monopoly





いつも傍にいても
どんどん欲張りになる

私だけ、見てほしいなんて…


それは、我が儘…?











monopoly
―独り占め―












『なぁ、ブルマ』

『なに?』

『おめぇ、さっきからずっとそれ飲んでるけどさ』

『うん』

『そんなにうめぇんか?』



そう言って悟空は、ブルマが持っているグラスを指差した



『美味しいわよ、孫くんも飲んでみる?』



ブルマは自分が飲んでいるウィスキーが入ったグラスを、興味津々で見つめる悟空に差し出した



悟空は、それを受け取ると、角度を変えてグラスを眺め、とりあえず匂いをかぐ



苦手なビールではないと、確信すると、ぐいっとそれを飲み干した



『うぇ!なんだこれっ』



まずい、と顔を歪ませ、グラスを返してきた悟空に、ブルマは



『いつまで経ってもガキねー』



と、大笑いしながらそのグラスを受け取った



『おらガキじゃねぇぞ』

『大人なら少しはお酒も飲めなきゃ』



膨れっ面で否定する悟空に、ブルマは嫌味たっぷりの笑みを浮かべてそう言うと、グラスにウィスキーを注ぎ、また美味しそうに飲み始める



『ほら』

『サンキュ』



悟空は、クリリンから水を受け取り、一気に飲み干す


勢いよく飲みすぎて、零れた水を、ブルマは、汚いなぁー、と苦笑しながら、タオルで悟空の口の周りや服をゴシゴシと拭いていく



『いてぇよ』



力強いブルマの拭き方に、身をのけ反らせながら、そのタオルを奪い取った



その様子を見ていた皆が、楽しく笑い合う中、チチだけは違った



表情を曇らせ、その場から一人、離れると、ソファーに座り大きなため息をついた





(本当、悟空さとブルマさは仲良いだな…)





別に初めての光景じゃない

二人の仲の良さなんて

昔から分かってることなのに…





(なんか…嫌だな…)





その手で彼女に触れないで

そんな笑顔で、彼女を見つめないでよ

こっち見て…

なんで分かってくれないの…?

……………馬鹿






『チチさん』



自分を呼ぶ声に、チチは二人から目を離し、声がした方を振り向いた



そこには、ビールとお茶が入ったグラスを持ったヤムチャが立っていた



『どうしたんですか?』

『え?』

『ボーっとして』

『…あぁ』



別に、と言って俯いたチチに、ヤムチャは小さく微笑むと、お茶が入ったグラスをチチの前に置き、向かい合わせでソファーに座った


『ブルマと悟空でしょ?』

『え?』



的をついたヤムチャの言葉にチチはパッと顔をあげた



そんなチチを見たヤムチャは、やっぱり、と呟いて



『分かるなぁ〜、俺も昔、二人が仲良すぎて嫉妬したことあるし』



そう言って、ハハハっと笑いながらビールを飲みはじめた


ヤムチャの言葉に、チチはまた深くため息をつくと、テーブルに置かれたお茶を持ち、もう一度、悟空とブルマの方へ視線を向けた



『おら、我が儘なのかな』

『我が儘?』



チチは小さく頷き、ヤムチャの持っているビールに目をつける



『おらも、ビール飲もうかな』

『え?チチさん飲めるんですか?』

『あんまり飲めねぇけど…なんとなく…』

『じゃ、俺とってきますよ』

『え?あぁ、すまねぇだ』

『いいっすよ』



そう言ってヤムチャは席を立つと、ビールが置かれたカウンターへと向かい、グラスに注ぐと、チチのもとへと戻ってきた



『どうぞ』

『ありがと』



ヤムチャからビールを受け取ると、慣れないビールをゴクゴクっと飲みはじめた



そんなチチの様子を、ヤムチャは唖然と見つめた



『だ、大丈夫ですか…?ιι』



普段から飲まないビールに、チチの頬はたちまち赤く染まり始めた



『無理しないほうがいいですよ…ιι』

『無理なんかしてねぇだよ』

『そ、そぉすか…』







聞こえてくる二人の声

皆いるはずなのに

二人の声だけが

周りの音を消し去って

大きく耳に響き渡る





聞きたくない





今日は何故か

二人の仲を

真っ直ぐに受け止められない…







チチは嫌な気持ちを消し去るように、残りのビールを一気に飲み干すと、ソファーから立ち上がり、空になったグラスを持ち、自らカウンターへと向かうと、二杯目のビールを注ぎ始めた



『チチ?何してんだ?』



その声に、チチは眉間にシワを寄せながら振り向いた


そこには、チチの気持ちを知らない悟空が、いつものようにニコニコ笑顔を浮かべながら立っていた



『チチがビール飲むなんて珍しいな、…あれ?』



ほんのり赤くなっている頬を見た悟空は、酔ってんのか?、と言ってチチの顔に手を伸ばした



しかし、チチはパシッとその手を振り払う



『悟空さには関係ねぇべ?』

『…何か怒ってんのか?』

『別に』



明らかに、冷たいチチの様子に気付いたものの、悟空は、その理由が分からず、首を傾げる



そんな悟空をキッと睨むと、チチはすぐさま、フンっとそっぽ向いてしまった



『早くブルマさの所に戻ればいいだ』

『え?なんで?』

『おらなんかといるより、ブルマさといる方が、悟空さは楽しいべ?』

『へ?』

『ブルマさが好きなら、はっきりそう言えばいいでねぇか』



そう言い放ち、また飲みはじめようとするチチの手から、悟空はグラスを奪いあげた



『おめぇ、なに言ってんだ?』

『…………』

『なんか変だぞ』

『だって……』



酔いのせいか、自分自身、訳の分からないことを言ってしまっていることに気付くチチ



何も言わず、じっと自分を見つめる視線に気付いていながらも、怖くて悟空の目を見ることが出来ない



気まずくなったチチは、その場から離れようと、悟空に背を向け歩き出した



そんなチチを、悟空は無言のままひょいと担ぎあげる


『な、なにするだよ!』



すると、悟空はチチの言葉には耳を傾けず、クルッと振り向き、口を開いた



『ブルマ、どっか部屋あいてねぇか?』

『え?どうしたの?』

『チチのやつ、酔ってるから、少し横にならせてやりてぇんだけど』



悟空の言葉に、ブルマは、いいわよ、と快く承諾し、隣の部屋が空いてることを伝えた



『わりぃな』



そう言って、悟空はそのままチチを連れて、皆のいるその部屋を後にした








隣の部屋に入ってすぐ、悟空は目の前のソファーに、チチを押し倒した





『嫌!』

『嘘つけ、嫌じゃねぇだろ』





全て見透かすような

その瞳が憎い

首筋に伝う唇

どうすることもできない

そんな自分が凄く嫌

だけど、駄目

流されるわけにはいかない

こんな場所で…





冗談じゃない!





『やめて…!』

『なんで?』

『隣に皆いるのに』

『じゃ、声だすなよ』





目が合えば最後

拒否することは許されない

息つく暇さえ、与えてくれない口づけに

言葉は全て奪われて…





『ここじゃねぇほうがいいのか?』

『え…?』

『ブルマの前で、こうすれば良かったか?』





馬鹿にするような

その笑顔が嫌い





『お前が、こうさせたんだろ?』





皮肉まじりに放つ

その声が嫌いなの





『それとも、おらが、お前にこうゆうことするより、ブルマの隣にずっといたほうが良かったか?』





私の気持ち分かってるくせに

問いかける言葉が

凄く憎い…





『……そんなの…嫌』

『じゃぁ、どうしてほしいんだよ』





またそんな笑顔で…

本当に、大嫌い

何を言わせる気なの?

分かってるんでしょ…

焦らさないで

早くしてよ





『早く…』

『ん?』

『……だから』

『なんだよ』





首に腕を回したじゃない

もう、どうなってもいい…って

私なりのサインでしょ?





『早く壊して』








この腕も、胸も

この手も、指先も

この声も、唇も

甘い囁きも

熱い吐息も……





『………チチ…』

『…っ…なに…?』

『…声…だすなって…』

『………』

『聞こえちまうぞ…』





いっそのこと

聞こえてしまってもいい

証明したいの

あなたは

私だけのものだ、って






なんて、馬鹿なこと…

もう、私…
一体どうしちゃったんだろ








全部、私だけのもの

絶対に誰にも渡さない




『チチ、酔ってるからか?』

『……え…なんて…?』

『なんかさ』

『…な、に……』

『やべぇ…』






嫌いなんて嘘

好きで、好きで

大好きで

嫌いになんてなれないから




だから、お願い…





もう、変な嫉妬に狂いたくないの


痛いくらいに刻み付けて



もっと、強く






あなたの全てで
私を壊して…






END








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