また会っちゃった
僕は一人、森の中にいた。
この間からうるさい、この胸を鎮めるために。
あれからふと、彼女を思い出すと胸が鳴る。
黒い頭巾、赤い目、ウェーブのかかった長い黒髪、そしてありがとうと言った彼女の笑顔・・・。
こんなこと初めてで、でも誰にも相談なんかできないからこうして森の中で自分を落ち着かせている。
「また、会えたらいいのに・・・。」
ポツリ、呟いた独り言は誰にも聞こえない。
「痛い・・・。」
「・・・え。」
ドサドサドサ、と木の上から落っこちてきたのは会いたいと願った本人だった。
「あ、狼さん。こんにちは。」
「こん、にちわ。」
彼女の姿を見てまた跳ねた胸。
最初に会った時みたいに彼女はまた座りこんでいて、それでも今度は手に木の実が握られていた。
色んなところに付いてる葉っぱや擦り傷に、また一生懸命とろうとしてたんだなって思うと少し笑ってしまった。
「なんで笑うのよ。」
「いや、頑張ったんだろうなって思ってね。」
「まあね、今度は手伝ってくれる人もいなかったしね。」
「あはは、それより・・・大丈夫?」
僕の言葉に彼女はまた、大丈夫よと返し立ち上がった。
「・・・ッ!痛い。」
「え、どこが?」
「・・・足。」
ぺたん、とまた座りこみ痛めた方の足を睨む彼女。
そんなに睨んだって治らないのに、って思ったらまた笑いがこみ上げてしまった。
「もう、笑ってないで手を貸してよ。」
「ごめんごめん、森のはずれまでなら送っていけるからさ。」
「森のはずれじゃなくて、わたしの家まで送ってくれないの?」
「それは無理だよ、今日は帽子をかぶってないんだ、僕。」
そう、僕は帽子をかぶっていない。
だから街までは彼女を送って行くことは不可能なんだ。
「なら大丈夫よ。わたしの家、すぐそこだから。」
「え?」
「ここからこの道をまっすぐ5分で着くわ。だから送ってくれる?」
それならと僕は了承し、彼女を背負い歩き始めた。
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