sleeping beauty





どれだけ償い続ければ
君の涙は枯れ果てるだろう


泣かせてばかりだった自分が


今、君のためにできること









sleeping beauty
―眠り姫―












闇と静寂に包まれた真夜中



悟空は違和感を感じ、ふと目を覚ました



腕の中にあるはずの温もりがない





『……チチ?』





隣で寝ていたはずのチチの姿が消えていたのだ



どこに行ったのかと思い、ベッドから出ると、そのまま寝室を後にした



部屋を出た悟空は、暗い廊下に、光がもれていることに気づく



そっと光が射すほうへ歩き出し、悟空は静かに扉を開いた





『あれ?』





そこには、椅子に座り、テーブルの上に腕を置き、それを枕にしながら、スヤスヤと寝息をたてているチチの姿があった



そんなチチに、悟空はゆっくり歩み寄った



眠れなかったのか…



寝ているチチのそばには、飲みかけのホットミルクが置かれていた





『チチ…起きろ…』





そう小声で呟き、こんなところで寝ていては風邪をひいてしまうと思った悟空は、眠るチチにそっと手を伸ばした



しかし、あまりにも気持ちよさそうに眠り続けるチチを見て、悟空は静かに伸ばした手をひっこめた





(起こしたら可哀相だな…)





そう思い、悟空はソファーの上に置かれていたタオルケットを取ると、眠り続けるチチの背中にかけ、自分も隣に椅子を並べて、そのまま静かに腰かけた





『…悟…空さ…』


『…?…チチ?』





いきなり聞こえてきたチチの声に、起きてるのか?、と思い、悟空は声をかけた



しかし、チチはまた何も言わなくなってしまった



相変わらず、気持ちよさそうに寝息をたてている



そんなチチに、悟空はふっと笑い、





(寝言か…)





そう心の中で呟くと、テーブルに頬杖をつき、そのままチチの寝顔を見つめ続けた



すると、チチの口元が、また微かに動き始めた



何を言っているのかは分からなかったが、そんなチチが可笑しくて、悟空は静かに耳を傾けた





『こら…っ……悟空…さっ…』





夢の中でも怒られているのかと…、そんな自分に、悟空は苦笑してしまう



チチはまたスヤスヤと寝息をたてる





『………好き…』





そう呟くチチの寝顔がふっと微笑んだ





『…好きだ……悟空さ…』


『………あぁ』





そんなチチの寝言に、悟空は微笑みながら、そっとチチの髪を撫でた





『…ないで………』


『…ん?』


『…も…う………何処にも……行かな…いで…』





そう呟いたチチの瞳からは、スーッと涙が流れた









どれだけ傍にいても
どれだけ君を抱きしめても


その心に根付いた不安は
そう簡単には引き抜くことは出来ないって

痛いくらい分かってる



その涙が
何よりも確かな証拠…



それはまるで猛毒のように
君の心を蝕んでいること



悔やんでも
悔やみきれない…










『……チチ…ゴメンな…』





悟空はそう呟くと、そっとチチの頬に口づけした



すると、チチの瞼が静かに開き始める





『…ん…悟空さ…?』





うっすら目を開けたチチに、悟空は小さく微笑んだ





『風邪ひくぞ』










そっと目を覚ました君の瞳に映るのは



白馬に乗った王子様ではないけれど



君を深い悲しみから目覚めさせることができるのは



自分しかいないと思ってるんだ



深い闇を抜け
君の胸に宿る不安を
全て拭い去ってやるから










『…あれ?…あぁ…いつの間にか寝ちまっただ…』





そう言って辺りをキョロキョロ見渡しながら、眠い目をこするチチ



そんなチチの腕を引き、悟空は自分の胸へ引き寄せた





『心配すんな…もう何処にもいかねぇから』





自分が寝言を言っていたことを知らず、いきなりそんなことを言われたチチは、訳がわからず、されるがままになりながら





『いきなり何言うだよ』





そう言ってクスクス笑った





『ん…、なんとなく』









朝、目を覚ます時


必ず君の傍にいて


飽きるくらい抱きしめて


嫌だといっても離さない


そうすれば


いつの日か涙も消えて


心の傷も癒えていくのかな


その為なら


君のためなら…


何度でも君に誓うよ







悟空はそっとチチを自分の胸から離すと、いつもの笑顔を浮かべ、スッと手を差し出した





『さて、部屋戻って寝るか』





チチは、うん、と笑顔で頷き、そんな悟空の手をギュッと握りしめた










俺がただ一人


生涯をかけて愛する女は


お前だけ…





約束する


その手を二度と離さない


永遠の眠りにつく


その日まで…


君の手をひいて


歩き続けるよ…











END








あきゅろす。
無料HPエムペ!