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『なぁ、界王様』


『なんじゃ?悟空』


『あの世の飯ってあんまし美味くねぇよなぁ』


『毎日バカバカ食べといて、今更なにを言うか!』


『ハハハ!わりぃ』





うめぇ飯が食いてぇなぁ

世界一、美味い飯が……



はぁ〜っ………
チチの飯が食いてぇ……










an impossible desire
―叶わぬ願い―










朝、目を覚ますとさ
いつもいい匂いがしてた



どんなに眠くても
その香りで
一気に目が覚めるんだ。



昼も夜も
家のほうから
すんげーいい匂いがしてきて

どんだけ夢中で修業してても
その匂いに誘われて
一直線に家に帰る。



そんな毎日だった……。





『おかえり、悟空さ』


『ただいま』


『飯できてるだよ』


『おぅ!オラ腹ペコペコだぁ』





テーブルの上には
美味そうな料理が
いつもたくさん並んでて



どれから食おうか迷うけど、結局どれもこれも全部うめぇから、迷うだけ無駄なんだけど



急いで口に入れすぎて
むせちまうこともよくあったなぁ



そんな時は、決まっていつも





『大丈夫け!?悟空さっ!』





そう言ってチチが背中さすってくれてさぁ……





『まったくぅ…』


『わりぃ…チチ』


『そんなに急いで食わねぇでも、飯は逃げていかねぇだよ』





そう言ってクスクス笑うんだ



だって、すんげーうめぇからさっ、って言うと

顔を真っ赤にして
照れたように笑うんだ



そんなチチが凄く可愛くて


愛しかった―――…。





今にして思えば
チチはいつも笑ってた





怒られた事もたくさんあったけど

最後には
やっぱり笑ってくれるんだ




朝は、おはよう、って微笑んで



出かける時には
『気ぃつけるだぞ』
って、笑顔で送り出してくれた



帰ると
『おかえり、悟空さっ』
笑って迎えてくれて



夜は、おやすみ、って優しく微笑んで、静かに瞼をとじるんだ





チチの笑顔で一日が始まり

チチの笑顔で一日が終わる




怒った後に見せる
呆れ気味の笑顔も

抱きしめた時に見せる
照れた笑顔も


どれもこれも、全てが
愛しくて…愛しくて…
大好きだった。





世界で一番なんて、大袈裟かもしんねぇけど

それくらいチチの笑顔が
本当に、本当に好きだった…。





今も大好きだよ





もう今は
記憶の中でしかチチに会えない

新しく見せる笑顔を
この目に焼き付けることは
もう二度と出来ない





それはもう…叶わない願いだ…





うめぇ飯もいいけどさ
やっぱり…オラは…





『悟空!!』


『うわっ!なんだよ界王様!』


『アハハ〜!びっくりしたか?』


『あたりめぇだろ!ったくぅ…』


『さっきから何をボォ〜っと考えとるんじゃ?』


『へっ?』


『飯食ってから変だぞ』


『あぁ…う〜ん…ちょっとな』


『下界の飯が恋しいか?』


『…飯かぁ……飯よりさぁ…』


『なんじゃ?』


『う〜ん、いやぁっ…なんでもねぇ〜…。』










はぁ〜ぁ…会いてぇなぁ…


………チチに会いてぇ。








END









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