eternal love






叶わない夢だと諦めて
流した涙はどのくらい?

数え切れないよ



ずっと待ってたの



―――…あなたを











eternal Love
―永久の愛―











カプセルコーポレーションの広いリビングの中は、とても賑やかな声が響き渡る





『おかえりー!!』





おなじみの面々が、一斉に声をあげる





『ただいま』





変わらない笑顔で、皆に迎えられているのは、7年ぶりに帰ってきた悟空



止むことのない仲間達の言葉に、悟空は明るく答えていく



仲間達と楽しそうに笑い合う悟空の姿を、チチは少し離れたところから見つめていた





『はい』


『あ、すまねぇだ』





ブルマは、そんなチチに気付き、飲み物を注いだグラスを渡した





『良かったわね。チチさん』





ブルマの言葉に、チチは微笑みながら小さく頷き、悟空の姿を確認するように、しばらく黙ったまま見つめ続けた





『なんか、まだ信じられねぇだよ…夢見てるみてぇだ…』


『そうよねぇ…7年だもん。そう思うのも無理ないわ』





7年という月日…



今にして思えば、あっという間だったようにも思える



だけど、どんなに時間が経っても
愛しい想いは色褪せることなく
願い続けた日々だった





ただ、ただ、
会いたかった…





『悟飯くんも悟天くんも、凄く嬉しそう』


『んだぁ。さっき帰った時も、ずっと、はしゃいでただよ』





―――――――…


―――――…


――――…





数時間前





『じゃあ、また後で!』





神殿での再会を果たし、カプセルコーポレーションで歓迎会を行う約束をし、それぞれ一度家へ戻った



家へつくなり、はしゃぐ子供達に連れられて、悟空はお風呂に入り汗を流す



お風呂場から聞こえてくる楽しそうな声にチチはそっと耳を傾けていた



悟飯や悟天の声に紛れて
確かに響く悟空の声に
チチは目頭をあつくした



ずっと聞きたかった
愛しい人の声





(幻聴なんかじゃない…夢じゃねぇだな…)





―――――――


――――…


――…





そんなことを思い出し
チチはまた涙が溢れそうになった



今は泣いてはいけないと思い、その場を離れようと、グラスを置き、出口の方へ向かった



そんなチチに、隣にいたブルマが声をかけた





『あら?チチさん、何処いくの?』


『ちょっと、その〜…お手洗い借りるだ』





そう答えて、チチは足早に賑やかなリビングを後にした



廊下に出たチチは胸に手をあて、ふぅーっ、と胸を撫で下ろすと、チラッと中の様子を伺った



相変わらず楽しそうな皆の様子に小さく微笑み、





『今、泣いたら止められねぇだよ…』





そう呟くと、ゆっくりと一人、長い廊下を歩き出した



目的地に着き
鏡に自分の姿を映す





『皆、楽しんでるだ…泣いて場の雰囲気壊すわけにはいかねぇだ…』





大きく深呼吸して、よしっ!、と気合いを入れると廊下へと出て行った





『あれ?…悟空さ…』





廊下に出ると入り口の横に、悟空が立っていた





『なにしてるだ…?そんなところで…』


『チチが出て行くの見えたからさ』


『そ、そうけ。』





胸がざわめく…



何故かチチは、悟空に普通に接することが出来ない





『泣いてたんか?』


『え…?な…泣いてねぇだよ』


『…ほんとか?』


『んだっ!ちょっとお手洗い借りただけだべ』





慌てて笑顔をつくり、明らかに動揺するチチを、悟空は何も言わずに、じっと見つめる





チチはその瞳にドキドキしてしまい、思わず目を反らしてしまった





『……チチ』





自分の名前を呼ぶその声に、さっき気合いを入れて、必死に押さえたはずの涙が、また溢れ出しそうになる



泣いてしまう前に、とにかくこの場を切り抜けなくては、と思い





『ほら!悟空さ!早く皆のところにもどらねぇとっ!』





涙が出そうになるのを隠すように、必死に笑顔をつくり、せかすように言葉を発し、悟空の横を俯き加減に通り過ぎようとした





すると――――……





悟空はそんなチチの腕を掴み、グッと自分の胸へと引き寄せた





『ご、…悟空…さ…?』





チチの呼びかけに
悟空は黙ったまま
抱きしめる力を強くする



強く…強く…



壊れてしまうのではないかというほどに





『悟空さっ…痛いだよ…』




それでも悟空は抱きしめる力を弱めようとはしない



それどころか、さらに強くチチを抱きしめた





『悟…』


『…たかった………』





チチが名前を呼ぼうとした瞬間、悟空の声が重なった





『………え…?』





小さすぎる悟空の声を、チチは聞き取れずにいた



すると、悟空はさらにギューッと強くチチを抱きしめ、チチの耳元近くに自分の顔を埋めた





『……会いたかった……』





聞こえた悟空の言葉に、チチの視界は一気に霞む





『ずっと…会いたかった……チチ………』





耳元じゃないと聞き取れないのではないかと言うほどに…



その声は掠れ…震えていた…





(ずっと会いたかった)





そんな悟空の言葉と
振り絞るような声に



チチの目からは抑えきれないほどの涙が、一気に溢れ出し次から次へと頬を濡らす





『…悟…空さ………っ』





もう涙を止めることなんて出来ない…



会いたくて
触れたくて
抱きしめてほしくて



そんな願いは
この身が朽ち果てるまで
叶うことはないのだと



腹をくくっていたのは
昨日までのこと





だけど今日からは違う





だって
目の前にはあなたの姿



私を包み込む
確かな温もり―――…





チチはそっと、悟空の背中に手を回し
ギュッと力いっぱい抱き着いた





『おらも…会いたかっただよ…っ…悟空さ…っっ』





離れてしまわないように

もう二度と

この温もりが消えないように






そんな二人の様子をブルマは、リビングの入り口に立ち、優しく微笑みながら見つめていた





『あれ?悟空は?』


『本当だ。どこ行ったんだぁ?』





見当たらない悟空を探し始めた仲間の声に、ブルマは





(今は二人きりにしてあげなくちゃねっ)





そう思い、クスッと微笑むとリビングの中へ入って行った





『さてっ〜!皆!カラオケするわよぉ〜!!』





ブルマのその一声に、悟空を探そうとする声は消え、さらにリビングは大盛り上がりとなった











皆の声を遠くにききながら

二人はそっと体を離し、見つめ合い

唇を重ねた





何度も
何度も

キスをした…





永久の愛を
ここにもう一度







7年分の
愛を込めて……







END









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