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小説(APH)
こいびとになった日【仏英】




長年の片思いが
ついに実った今日。



特にいつもと変わったこともせず、いつものように互いにベッドに入る。


いつもと違うのは、
その入るベッドが一つだということだ。

もちろん、何をすることもなく一緒に寝るだけなのだが。
けど、それは自分にとってとてつもなく幸せなことなのだ。



俺と、片思いの相手―アーサー―は自然に同じベッドに入り込んだ。


なんだか気恥ずかしくて、背中を向けて寝ることにした。

どうやら向こうもそうするらしい。

背中から彼の体温を感じる。




「アーサー」




なんだか嬉しくって、何となく名前を呼んだ。

すると、
・・・なんだ?と彼から返事が返ってきた。


俺が、何でもないと言うと
微かに笑った声が聞こえ、続いて、
「変なやつだな」と呆れたように、しかし優しく言われた。


なんだか温かかった。

彼の体温もだけど、
心がとっても温かかった。


「アーサー」



二度目の問い掛け。



「なんだよ。」



怒ったようすもなく、それどころか笑いを含んだ声音で彼はそういった。

俺は背中にある体温を感じながら、ふふと笑った。



「なんだかね、幸せだなって思って。」


「ふーん。」



俺の呟きに、そっけない相槌がかえってくる。
だが、その言葉の響きから同じように感じてくれていることが分かった。


・・・背中合わせだから表情を見ることはできないけど。



「俺さ、ずっとお前のこと好きだったんだ。」


「・・・・・・・・・。」



俺の言葉に彼は黙り込んだ。



「ずっと、ずっとずっと好きで、今日やっとその思いが報われたんだ。」


なんだか嬉しくて、すごく嬉しくて。
言葉の最後のほうで声が震えちゃって。
自分の目から、生暖かい何かが頬を伝って流れ落ちていくのを感じて、あぁ情けないなと思いつつ、止まることのないそれを手の甲で拭った。


信じられなかったから。

アーサーが俺のことを好きになってくれるだなんて。



「・・・いつからだよ。」


「へ?」



彼の突然の問い掛けに、俺はつい間抜けな声を上げてしまった。
だって、さっきまでの優しい声とは違う真面目な声だったから。


俺がしばらく黙っていると
いつもの彼がするように、今日のアーサーもチッと舌打ちをした。




「なんだよ、答えられないのか?」



表情は見えないが、苛立っているようだ。
まさにいつものアーサー。


「あ、いや。・・・そうだね。アーサーが俺に初めて笑いかけてくれた日だよ。」


あの時の彼の笑顔ったら。
眩しくてお兄さん見えなくなりそうだったよ。
笑いながらそう言うと、俺の後ろの体温が一度離れた。

え。おい、アーサー?

慌てて振り返って声をかけようとした俺の背中に、また体温が戻ってきた。
さらに言うなら、そのとき俺の腰に腕が回され、俗にいう『抱きしめられている』状況だった。



「フランシス」



俺が彼の名前を呼ぶよりも先に、彼が俺の名前を呼んだ。

・・・なあに?
俺は、動揺が声にでないように優しく言った。

すると彼は、俺の腰に回した腕に少しだけ力を入れてこう言った。




「俺の・・・勝ち、だな。」




「え、何の話?」



俺は思わず首を傾げた。
全く意味が分からない。


―・・・彼は今、どんな顔をしてるのだろう。
ふと俺は思った。


してやったり!という悪戯が成功したときの子供の様な顔。

勝負事に勝った時に浮かべる得意げな顔。

追い詰めたときに浮かべる楽しそうな顔。



どれも違う気がした。




まぁ、抱きしめられているので振り向けませんが。





そんなことを考えていると背中の体温が震えていることに気がついた。



「え!?ど、どうした?」


さすがの俺も取り乱したが
俺の肩あたりに彼の頭があることに気付き、とりあえず優しくなだめるようにゆっくりと撫でる。


そのうち落ち着いてきたのか、彼はゆっくりと息を吐いてからこう言った。





「俺はな、初めて会った時からお前が好きだった。」




驚いて振り向くとそこには
少し頬を赤く染めて、それでも真っすぐ俺の目を見つめる緑の目があった。


だからな、フラン。
彼は俺の目を見つめたまま
少しだけ微笑んだ。



「幸せなのはお前だけじゃねぇんだよ。」




彼はそういって俺に口づけた。
触れるだけのキス。
ただ、今の俺にはそれで十分だった。




「アーサー・・・アーティ。愛してる。」



俺は、愛おしすぎる恋人を引き寄せるように抱きしめた。
抱きしめた本人は、
「・・・今日だけだからな」
と笑いを含んでそれを受け入れた。







・・・長い長い片思い。


それは、本人達が気づかないだけで
いつでも両思いになれたのだ。

でも、二人とも後悔はしていない。

だって、
今がこんなに幸せだから。



そう、今日は
『こいびとになった日』












End








あとがき




ただ兄ちゃんを幸せにしたかった。

反省はしていない。
後悔もしてない。←


でも、あんまり
甘々にならなかったような気もする・・・。

くそぉ・・・!
次はもっとがんばるから。
フランシス兄ちゃんを
絶対に幸せにするんだ!
アルフレッドに負けない!

・・・だって、
アルアサだと、絶対兄ちゃんがかわいそうなんだもの
がんばって、兄ちゃん!


ここまで読んでくださった皆様!
本当に、本当にありがとうございます!!(;ω;`)

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