RIVAL






とある休日の


ちょっとおかしな


家族の風景












RIVAL
―ライバル―














今日はとても天気がいい



晴れ渡る青空





『今日は洗濯日和だべ』





ポカポカ陽気の中



気分よく
洗濯物を干すチチ



そよぐ風に
鼻歌を乗せる





『お母さ〜ん』





遠くから聞こえてくるのは、聞き慣れた愛しい声





『おかえり、悟天ちゃん』

『ただいま〜!』





父と修業に出かけて
帰ってきた悟天



勢いよくチチに抱き着く





『どうしただ?今日は甘えん坊さんだなぁ〜』





エヘヘ〜、と笑いながら見上げられれば、自然と笑顔がこぼれる





『お母さん、大好き!』


『おっ母も、悟天ちゃん大好きだべ』





元気いっぱい、笑顔いっぱい



なんとも微笑ましい
親子の光景



――――だけど



悟天の体が、ひょいと持ち上げられる





『こら、悟天。母ちゃんの邪魔したら駄目じゃねぇ〜かぁ〜』





そう言ってチチから悟天を離し、少し離れた場所に下ろしたのはもちろん―…





『おかえり、悟空さ』


『ただいま』





悟空だ



下ろした悟天をサッと寝転ばせ、コチョコチョとこそばし、じゃれあう親子



それもやっぱり
微笑ましい親子の光景



だけどお父さんはヤキモチ妬き



キャッキャッと芝生の上を転がる息子から超スピードで離れた悟空



向かった先はもちろん





『悟空さ〜!おめぇは子供じゃねぇだぞっ!』


『いいじゃねぇかぁ』


『まぁったくぅー』





悟天と同じようにチチに抱き着く



後ろから手を回し
チチの肩に顎をのせ
腹へったぁ〜、と、悟天に負けず劣らず甘え始める



そんな悟空に、チチはクスッと小さな笑い声





『あっーーー!!!!』





そんな悟空の様子に気付いてしまった悟天ちゃん



さてさて
どうするのでしょう?



悟天は限りある知恵を振りしぼります



そうだっ!とひらめき、ニヒヒっと悪巧み





『あれ〜〜??なんだろー!あれー!?』





悟空に聞こえるように大声で叫び始めた悟天



そんな悟天の声に、悟空はすぐに反応し、チチから少し体を離し、なんだ?、と、いう顔をして悟天の方に目をやる





『ねぇねぇ!お父さん!見て見てー!』


『なんだ?悟天?なんかあんのか?』


『うん!なんか凄いものがあるよぉー!』


『本当かぁ〜!?』


『あー!早くしないと逃げちゃうよー!』





そんなに凄いものとは一体なんなのか



悟空の関心は完全に
悟天の声に
向けられました



一歩、一歩



悟天のもとに
悟空は近寄ってきます





『何があんだ?』





悟天のもとに、悟空到着!



今だ!!





『嘘だよぉぉーー!!』





悟天は、悟空にベーッと舌を見せると、猛スピードでチチの方へ飛び出して行った





『あーーー!!悟天!!』





立場逆転



またまた悟天は
チチに抱き着き
甘え始めた



さすが息子さん



父親の単純な性格を知っています



うまく利用できたようですね



さて!
悟空はどうするのでしょうか!?



しばらくその場に立ちつくし、ボッーと二人を見ていた悟空



何か思い付いたのかと思いきや…





『あ〜あっ!腹減ったし、なんか食おーっと』





そう言って頭の後ろで手を組み、家の中へ入って行く



悟天はそんな悟空の行動にあれ?、と首を傾げた



だけど、悟天はまだ半信半疑



きっと何か企んでるはずだと思い、すぐにはチチのもとを離れようとはしません



しかし



いつまで経っても
家の中から悟空が出てくる気配はない



ぐぅ〜っとお腹が鳴り、自分もお腹が空いていることに気づく



きっとお父さんも諦めたのだろう、と思い、悟天はチチから離れると家の中へと入っていった





『僕も何か食べるー!』





家の中に入ると、テーブルの横に悟空が立っていた



何か食べている気配はない



と、悟空は額に指を伸ばした





『あっ!』





悟天は、その悟空のポーズに、しまった!と思い大声をあげた



一足遅かった…



ニッと歯を見せて笑うと
悟空は一瞬にして、その場から姿を消した



これは誰にも真似できない



瞬間移動を使うとは
悟空も考えたものです



悟天は慌てて家の外へ出ると、案の定



そこにはチチにくっつく悟空の姿が





『お父さんずるいよ!』





プクゥーっと頬をふくらまし、悟空に抗議する悟天





『ずるくなんかねぇぞぉ〜。早い者勝ちだかんなぁ〜』


『ずるいよずるいよずるいよー!!』





プンプン怒ったまま、悟天も二人のもとに駆け寄ると、前からチチに抱き着いた





『おいおい、悟天。正面に立ったらチチが動けねぇじゃねぇか』


『違うよ!後ろのお父さんが離れれば、お母さんは動きやすくなるはずだよ!』




前からは悟天
後ろからは悟空



もちろんチチは動きにくくて仕方がない



なかなか仕事が進まない



さてさて
何やら雲行きが怪しくなってきましたよ…



といっても、空は相変わらずの快晴



二人はまだ気付いていない



チチの様子が、おかしいことに……



二人は、まだ知らない





この後に待ち受ける災難を……





相変わらず、チチにくっついたままワーワー言っている悟空と悟天





『…………おめぇら……』


『『えっ?』』





チチの低い声に
二人はキョトンとした



そして二人は
気付いてしまった…



チチの肩が小刻みに揺れ動く



さっきまでの笑顔はどこへやら



俯く顔はもちろん……怒りでみちあふれ
洗濯物を持つ手は震えている





『チ、チチ…』


『お、お母さん…』





チチの様子に、ヤバイ…と思った瞬間―――…!!





『おめぇーらっっ!いい加減にしろぉー!!!!!』





特大の雷が落ちてしまいました…



バサーっと両手を広げ二人を振り払い、その場に正座させた





――――――――……


―――――………





ガミガミ雷を落とす、母さんの足元



同じ顔をして、同じ姿勢で



シュンと小さくなる姿



それがなんだかおかしくて



怒られてる二人には悪いけど



僕は笑いがとまらない





―――――――……





窓越しに、勉強しながらずっとその様子を見ていた悟飯は、そんなことを思いながら、





(そろそろ僕が助けてあげないと)





込み上げてくる笑いを必死に堪えながら、ノートをしまうと、自室を出て、三人のところへと、歩き出した





――――――……


――――……







太陽の光がキラキラ降り注ぐ中


そよぐ風を
いっぱい浴びて


家族4人の洗濯物


ゆらゆら仲良く揺れていた





ありふれた日々の中に


ふっと見つけた
小さな幸せ








END








第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!