小説(岩男)
喧嘩するほど 〜前編〜 【光速+いっぱい】
「おい、ハゲ。」
「んだよ、低体重」
「「・・・・。」」
「誰が低体重だ、ゴルァァァァァァァ!!!」
「テメェがハゲっつったからだろうがゴルァァァァ!それに実際テメェは低体重だろうがよォォォ!!」
「んだと!?やる気か?テメェ、コノヤロー!!」
「上等だァ…お兄様よォ!止まってる内にヤってやるよ!!」
「…なんで君らは呼び合うだけでケンカになるのさ…。」
クイックとフラッシュはDWNの中でも有名な仲の悪い二人だ。
顔を合わせればにらみ合い。口を開けば喧嘩。
…とにかく二人は毎日のように喧嘩していた。
今日も二人は、ただの呼び合いでケンカを始め、ソファーに座って様子を見ていたバブルがあきれたようにため息をついた。
「…なんでこうなるかなぁ。」
「仲がいいからじゃない?」
「…また突然だねクラッシュ。」
バブルのつぶやきに答えたのは、いつからそこにいたのかバブルの後ろで喧嘩する二人をニヤニヤしながら見ているクラッシュだった。
バブルはクラッシュの言葉を聞き、あらためて二人を見てみるが、どう考えたって仲がいいようには見えない。
なので、バブルはクラッシュに質問してみた。
「どうして仲がいいと思うのさ?」
だがクラッシュの口から出てきた言葉はとても簡単なものであった。
「ケンカするほど仲がいいって言うじゃん?」
「…まぁ、そうだけどさ。」
「それに。」
真剣に考えた自分が馬鹿だった…。とバブルがため息をつくと、クラッシュはバブルの方をみてニヤリと笑い、こう続けた。
「フラッシュはタイムストッパーを使ってないし、クイックはブーメランを使ってない。」
「……あ。」
たしかによく見てみると、フラッシュはクイックの弱点である『タイムストッパー』を一切使っていないし、クイックも自分の武器である『クイックブーメラン』を一切使っていなかった。
ただの純粋な殴り合いだ。…だからと言って仲がいいようには見えないが。
「でも、なんでそれが仲がいいにつながるのさ?」
バブルがクラッシュにそう言うと、クラッシュは「バブル兄、ほら見て。」と言って喧嘩している二人を指さした。
「楽しんでるでしょ?」
「…どのへんが?」
バブルはクラッシュを訝しげな目で見ながらそう言った。
だが、クラッシュは心外だったのか、軽く不機嫌そうにこう付け加えた。
「つまらなかったり、ムカついてる時にバブル兄は笑えるの?」
「…どういうことさ?」
「…二人は笑ってるよ?」
「!?」
バブルは改めて、今度は注意深く二人を見てみた。
…確かに笑っている。
口角をあげ、悪口を言いながら二人とも殴り合っている。
…それが分かってしまうと二人の喧嘩がまるで猫のじゃれ合いのように見えてきてしまい、吹き出しそうになるのをこらえながらバブルは「なるほどね。」と言った。
「本当にケンカするほど仲がいいとはね…。」
「面白いでしょ?」
「うん。」
たしかにそんな風に見ると微笑ましいものであった。
ティウるためのケンカではなく、思いを伝えるためのケンカであって、お互いに殺り合う気はないようだし、疲れてきたのか顔のつねり合いになったあたりから、素直じゃないなぁとバブルは苦笑した。
「てめェいいはへんにほうはんひやはれ!!」
「そえはこっひのせいふあ!くらぁっ!!」
頬をつねりながら喋っているため分かりづらいが、二人ともちゃんと分かっているあたり二人の仲の良さが分かる。
そして痛みで涙目になりながらも譲らないあたり可愛らしい。
もしかして自分もブラコンぎみかな…とバブルが思った時だった。
「コラ。フラッシュ、クイック、喧嘩を止めなさい。バブルとクラッシュも楽しそうに見てないで止めなさい。」
ちょうど部屋に入ってきたメタルが、喧嘩をする二人とそれを楽しそうに見ている二人を見て困ったようにそう言った。
「かわいい弟が傷ついたらお兄ちゃん泣くぞ?」
…なるほど、本当のブラコンはこいつか。
バブルは心の中でそう呟いた。
「俺がやられるわけないだろ。最速最強だしな。」
「まぁ、そのオニーサマの弱点が俺なんだけどな。」
「うるせー!このハゲ!!それに俺が苦手なのはお前じゃねぇ、タイムストッパーだ!!」
「ハゲって言うな!つか、タイムストッパーが弱点っていうのは俺が弱点と同じだろうが!!」
「同じじゃねぇよ!タイムストッパーさえなければお前なんて楽勝だ。」
「んだとォ!?テメェ言いやがったな?…さっきの言葉…今から後悔させてやるよ!!」
クイックの言葉にピキッときたフラッシュはニヤリと笑いながらクイックの背後に歩み寄った。
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