short story
ぶかぶかってのも悪くないかも
「はぁー…」
死武専への帰り道。
何度ため息をついただろう。
ー ー ー ー
一定の早さで歩みを進めながら、思うんだ。
…いつもチームの足を引っ張ってばかりの私。
結局、今日も魂は回収できずじまいだった。
…そんな私なんかが、デスサイズになんてなれるのかな…って
ーーピチャ
雨上がりの水たまり。
それに映る私の顔は、晴れていく真昼の空とは対照的に、どんより曇り空だ。
「死武専…やめようかな」
ボソッと、弱音が漏れだした。
「何、しけた顔してんだよ」
「…えっ?」
そんな時、上の方から声が聞こえた。
よっ、と木の上から飛び降りてきたのは
「ブラック☆スター…」
目立ちたがり屋の、彼だった。
「聞いたぜ〜ウイ?敵の真ん前でずっこけちまったんだってなぁ!」
「…私もビックリしちゃった。石に、つまづいちゃって…」
「やっぱ、お前ってドジだよな!」
「…えへへ。おかげで靴無くしちゃった」
素足の右足を、なるべく笑いながらブラック☆スターに見せた。
足の裏は、もう真っ黒になっちゃったよ。
「はぁ…」
ズキッ
ため息をつく、ブラック☆スター。
呆れられるってことくらい、分かってはいたけど…ちょっとだけ泣きそうになった…
だから、ブラック☆スターに見られないように俯いた。
「ったく、仕方ねぇなぁ」
いきなり呟いたブラック☆スター。何かと思って顔をあげる。
それを見て、私は自然に首が傾いた。
だって、ブラック☆スターが右側の靴を脱ぎだしていたから…
「ほら、貸してやるよ」
「えっ…?」
足の真ん前に、私よりも一回り大きな靴が、ポンと乱暴に置かれた。
貸してやるよ。…って
「そ、そんな悪いよ!」
慌てて両手を前にだしてブンブンと振った。
「何だよ?別に臭くねぇぞ?」
「そうゆう問題じゃなくてっ」
「いいから、履けって!」
「き、きゃあ!!」
ブラック☆スターに足を掴まれて…
無理やり靴を履かされた。
「ぶ…ぶかぶか」
「俺様は、BIGな男だからな!ひゃはは☆」
高笑うブラック☆スター。
私の靴は厚底ブーツだったから、左右の高さが違って歩きづらかったけど
ぶかぶかな靴からはずっと、彼の元気の温もりが広がっていた
ぶかぶかってのも悪くないかも
(ウイ、手ぇ出せ)
(へ?)
(また転けねぇように俺様が持っといてやるから)
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