滾り、先端を受け入れられただけの、傘の張った部分が、ぐっと質量を増す。

「え・・・?さえ・・・っ」

そのまま、御堂の腰に手を添えると、下から突き上げると共に、引き落とした。

「ああああっ・・・!」

どうしようもなく貫かれ、自らの体重で更に俺自身を飲み込んだ御堂の喉が仰け反る。

慣れてはいるし、今夜は2度目だ、そう痛みは無いだろうが、衝撃は強かったのだろう。

背中が小刻みに震え、眼尻には、涙が浮かんでいる。

そのまま、体を起こし、背中に優しく手を添え撫で上げてやる。

軽く腰を回すと繋がった部分から、グチャリと淫媚な水音が漏れた。

「あ、あ、あ、あ・・・、佐伯っ」

「そんなに締め付けるな、長く楽しみたいだろう?」

顔を伏せ、目の前の赤く色づいた果実に歯を当てる。

「んーーーーっ!」

クッキリ歯形が残るくらい、強く噛んだ後は、優しく舌で愛撫する。充血し、コリコリとしこったそれを吸い上げてやると、咽び泣いた。

「い、やだ・・・やめ・・て・・・くれっ・・・」

「本当は、気持ちいんでしょう?あんたは痛くされるのが好きなマゾヒストだもんなぁ」

反対の乳首もキリッと噛むと、新たな悲鳴とともに体がビクビク跳ねた。

躯の間に挟まれた御堂のそれは萎えるどころか、絶え間なく蜜を流し、胎内は、誘い込むようにうねり、きゅうきゅうと俺を締め上げてくる。

「いいって言えよ。声を聞かせろ」

「あ・・・、イイっ・・・、きもち、いい・・・」

完璧に鎧われた理性が崩れ落ちる時、こちらもその奔流に呑まれる。

「あんた、いやらしくって、最高だ」

そのまま、穿つ速度を早め、流される甘い涙を舐め取り、啜り泣きと嬌声を漏らす唇をキスで塞いだ。

舌を絡め、吸い上げると、御堂は耐えかねたように喘ぐ。

「ああ、もうっ」

熱く絡みつく肉に追い上げられて、自分にも余裕は無い。

それでも、一秒でも長く、このままでいたかった。

まだ終わりたくない。

ずっと、この嵐の中に取り込まれていたい。

しかし・・・。

「限界か?」

「佐伯っ、いっしょに・・・」

甘く鼻声で強請られると、耐えることなど出来そうにない。

「いいだろう、いけよっ・・・」

掠れてしまった声で告げると、胸に顔を伏せ、もう一度強く突起に歯を立てる。

「あーーーー!」

仰け反りながら、御堂は抑えきれない悲鳴をあげて達した。

遅れて俺も御堂の中に熱い滾りを叩きこむ。

欲望の迸りは、一度では終わらず、何度も震えながら、俺達を押し流す。

戸惑いも、理性も、何もかも、その嵐のような奔流に流されていった。







「いい加減に抜かないか」

御堂の背中に覆いかぶさったまま、薄い皮膚に口付けたり掌で撫で上げたりしていたら、鼻を摘ままれた。

「御堂さんは、もう、満足したんですか?」

完全には硬さを失っていない、それを、抜き挿しするように動かすと、御堂が顔を顰める。

「もう、私は充分だ!君に付き合っていたら、躯が幾つあっても足りない」

ツレない恋人の言葉に苦笑して、体を離した。

「んっ・・・」

ズルリと抜け出る肉の感触に、御堂が小さく呻く。

逃げる様にシーツを纏った背中に

「なぁ、何が5つなんだ?」

と聞いた。

「・・・なっ、聞いていたのか!?」

「ええ、教えて下さい」

今度こそ、本気で逃げ出そうとする背中を、シーツごと抱き込む。

布のせいで、却って身動きが取れなくなった御堂は、しばらくジタジタ暴れていたが、耳の穴にもう一度

「教えろ、でないと犯すぞ」

と舌と共に捻じ込むと、観念した。

「・・・君の、ほくろの数だっ」

「ほくろ・・・ですか?」

意外な答えに、驚いた。

あの愛撫は、では、そう言う意味だったのか。

耳の裏まで真っ赤になっている。なんとも可愛い人だ。

「俺は、あんたの、ほくろどころか、傷の一つだって全部、目をつぶってたって言えますけどね」

「私に、ほくろは無い」

憮然と御堂が返すのに、ほくそ笑む。

「あんたが、知らないだけですよ」

「子供のころから、ひとつも無いんだ。母が言っていたんだから、間違いないだろうが」

確かに、滑らかな御堂の肌には、見える処にシミ一つ、ほくろ一つ無い。

完璧なそれを壊すのは、内腿と脇腹に薄く残る、あの頃に俺が付けた鞭の痕と、執拗に残した愛撫の痕跡。

「じゃ、大人になってから出来たんですね」

「どこに?」

訝しげに言う御堂の纏った、シーツの端を持ち上げると、隠された窄まりの淵をそっと撫でた。

「佐伯!」

「ここですよ、ここにある。あんたの啼きぼくろ」

「なっ・・・、また、君は、いい加減な事を!」

「本当ですよ。口元にある、色っぽいほくろだ。なんなら鏡で見せてやろうか?ああ、写真に撮るのもいいな」

「金輪際御免こうむる」

またも逃げ出そうとするのを、くっと指でその部分を押さえることで制した。

「やめ・・ろ・・・」

「そうですか?あんたのここは、俺が欲しいって言っていますよ?」

ヒクヒクと、物欲しげに蠢く蕾に指を当てる。

「そんな・・・」

「ここの、ほくろのところ、舌で舐めてやると、凄く感じるの。あんたは知ってたか?」

やわやわと、敏感な部分を、指で揉むように押し上げてやると、早くも眼が潤み始める。

「ん、ふっ、結局、やるんじゃないかっ・・・」

「我慢が効かない、あんただって悪い」

「人のせいにするな、この絶倫男!」

「嬉しいだろう?・・・もう一度、可愛く啼いてください、御堂さん」

そっと、頬にキスを落とすと、はぁ、と熱い溜息をつく。

「・・・仕方がないからな、付き合ってやろう」

誰も知らない顔で。

俺だけに見せる顔で。

あんたも見たことがない、誰も知らなかったほくろを俺だけが知っていたように。

全てを捧げる、供物の対価は、いつだって予想もしないほど大きいのだ。

鮮やかに、眩しく、そうして密やかに。

嵐が、また。
私の知らない -sideS-*END





2008.09.24




眼鏡違いの黒豆様から頂きました。
こちらは『私の知らない』の対になる佐伯サイドです。>>御堂サイドはこちら♪
にっこり笑う眼鏡を殴った御堂。彼の殴る姿すら愛おしいのはきっと眼鏡も同じだろう。
眼鏡が如何に御堂を愛おしんでいるか。欲深い感情を除けば、御堂らしい気高い姿であればそれでいいのだという眼鏡。そんな御堂が自分の前だけで見せる顔が狂おしい。-sideS-でも二人の愛情が満ち溢れていますよね。
眼鏡のセリフ全てが御堂を濃厚に攻め立てていて、「あんたはマゾヒストだもんなぁ」と直接的な言葉言っちゃうし「いやらしくって、最高だ」と恍惚感剥き出しで、読み手は情景を想像して身悶えるしかない。 きっと御堂は体位が向き合わせになっている時、肩甲骨にホクロのある眼鏡の背中に爪を立てて快楽に溺れているんだ。
そしてなんと言っても一番のポイントは下の口の啼きぼくろ!
な、なんてえろいホクロ…! 母親も知らなくて当然だ啼きぼくろ!
是非とも鏡で確かめるといい。メガミドの不器用な恋愛模様は脳みそを溶かしますね。
黒豆様、素敵な『私の知らない』シリーズをありがとうございました。



あきゅろす。
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