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迷宮大恋愛(仁王)
迷 宮  大  恋 愛



とてつもなく暇だった。
 
寝るしかないのかと真剣に悩むほどに暇だった。
 
中庭の大きな木の下でイチゴオレを片手に寝転んでもう1時間経つ。
 
この1時間は飛行機雲を見たり、
 
「ああの雲う○こみたいだなあ」
 
とか気色の悪いことを考えたりして過ごしていたが、さすがに萎えてきた。
 
このイチゴ・オレは本日3本目。
3本まとめ買いしたものだ。
 
今日もうまくいかないあいつとの会話にイライラして、俗に言うヤケクソ。
 
涼しい風が吹いたときふと、奴の笑顔が浮かぶ。
 
消し去るようにぐっと目をつぶってすぐに瞼を開けると、
 
そこにはさっきうかんだ笑顔があった。
 
 
「ちょうど切れた頃かと思ったんじゃよ」
 
 
奴の手には2本のイチゴオレ。
 
 
「仁王・・・あんたなにしに・・・」
 
 
「俺も暇んなったんじゃ。部活、ミーティングだけで終わってな」
 
 
「よくあたしの居場所わかったね」
 
 
「そりゃいつも見とるからの」
 
 
ニカッと笑われて、心臓が口から出そうになる。
 
いけない、こいつは詐欺師。
これもただの詐欺だ。
飲み込まれるな。
 
言葉を巧みに操る目の前の詐欺師にときめき半分、いつものいらだちを覚えていた。
 
いらだちの理由は、あえて忘れたふりをして。
じゃないと自分からいらだつ結果を導きそうだから。

 
「それ、くれるの?」
 
 
「おう。2本ともくれてやる。俺には水があるからの」
 
 
仁王の手によって振られたペットボトルの水が、木漏れ日できらきらひかる。
 
 
「ん、じゃあ240円」
 
 
財布の中の残り少ない小銭を、すごく嫌な顔をして仁王に差し出した。
 
 
「ええよ、そんな嫌そうな顔するぐらいやったら俺に奢らせんしゃい」
 
 
差し出していたあたしの手を握らせるように
クスクスと笑う仁王の手がつつんだ。

夏にしては低いその体温が心地よくて
 
高鳴り爆発寸前の心臓を無視し
ついつい離してほしくなくなった。
 
その気持ちを察したのか、仁王はあたしの手を握ったまま話を続けた。
 
 
「お前さんからは金をもらうより、愛嬌のある笑顔と感謝の気持ちをもらいたいところじゃのう・・・」
 
 
にやにやと笑うその顔はまるでからかう予兆のような表情で。
 
なぜそう思うのかというと、
あたしが笑おうと思うと余計に笑えないタチだということを
こいつは知っているからだ。
 
からかうにはもってこいのネタではないか。
 
 
「なんでもいいから金もらってよ」
 
 
「そうなるんか、お前さんは。ちょっとは愛想よくしてみんしゃい」
 
 
楽しそうに言う仁王の手を振り切って
思いっきり嫌な顔をしてやった。
 
イチゴオレを飲みながら。
 
すると仁王は腹をかかえて笑い始めた。
 
 
「イチゴオレ飲みながらそんな変な顔されてみぃ、笑いたくもなるじゃろ・・・!くくくっ」
 
 
「失礼な!あんたって最悪!」
 
 
「プリッ、それはよかった。誉め言葉じゃな?」
 
 
「ばっかじゃないの!?」
 
 
「俺のこれはバカじゃなくて、詐欺じゃ、詐欺」
 
 
「じゃあ詐欺=バカでいいよ!」
 
 
ああ、どんどん話の方向がおかしくなってゆく・・・。
 
気づいたらいつもそうだ。
 
はじめは普通に話をしていても、最後にはこんな茶番劇になってしまう。
 
それがいつもわかっているから、いらだちを覚えてしまう。
 
 
「それは違うじゃろ。あえて言うなら椿=バカじゃろう?」
 
 
そのにやにやした表情がものすごく不愉快だ。
 
 
「仁王と喋ってるとわけわかんなくなる!」
 
 
「プリッ、何がじゃ」
 
 
「どういう会話をしてたかとかが、すぐに迷宮入りする!」
 
 
「クスクス・・・よおわかっとるのう・・・お嬢さんは・・・」
 
 
さっきまであたしの隣に座っていた仁王は、笑いながら寝転んだ。
 
 
「何が!ほらわかんなくなった!」
 
 
「まあそんなに怒りなさんな、どーどー」
 
 
目を閉じている仁王はすごくきれいでみとれるほどだけど
今はそれどころじゃなく、隣にいるこのプリ星人との会話がうまくいかないことに
いい加減本気でイライラしているのだ。
 
 
「あぁもうっ!わけわかんないー」
 
 
「そう嘆きなさんなって。
 
・・・そろそろ種明かしといきますか、椿さんよ」
 
 
バッと起き上がって、苛立ちで赤くなっているあたしの顔を覗き込んだ。
 
その表情は、真面目なような笑っているような・・・。
 
 
とにかく詐欺師の顔だった。
 
 
「俺がわざわざ迷宮入りさせてるんじゃと言うたら・・・椿はどうする?」
 
 
「は・・・?」
 
 
「俺がわざと迷宮入りさせてるんじゃよ」
 
 
「何を」
 
 
「会話をっていう話じゃなか?」
 
 
「そうだけど、え?どういう意味?」
 
 
完全に方向を見失ったあたしはキョドっていた。
 
 
「くくくっ・・・ほんっとに椿は・・・
 
可愛すぎてどうしたらええかわからんよ・・・」
 
 
仁王は笑いながらさらっと大変なことを言う。
 
 
「ちょ、え?は?」
 
 
どのタイミングで何に驚けばいいのかが全くわからなくなった。
 
 
「まあ何か言いたいいうことはわかっちょるから、とりあえず落ち着いて聞きんしゃい。
 
一世一代の大恋愛の始まりじゃからな」
 
 
頭を撫でながら爽やかに微笑む仁王。
 
それと裏腹にただただ迷宮入りするあたし。
 
何かすごいことを言われていることはわかってる。
 
 
「題を定めて会話をするとな、いつか途切れてしまうじゃろ?
 
それじゃつまらんから俺は考えたんじゃ。
 
話をわけわからんくしたら、わけわからんくてもお互いずっと喋ってられると・・・な?」
 
 
するっと髪をとかすようにあたしの頭から手がすべり、手と手が重なる。
 
そのまま仁王はあたしの手に口付けた。
 
 
「ようするに、お前さんとずっと一緒におりたいっつーことじゃ・・・」
 
 
話がつながったのかつながってないのか正直わからなかった。
 
 
「それは告白なの?」
 
 
「そうじゃ」
 
 
「あ、そうなんだ」
 
 
「お前さんのこと、好いとるよ、椿・・・」
 
 
「あ、うん」
 
 
「・・・ほんまにわかっとるんか」
 
 
「多分・・・なんか話が意味不明すぎて」
 
 
仁王は眉間にシワをよせて
 
 
「そりゃ大変じゃ・・・告白まで迷宮入りしてしまったのう」
 
と言いながら少し笑った。
 
だけどその意味不明な会話は不思議とイライラせず、むしろドキドキした。
 
そうか、一世一代の大恋愛の始まり。
 
 
「仁王、あたしも仁王のこと・・・好き」
 
 
頭は混乱していても、
 
触れ合った唇の熱だけは
 
 
迷宮入りせず感覚をはっきりと残した。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
END―――
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
意味不明ーっwwwwww
びっくりするぐらいわけわかりません。
ほんとごめんなさい。
住所教えて下されば、いつでも出張土下座します!
ありがとうございました。



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あきゅろす。
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