Re:fraIn.U (蓮二連載)
リフレイン
同じ部分を繰り返すこと。
僕らは新たに
その出会いを
繰り返す。
Re:fraIn.U
―リフレイン―
桜の花びらがその姿を包む。
「久方ぶりだな・・・椿」
4年と、11ヶ月と、7日間探し続けたその姿。
いざ本人を前にして、あたしは完全に固まっていた。
「どうした?」
「あ、う、えーと・・・」
さらに、この上ない恥ずかしさがあたしを襲う。
「よかったのう、運命じゃのう、うんうん。つーことで俺は帰らせてもらうぜよ」
「あ、ちょ、待って雅治!」
「じゃあな、また後で」
「ま、雅治ーっ!!」
雅治は空気を読んだというよりは、明らかに逃げた様子だ。
目の前には、ずっと追い続けた愛しい人が・・・。
会えない間もずっと好きだった。
もしあたしにも運命の赤い糸があるのなら、
それはきっと蓮二とつながっているに違いないと信じ込むほどだった。
だからあたしを恋愛対象で見てほしい。
だけど昔のような関係も忘れないでほしい。
そんなわがままな気持ちだけど、会ったらすぐに伝えようと思っていた。
なのにあたしのこのキョドり様はなんだ。
「元気だったか?」
「あ、うん!元気だった!れ、蓮二はどう?」
「俺もこの通り、元気だ。貞治も元気そうだな」
「う、うん!相変わらずデータデータ言ってて元気だよ!」
「そうか」
そう言って、蓮二は優しく微笑む。
ピンク色の風で規則正しく揺れる髪がきれいで、見とれてしまう。
ボーッとしていたところで何も始まらないんだ。
突然何かを思い出したかのように蓮二の手を取り、勇気を振り絞って口を開いた。
「れ、蓮二!こ、この後・・・空いてますかっ!?」
蓮二は一瞬びっくりしたように目を開いたが、
またすぐにいつもの細く穏やかな表情になり・・・微笑みながら頷いた。
―――――――――
自分も今日の放課後は予定もなかったし、思い出に浸りたい気分でもあった。
未だ自分の中で椿の扱いに迷いはあったが、そんなに焦ることはないはず。
何もすぐに付き合えだのなんだの言われるわけでもあるまいし・・・。
そう冷静に思いながらも、どこか身構えることをやめようとしていない自分がいた。
俺としてはめずらしい・・・焦る気持ちがあった。
「貞治ってほんと意地悪だよー!あたしに試作品飲ますために水筒すり替えたりしてさあ・・・」
「はは、貞治らしいな。そう思えば・・・そんな手があったんだな・・・今度試してみるか」
「ちょ、やめなよ!?そんな意地悪いと友達なくすよ!?」
「だが貞治にはまだ友達がいる」
「っそ」
「"それはまあなんていうか"・・・と、お前は言う」
"それはまあなんていうか"は、小学生のころの椿がごまかす時によく言った言葉。
呆気にとられた顔をしているということは、やっぱり当たっているんだろう。
変わらない椿が可笑しくて、笑ってしまう。
「な、なんでわかったの!?」
「昔からのデータを引き出してね」
「す、すごい・・・ていうか昔のデータで攻略できてしまうあたしはどうなんだ・・・」
ガクッと肩を落とす椿を見ていると、もう1度変わらないことに安心する。
昔からこうだった。
喜怒哀楽が激しくて・・・曖昧な女らしさが見え隠れする。
俺はすっかり、懐かしむことに心を向けていた。
―――――――――
どのタイミングで言い出そう。
間違えたら大変だぞ。
そんな風に焦りながらも、蓮二との至福の時を十分に楽しんでいる自分がいた。
言いたいことは3つだけ。
ずっと好きだったということ。
頑張るから、覚悟しておいてほしいということ。
だけど今まで通りにしてほしいということ。
矛盾しているけど、言えば伝わるはずなんだ。
そんなことを考えていると、どこからともなく勇気が沸いてきて・・・。
タイミングなんてものがどうでもいいような・・・そんな気がしてきたのだ。
「あの、さ・・・蓮二・・・」
「なんだ?」
「聞いてほしいことがあるの・・・!」
自分のスカートを強く握り締める。
蓮二は不思議そうな表情をしている。
それは当たり前だろう、あれだけ今まで楽しく思い出話に花を咲かせていたのだから。
「あたし・・・蓮二のことが・・・ずっと好きだったの。しょ、小学生の時から・・・今も、ずっと」
蓮二は少し表情を変えたように思えた。
微妙な変化すぎて、あたしにはその心が読み取れない。
だけどそこに居てくれる限り、蓮二は真剣に話を聞いてくれる。
「で、でもね!返事はまだいいよ。いきなりだし、再会したばっかりだし・・・。知っといてほしかったんだ」
そこまで言って、一息おく。
そしてまた口を開く。
「だからあたしの気持ちを知っても、今までのままでいいからね。変な遠慮とかはいらないよ!
でも、あたしは極力頑張ろうと思うし・・・でも嫌だったら断ってくれて全然いいんだけど・・・」
だんだん言いたいことがまとまらなくなってくる。
それでもやっぱり、蓮二はちゃんと聞いてくれているから・・・。
「あ、あたし・・・蓮二のことを好きでいてもいいかな!?」
つまりそういうことなのだ。
まとまらなかった言葉が、だんだん簡潔な形であたしの頭に浮かんでくる。
蓮二はやっぱり・・・少しだけ表情を変えたように見える。
そしてちょっとぎこちなさそうに「・・・ああ」と言った。
―――――――――
気を抜いていた分、本当にその時を迎えて・・・俺は完全に冷静さを欠いていた。
恥ずかしそうに・・・でもきっとすごい勇気を振り絞っているのであろう真剣な表情で、
椿は俺への気持ちを話している。
あまりに必死なその表情に、俺は断るとかそういう選択肢を忘れていた。
だから、「好きでいていいか」の質問にも曖昧ではあるがYESで答えた。
「頑張っても・・・迷惑じゃないかな・・・?」
控えめに尋ねる故、上目遣いになっているに違いない。
それを見てしまえばもう俺はNOとは言えない。
そして結局俺は、「ああ・・・」とまた曖昧なYESの言葉を口にした。
「あ、ありがとうっ・・・!えっと・・・あ、う・・・」
ついに恥ずかしくてたまらなくなったのか、椿はカバンを持って立ち上がる。
その顔は林檎のように真っ赤に染まっていて・・・
ガサガサとカバンを漁って、自分の飲んだダージリンの分の代金を机に置く。
「ご、ごめんね!用事思い出したからっ・・・今日はここらでおいとまさせていただきます!」
カバンをかかえ、逃げるように走っていく椿。
俺はそれをボーッと見ているだけだった。
椿が出ていって5分ぐらいすると、さすがに俺の頭も冴えてきた。
状況を考えて、自分の気持ちが絡まった糸のような状態だということに気がついた。
その絡まった糸をほどくためには、この質問に答えなければならない。
俺は椿の気持ちが嫌なのか。
俺は椿のことをどう思っているのか。
核心に迫った自問自答はまだ早すぎたらしく、俺はため息をついて頭を抱えた。
その2つの質問に、YESかNOできっちり白黒つけることができるようになった時・・・
それが俺と椿の始まりになるのか、繰り返しになるのか・・・。
考えることから始めようと決意した。
そして改めて、人は時と共に変わるということを思い知った。
どんなに面影を残していたとしても・・・だ。
4年と11ヶ月と7日たった椿には、決定的な強さがあった。
―――――――――
あたしは走った。
別に誰かに追われてるわけでもないし、時間とかそういうのも全然関係ない。
あたしはただ、がむしゃらに走り続けた。
そして、お世話になる仁王宅のドアをそのままの勢いで開けた。
「っおっと!」
「ぶっ・・・!」
お決まりのように、誰かに正面からぶつかってしまった。
「おーおー、そないに息切らしてどうしたんじゃ」
目の前には憎き仁王雅治。
あたしが蓮二を探していることを知っていながら、自分が蓮二と同じ学校・・・
立海大付属に通っていることを言わなかった最低な野郎だ。
だけど今はそんなことどうでもいい。
「ただいま帰りました・・・」
ボソッと呟きながら、心ここにあらず。
現実を見たら、あれはあまりにもタイミングを計り損ねていて・・・。
「あんまり遅いから、迎えに行け言われてのう」
「へえ・・・」
雅治の言葉もほとんど聞こえない。
「お前さんなんでそんなボーッとしちょる?」
「別に・・・」
蓮二の気持ちをちゃんと聞く時間もとらず、完全に1人で喋っていたじゃないか。
「ほんまに大丈夫なんか?ふらふらしとる」
「大丈夫じゃないよ」
「・・・はあ?」
「どうしよう、雅治」
「何がじゃ」
「タイミングも言い方も・・・全部間違えたかもしんない」
あたしはただただ、不安ばかりを抱いていた。
初日からこれでは、あたしはどうなってしまうんだろう。
初恋を実らせるのは、かなり難しそうだ。
――続く
えっと、Tから・・・5ヶ月は経ってますね!
うん、本当に申し訳ないと思っています。
余裕がないのに連載なんか始めたから悪いんですねor2
楽しみにしてらした方がもしいらっしゃったら、
本当に申し訳ありません・・・!
これからはせめて1ヶ月に1回は更新します!
さて、今回はただただ話しているだけの
甘さも辛さもない・・・味気ない話でしたね。
次からは多分甘くなります!
というか、青春が始まります。
甘酸っぱい青い春です(笑)
なので、見捨てないで下さいね!(
それでは、閲覧ありがとうございました。
09.03.21 良唯
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