小説(岩男)
バカも風邪をひく 【光速】
「だりぃ…ねみぃ…さみぃ…俺もう死ぬかもしれん…。」
「…いつものお前らしくない…っていうか大丈夫か?」
クイックがふらふらしながらリビングに入ってきたためさすがのフラッシュも驚いて立ち上がり、クイックの体を支えようとした。
…のだが、あまりにも軽すぎるため肩を貸すよりもおぶったほうが楽なんじゃないかと思い、クイックに殴られるの覚悟でその提案をしてみた。
だが殴られることはなく、むしろ「ホントか…?じゃぁ頼めるか…?」と弱弱しく言われ、フラッシュは困惑しながらもそんなクイックをおぶった。
もちろんクイックは軽いので問題はなかった…が。
おぶったことにより体温と荒い息遣いがフラッシュの感覚機能に伝わってきたことで異常事態に気付いた。
「お前…それ風邪じゃないのか…?」
「かぜ…?よくわからないが、すごくだるいしねむい…あとさむい…。」
どうやらクイックは熱であまり呂律が回らないらしく、舌ったらずな感じでつらそうにそう言った。
完全に風邪だ。フラッシュはそう思った。
だれだ。馬鹿は風邪ひかないとかいったやつ。出てこい、ぶん殴ってやる。
フラッシュは心の中で『バカは風邪ひかない論』を言いだした人に文句を言いながらクイックを自分の部屋へ連れてきた。
「なんでおまえのへやなんだ…?」とクイックが聞いてきたが、フラッシュは「お前の部屋には何もないじゃないか。」と言いながらベットの上にクイックをおろし、自分の部屋にある薬箱の中から【ロボ風邪薬】と書いてある箱を取り出した。
「とりあえずこれ飲め。」
「…カプセル剤?」
クイックは露骨に嫌そうな顔をした。そんなクイックを見てフラッシュは首をかしげた。
「どうした?」
「いや…別に…。」
いや、何もないことはないだろう。その顔で。
フラッシュはそう思いつつ、クイックの横に座って彼の額に手を当てた。
クイックは硬直し、すぐに真っ赤になった。
フラッシュはそんなことにも構わず自分の額の熱と比べながら「うーん。」と言った。
「ちょっと熱があるな。」
「んな…、なんだよ…今の…!?」
クイックは動揺を隠せないのか目を泳がせながらそう言った。
フラッシュは「ん?」と言ってクイックのほうを向いた。
「何が?」
「いや…ほら…さっきの…。」
クイックは真っ赤な顔のままブツブツとそう言った。
フラッシュも『さっきの』と言われて「あぁ」と苦笑した。
「人間のまねごとをしてみたんだ。」
「…まねごと?」
「あぁ。人間は風邪などにかかったとき相手の額に手を当てて自分の額の熱と比べるそうだ。…まぁ、ロボットにも通用するとは思ってなかったが。」
「…へぇ。」
クイックは納得したのかしてないのか微妙な反応を示した。
そんなクイックに笑いかけながら「とにかく熱があるから薬を飲んで寝ていた方がいい。そうしないと悪化するからな。」とフラッシュは言った。
だが、クイックは「うぅ…」とうなったまま薬箱とにらみ合った。
(…あぁ…なるほどね。)
フラッシュはそんなクイックをみてそう思った。
…どうやらいつもは風邪を引かないので、風邪薬というものが苦手なんだろう。…いや、カプセルが苦手なのか?
まぁとにかく苦手なことには変わりないな。
フラッシュはクイックの様子をみながら「本当に大丈夫か…?」と思い、とりあえずE缶を持ってきた。
…いや、馬鹿でも飲み物を使って飲むことくらいは分かるだろうが…念のため…な。
クイックはやはりにらみ合ったまま薬箱から薬を出そうとすらしない。
そんなクイックにフラッシュはため息をつき、クイックの手から風邪薬を奪い取った。
「え、いや、おま…え?」
クイックはもちろん動揺している。
…そりゃぁそうであろう。飲めと言った本人が自分からその薬を奪い取り、E缶と共にそれを自分の口の中に入れたのだから。
もちろんフラッシュが馬鹿なわけでも、クイックに『ほら、毒じゃないぞ。飲めるぞ。』とガキっぽいことをしたわけでもない。
フラッシュはその口に含んだままクイックに口付けた。
「!!!!!?」
クイックはびっくりした表情のままフラッシュの口内から流れ込んできたE缶と薬を飲み込むほかなかった。
「…ぷはぁ。…どうだ?飲めたか?」
「…ッ!
『飲めたか?』も何も飲むしかねェだろうが!!お前は馬鹿か!このハゲッ!!」
「んだよ!!飲めたならいいじゃねぇか!!なんで俺が文句言われるんだよ!」
クイックは風邪なんてどこかに飛んで行ってしまったかのように叫んだ。…顔はいろんな意味の熱で真っ赤だが。
フラッシュも飲むための手伝いをしたのに怒られる筋合いはないだろうということで逆ギレした。
…まぁ、この場合どちらも逆ギレなのかもしれないが。
二人はにらみ合った。
まぁ5秒だが。
もちろん我慢できなくなって話しかけたのはクイックである。
「…じゃぁ、お前、今さっきのお前の行動はなんだっていうんだよ。」
「まぁ、命には関わらないからちょっと違うがノリは『人工呼吸』だろ。」
そこでクイックはポカンとした。
なんだそれ?と言うように。
「…は?じんこうこきゅう?」
「あぁ、どうやら人は息をしなくなったとき自分から口付け、息を吹き込むそうだ。そうすると呼吸が戻るときがあるそうだぞ。」
「へぇ…。って違う!俺のは命にかかわるわけでもないし緊急事態でもなかっただろ!?なのになんであんな…。」
「キスしたか?…ってことか?」
「…自分からじんこうこきゅうって言っておいてキスとか言うんじゃねェえええ!!」
もちろんクイックの顔は真っ赤だ。
…キスという単語で真っ赤になれるとは…どんだけピュアなんだこいつ。
フラッシュの心の中は、そんな兄を呆れるとともに可愛いと思う優しい気持ちだった。
本人に言ったらたぶん激怒するだろう。
とりあえずフラッシュはクイックに薬を飲ませるという目的を成功させた。
「ま、薬も飲んだんだし、横になってろよ。悪化したら大変だしな。」
フラッシュは苦笑しながらそういって立ち上がった。
「・・・ちッ!わーったよ!」
クイックはそんなフラッシュと目を合わせないように真っ赤な顔でそっぽを向きながらそう言い、布団を頭から被った。
・・・真っ赤な顔を隠そうとしてそうしたのは、もちろんフラッシュにもバレバレだったわけで。
「・・・んじゃあオニーサマ、ちゃんと横になっててくださいね?」
と、フラッシュは笑いをこらえながらそう言って、部屋からでていった。
「・・・ッ馬鹿!こんなベットじゃ寝れねェよ・・・!」
いつもフラッシュが寝ているベット・・・。
クイックはそう考えるだけでコアが爆発しそうだった。
「・・・あいつがあんなことするからだ・・・!」
クイックはそうつぶやいてから真っ赤になって目をギュッとつぶった。
鮮明に思い出せるフラッシュの唇の感触。
暖かくて、柔らかくて。
その口から流れ込んでくるものが薬だと分かっていても、クイックはつい飲み込んでしまった。
(・・・不公平だ・・・ッ!)
クイックは心の中でそうつぶやいた。
自分ばっかりあたふたさせられて、あいつはニヤニヤと笑うばかりだった。そんなの不公平だ。
「オニーサマー。」
そんなふうにクイックが自分の中でうわぁぁ!となっているときに、突然そんな声と共にフラッシュが入ってきてクイックはビクッと身をすくませた。
「・・・なんだ?もう寝たのか?」
そんなクイックには気付かなかったのか、フラッシュはそうつぶやいてクイックが横になっているベットに腰掛けてくっくっくっと笑いながら少し大きめの声でこう言った。
「・・・起きねェとキスしちゃいますよオニーサマ。」
クイックはまたビクッと身をすくませた。・・・今回は気付かれてしまっただろう。
だが、そんなクイックの心配とは裏腹に、フラッシュはまたくっくっくっと笑って「なーんてな。」と言うと立ち上がり、机の上に何か置くとこう言った。
「んじゃ、ここにE缶置いとくから起きたら飲めよ。んじゃ、おやすみ。」
フラッシュはそう言ってまた部屋からでていった。
「・・・んだよ。起きてること知ってんじゃねーか・・・」
クイックはさらに真っ赤な顔でそうつぶやいた。
そして机の上においてある『みかんゼリー』味のE缶を横目で見てからチッと舌打ちした。
「・・・どーせ『みかんゼリー』なのも人間のまねごとなんだろ・・・!」
そんな心遣いがうれしいなんて絶対言ってやるもんか・・・!とクイックは思いながら、いつもフラッシュが寝ているだろうベットの中で目をつぶった。
・・・そのときのクイックの口元が緩んでいたことは、本人にも分かっていないのであった・・・。
End
あとがき
実はクイックにみかんゼリーのE缶をあげたかっただけでした^p^
なんというかクイックが乙女だwwww
フラッシュSだwwww
そして書いてて楽しかっt((
自己満足小説でごめんなs((
・・・それにしても俺はなんで人口呼吸に例えたんだぜ?
すごく謎ですね^p^
まぁ、そんなこんなで・・・
ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました!
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