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キミの禁煙、ワタシの奇縁  (亜久津)
 

 

亜久津が、タバコを止めたらしい。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
―キミ の 禁煙 、 ワタシ の 奇縁―
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

未成年の飲酒や喫煙が黙認され始めたこの世でも、私は未だにそれを見過ごす気にはなれない。


いくら世間が腐っていても、これからの未来を担う私たちまで腐っては意味がない。


だから私は、校内でタバコを吸い続ける亜久津を、再三注意してきた。


もちろん喧嘩を売るようにではなく、風紀委員長としてだ。



だけど、どうしたことか・・・。



亜久津が突然、タバコを吸わなくなったという。








「椿先輩!ニュースです!大ニュースです!」

「おお、壇くんか。どうしたの?」


ぶつかるように私の元へ走ってきたのは、1年生の壇太一くん。

亜久津の周りをうろうろしている、可愛らしい男の子だ。

だから、私がいつも亜久津を
追い掛け回していることをよく知っている。


「亜久津先輩がタバコを止めたんです!
もしかしたらテニス部に戻って来てくれるかもですっ」

「止めたって・・・今日はまだ吸ってないとかそういうレベルでしょう?」

「違います!椿先輩が生徒総会のことで忙しくしていた一週間前から、
亜久津先輩は学校では一度も吸ってませんでした!」

「学校では、でしょう?場所の問題じゃないのよ」

「ちゃんとママさんにも聞きましたっ。家でも吸ってないみたいです」


はじめは冗談だと思っていて、呆れていた。

だけど、どうも本当らしい。

壇くんは次々と証言を引っ張り出してくる。

挙句の果てには、禁煙用ガムを食べ始めたと言うのだ。

もう、信じるしかない。


「・・・長かったわ・・・やっと止めたのね、亜久津の野郎」

「報告はこれだけです。テニス部に戻るからかもしれないですし、
僕はその件についてもっと探索するです!」


目を輝かせて、廊下を走り出した壇くんに
「廊下で走らないようにねー」と声を掛けて、別れた。






放課後、委員会の仕事を後回しにして、私は走った。


あまり使われていない、旧校舎のトイレ。


どうしても、亜久津の禁煙の理由が気になったからだ。


私が今まで、嫌というほど言い続けた禁煙。

それを突然実行するなんて、どうしたものか。


思い通りになったはずなのに、なんだか違う気がする。

私の心には、少しだけ、心配という感情が
湧き上がっていた。



「亜久津ー!あーくーつー!」


さすがに男子トイレに侵入するのはよろしくない。

だから女子トイレの前から叫ぶのだが・・いつも通り、返事はない。


「もう・・・かくれんぼじゃないんだから・・・」


少しだけ男子トイレを覗くと・・・亜久津がいない。


「あれ・・・?いつもはいるのに・・・」


ボソッと呟くと、後ろに人の気配がした。


「・・・またお前か」

「亜久津!」

「何しに来た」

「あれ、ぶっ飛ばすとか言わないの?」

「・・・いちいち言ってるとめんどくせぇんだよ。
特にてめぇみたいな、うざったいのにはな」


雰囲気が少し違うように見える。


入学当初から亜久津を追い掛け回した私が習得したのは
亜久津の感情の変化を、表情から読み取ることだ。


「禁煙、始めたんだって?壇くんに聞いたよ」

「あの野郎・・・余計なマネしやがって・・・。
・・・それがどうしたんだよ」

「随分いきなりだよね。何かあったのかなって思ったもので」


私がそう言うと、亜久津は少し眉間にシワを寄せる。


「・・・お前には関係ねぇ。気が向いただけだ」

「健康に気をつけようとでも思い始めた?
壇くんが、テニス部に戻って来てくれるかもって目をキラキラさせてたよ」

「俺はテニスなんざやらねぇ。とんだ勘違いだな」

「へえ・・・かわいそうに。早く言ってあげなさいよ」

「めんどくせぇ」


そこからしばらくの沈黙が続く。


「話はそれだけか?」

「え、だから禁煙の理由・・・」

「んなのどうでもいいだろうが。
お前だってずっと願ってたことだろ?」

「願ってたというか・・・まあうん、願ってたけど・・・。
あ!もしかして・・・私のため!?」

「・・・殴るぞ」


少しふざければ、いつものように軽い暴言。


「・・・まあ、満更でもねぇな」

「・・・え?」


亜久津の腕が、私がもたれていた壁に伸びる。

とん・・・と、私の隣に亜久津の手がつく。


「な、なに・・・?」

「満更でもねぇっつってんだよ・・・お前のさっきの言葉」


いつも睨み合う時は、これぐらい顔が近づいたりしていた。

だけど今は条件が違う。





今、私は少し、亜久津に心惹かれている。





「い、意味わかんない・・・」


私がそう言うと、亜久津はじっと私の目を見つめる。


「細けぇ意味なんざねぇよ。
俺はてめぇの言うように、タバコを止めてやった。
だからてめぇは俺の言うことを聞け」

「そ、んな、むちゃくちゃな・・・!」

「・・・むちゃくちゃ、だと?俺にタバコを止めろっつー方が
随分むちゃくちゃなこと知らねぇのか、てめぇはよ」

「ご、ごめん・・・聞くから・・・何?」


突然のことに、身体が震えていることがよくわかる。

亜久津もそれに気付いたのか、目を伏せて、私から離れる。


「・・・あからさまに震えてんじゃねぇよ・・・。
今までそんなことなかったくせに、急に柔になんじゃねぇ」

「あ・・・ごめんっ・・・」


心を落ち着かせて、背筋を伸ばす。


「うん、もう大丈夫」


準備OKという意志を見せると、もう一度私の横に手をつく亜久津。


「いいか?お前には一言も文句を言う権利はねぇ」

「うん。わかった」


命に関わる要望だったら、少し文句を言ってやろう。

・・・私はその時、気を紛らわせるために、そんなことを思っていた。







「お前は・・・俺の女になれ」






それだけ言い捨てるようにして、亜久津はすぐにその場を離れた。



思わぬ言葉にびっくりして、腰を抜かしてしまった私。



やっぱり、トキメキは隠し切れない。



それは他の誰でもなく、亜久津相手だからだ。



結局すっかり座り込んでしまった私は、亜久津が戻って来てくれて、
やっとの思いで立ち上がれたのであった。


「ごめん、ありがとう。・・・私も、亜久津が好きだよ」

「・・・フン」







――END




どうも!絶賛夏バテ中、良唯です!
もうさっきから気持ち悪いわだるいわで大変です。

さて、そんな中で書いた初☆亜久津仁夢小説です。
なんか色々おかしいですね・・・はは(笑)
モバイルでドキサバをやっていて、亜久津の告白の
「俺の女」発言に盛大に萌えたので・・・!
ちょっと拝借して書いてみたのですが・・・
私の文章力だとそうでもないですね^^^

それでも読んで下さった方、本当にありがとうございます!
これからもこんなサイトをよろしくお願いします。

2009.07.23 (木) 良唯


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