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甘えたい


傍にいたい


だって大好きだから







gaze at a person affectionately
【愛を込めて見つめる】










悟空が生き返ってからとゆうもの
悟天は常に悟空にベッタリ


何をするにも悟空と一緒


起きるときも
ご飯を食べるときも
修業に行くときも

お風呂に入るのも
テレビを見るのも
夜、寝るときも


ひと時も悟空の傍を離れようとしない。


悟空の隣も
悟空の腕の中も
悟空の膝の上も


今や悟天専用となっていた

悟空も、そんな息子が可愛くて仕方がなかった



そんなある日のこと



チチは朝食を終え学校へ行く悟飯を
いつものように玄関先まで見送り、悟飯の姿が見えなくなると、家の中へ戻って行った。


リビングに戻ると
朝食を食べ終えた悟天は
今日も悟空の膝の上


『まぁっ〜たく、悟天ちゃんはー。そんなにくっついてばっかりいたら、悟空さが疲れちまうだよ。』


悟空が生き返ったばかりの頃は、初めて一緒に暮らす父親という存在に、甘えたくてしょうがない悟天の気持ちを理解し、何も言わず微笑ましく見守ってきたチチ。


しかし


いつまで経っても変わらない状況に、チチは少々お困りの様子。


『だって僕、お父さん大好きだもん!』

『そんなの分かってるだよ』


そう言って笑うと、チチはテーブルに置かれた食器をまとめ、片付けはじめた。


そんなチチを悟空は何か思いながら目で追った。


それから悟空と悟天は朝の修業に出掛け


お昼頃、一旦帰って
昼ご飯を食べ終えると
また一緒に修業へ出掛けた

いつもと何も変わらない
ありふれた一日


に、なると思っていたのだが


出掛けた二人が
いつもよりだいぶ早く帰ってきた


『ただいまー』

『おかえり〜。早かっただなぁ。…あれ?』


迎えに出ると、そこには眠った悟天を抱いている悟空の姿。


『休暇してたら、いつの間にか寝ちまったんだぁ』

『そぉけっ。今頃になって疲れが出ただなぁ、きっと。』


ずっとはしゃぎっぱなしだった悟天の様子を思い出し、チチはクスクスと小さく笑った。


『そうだなぁ〜。おらちょっと寝かしてくる。』

『うん、頼むだ。』


悟空が部屋を出て行くと、チチは時計に目をやった。


時間を確認すると、いつもよりちょっと早いけど、ご飯の準備を始めようと決め、キッチンへと向かった。


なんせ大食い三人のご飯を作るのだから、準備は早いうちから始めなければ間に合わない。


腕まくりをし、早速、準備を始める。


慣れた手つきで次から次へと野菜を切っていく。


そんな中


悟空は悟天を寝室へ運び終えリビングに戻るとソファーに腰かけた


『悟天のやつ、ぐっすり寝てるぞぉ』

『そぉけ。夜寝れなくならねぇといいだが』


キッチンに向いたまま
笑いながら話すチチの背中を、ソファーに座りながら、悟空はじっと見つめていた。


『なぁ、チチ』

『ん?なんだ、悟空さ?』


呼びかけても
チチは振り向かない


せわしなく野菜を切り続けている。


そんなチチに、悟空は少々、膨れっ面。


振り向いてくれないのならば、と、悟空は立ち上がりチチのもとへ歩き出した


『なぁ、チチ』


キッチンに入った悟空は、チチの細い腰に腕を回し、後ろからぐっと華奢な体を抱き締めた。


『これ!悟空さっ…!///』


突然の出来事に、チチは顔を真っ赤にし、なにするだ!、と悟空に反論した


『だってよぉ〜。チチが全然こっち向いてくんねぇから』

『し、仕方ねぇべ!飯つくってんだから!』


その言葉を聞いた悟空は、チチが持っている調理器具を奪い、まな板の上にそっと置いた。


『もぅ!悟空さは…これじゃ飯つくれねぇでねぇか…!』


『飯作るには、まだ時間、早いじゃねぇか』


『そうだけど…悟空さこそ…』


『ん?』


『今日は、もう出掛けねぇだか?』


『あぁ。今日はもう行かねぇ』


『そっ、そうけっ///』


『チチと一緒にいてぇし』


『なっ!なんだべ急に!』



チチは悟空の言葉に、恥ずかしくて両手で顔を隠す。


『久々に二人きりになれたなぁ〜』

『ん、んだなぁ!』


ますます赤くなるチチがおかしくて、抱きしめる腕の力を更に強め、


『さっき悟天にヤキモチ妬いてたもんなぁ〜、チチ〜』


悪戯っぽく笑い、チチの耳元で悟空は囁いた。


『なっ!?なんのことだべ!!』

『本当、チチは素直じゃねぇなぁ〜。』


ケタケタと笑い、悟空はチチを自分の方へ向かせた。


正面に向かされたチチは真っ赤に染まった顔を見られたくない一心で、すぐさま自分から悟空の胸へ顔を埋め、身を委ねるようにして抱き着いた。


『悟空さは…意地悪だ…』

そう言って更に強く抱き着く。
悟空はそんなチチを、壊れてしまわないように、そっと包み込む


『ほんとは?』

『え?』


と顔を上げた瞬間


唇に温かい感触…。


重なる唇…優しいキス


離れていく温もり
名残惜しくて……


ぶつかり合う瞳と瞳
見つめ合う時間が
甘い世界へと二人をいざなう………


――――――………




『これすんのも、久しぶりだな』

『…うんっ…///』




昔より少しだけ…
大人びた笑顔を浮かべる愛しい姿


再び近付いてくる彼の顔


コツン、と、おでことおでこが重なり合う。


額をくっつけたまま
妬いてたか?、と問われれば
近すぎる瞳に嘘はつけない

頷く私に小さく笑って
額に一つキスを落とす


そんなあなたに、私はどうしようもない胸の高鳴りで…どうにかなってしまいそう…。




『……そんなんじゃ…ヤダべ…』

『ん?』

『…だから……』

『……??…チチ?』

『そ、そんだけじゃ…足りねぇだよ…///』




そう言って
顔を真っ赤にして俯くお前が愛しくて…


息も出来ない程に
唇を奪う


息苦しいほどに口づけして
酸素を求めて唇を離す


離した先に見えるのは
涙を浮かべた黒い瞳


ギュッと服を掴まれ
まだ足りない、と言われれば
溢れる気持ちが決壊ギリギリ暴発寸前


お前のその一言に、俺は完全に本能を掻き立てられて…壊してしまいたい…。




――――――………


もう二人だけの世界
誰にも邪魔はできない


再び二人の顔が近付いた


『なにしてるのぉ?』


突然、聞こえてきた声に
二人は驚き、声がした方へ視線を向けた。


『『ごっ、悟天っっっ!!!!』』


そこにはキョトンと二人を見つめる悟天の姿。


二人に名前を叫ばれ、意味がわからず首を傾げる。


そんな悟天に、慌てて悟空から離れるチチ。

悟空はアハハと笑い、ポリポリと頬をかく。


もうこうなったら笑うしかないといった様子。


『ご、悟天ちゃん…いつから…いいいただ?』

『う〜〜ん、忘れちゃったぁ!』


そう言って無邪気に笑う悟天に、チチは、そうか、と言ってつられて笑う。


悟天の笑顔とは対照的に、チチのその笑顔は明らかにひきつっている


そんな微妙な空気の中、学校が終わった悟飯が帰ってきた。


『ただいまぁ〜!あれ?そんなところでなにしてるんですか?皆揃って』


『兄ちゃん、おかえりぃ〜!あのねっ、』


と、悟天が何か言おうとした瞬間


『あっー!!そうだっ!!』

そう言って、チチはパンッと手を叩き、悟天の言葉を遮った。


『悟天、ケーキでも食べるだか!?』

『え!?ケーキ〜!?食べる食べるー!!』


わ〜い!と両手を上げ喜ぶ悟天に、チチはホッと胸を撫で下ろす。


『悟飯ちゃんも食うけ?』

『はい!いただきます!』

二人は喜びながら、席についた。


キッチンに残された二人は
顔を見合わせ
ハハ…ιιと笑い
ハァー…と
残念そうにため息をついた


『…悟空さも…食うけ?』

『え…あぁ…おら、後で食う…』

『そうけ…じゃあ、おらも後にするだ…』


ケーキにテンションが上がる子供達とは違い、
どこかやりきれない気持ちに、肩を落とし、静かに席に座る悟空。


チチも恥ずかしいやらなんやら…モヤモヤした気持ちを引きずったまま、夜ご飯の後に出そうと思っていたケーキを冷蔵庫から取り出し、二人分を皿にうつすと、テーブルの上に並べた。


『『いただきま〜すっ!』』


悟飯と悟天はフォークを手にとり、ケーキを食べはじめる。


二人は子供達がケーキを食べる姿を、椅子に座りながら見つめていた


ケーキを口いっぱいに頬張る悟飯


生クリームを口のまわりにつける悟天


二人とも美味しいケーキに満面の笑顔


『美味しいねっ!兄ちゃん!』

『そうだな!悟天!』


ニコニコ、ニコニコ
かわいい笑顔


その笑顔に
悟空とチチは、たちまち癒されていく…。


(愛しい…。)


その言葉がよく似合う。


『二人は食べないの〜?』

『お父さんが食べないなんて珍しいですねっ!』


そんな子供達の言葉に
二人は顔を見合わせる。


見つめ合った二人は
優しく微笑み合う。


『チチ〜!やっぱりおらもケーキ食う!』

『んだぁ!皆で食うべっ!』





二人きりの時間は
しばらくお預け


それでもいい


見つめる先には
子供達の可愛い笑顔


そこには確かな…
愛がつまった家族のカタチ

ずっと、ずっと見つめ続けていきたいと願う


その笑顔に
愛を込めて………





END





あきゅろす。
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