next world



※この作品は、【ロスコア】の管理人さま・亜哉さまとの合作作品です^^

とても素敵なイラストを書いていただきました☆

無断転送やお持ち帰りはお止め下さい


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どんな貴方も
嫌いになんてなれないよ


もう一度…今度こそ
素直なまま、私らしく











next world
―来世―













「なぁー、チチー」





だらし無く語尾を延ばして、どこか気怠そうに彼は私の名前を呼ぶ



何?、と振り向いたと同時に、いきなり頬にキスをされた





「なっ…!な、な、なにするだよ!!!」


「いいじゃねぇか」





そんなに怒るなよ、と彼は呑気にヘラリと笑う



その笑顔があまりにも腹立たしくて、馬鹿!、って言いながら手を振り上げたら、平手をくらわせる前に、意図も簡単に掴まれてしまった





「は、離すだ!」







「なんで?」


「いいから!」


「嫌だ」


「………っ、」





何も言い返せない私を、彼は嘲笑うかのように、酷い笑顔で見つめてくる



そのまま半ば強引に引き寄せられて、私は逞しい腕に包まれた



ふわり、眠気を誘う甘いソープの香りに立ちくらみ



あぁ、ダメ
しっかりしないと





「いきなりどうしただよ」


「んー?」


「ほら、ちゃんと髪乾かさねーと駄目だべ」


「ん?、うーん」





聞いているのか聞いていないのか、分からないような返事をして、抱きしめる腕の力を強める彼



うなだれながら、縋り付くように抱きつく癖は相変わらずで、いくら姿が変わってしまっても、

やっぱり悟空さだ、と

金髪の不良みたいなこの容姿にも、少なからず安心感を覚えた





「まったく、…どうしようもねぇだな、悟空さは」





風邪ひいちまうだぞ、と、少し大袈裟に溜め息をつきながら、
少し体を離して、彼の肩にかかったタオルを手に取る



―――と同時に、あの瞳と目が合った





「ちょっ……」





異色な瞳に囚われて
気付いた時には既に手遅れ



伸ばしたその手は彼に掴まれていて、私は逃げ道を失ってしまっていた



見据えてくるその瞳があまりにも綺麗で…、
真っ直ぐに見つめられた私は、なんだか気恥ずかしくて思わず俯いてしまった



それと同時に、額に柔らかな温もりを感じて
何故か変に緊張して自然と肩がすくんでしまう





「チチ」


「………な、なんだべ」





動揺する私を他所に、彼はハハッと短く笑う





「何、緊張してんだよ」


「べ、べつに緊張なんか…!」





そう言いながら顔をあげて余裕の素振りで咄嗟に笑顔を造って見せたら、彼は何処か寂しそうに目尻を下げた





「………悟空さ?」





首を傾げながら名前を呼ぶと、優しく頬を撫でられた





「ちゃんと笑えよ」


「え…、」


「いつもみたいにさ」


「い、いつもみたいにって、」


「早く」


「………………」





いきなりすぎて口ごもってしまう



今まで、数え切れないほど笑ってきたけれど、こんなふうにいざ笑えと言われると難しいもので





「こ、こうけ?」





自分でも、ぎこちない笑顔だと分かっていたけど、私はそのまま彼を見つめた



それを見て彼は笑う



またあの寂しそうな瞳で





「下手くそ」







そう笑って
立ち尽くす私を、再び強く抱き寄せた



こういう時の彼を、心底ずるい男だといつも思う



何でも抱きしめればいいと思ってるのか、と
抱きしめられる腕の中で冷静に問い掛けたら、

そんなつもりねーよ、と
少し困ったように笑って、ただこうしたかっただけだよ、って耳元で呟く



それから、好きだよって
決まり言葉で私に触れた



やられっぱなしは悔しいから、どれくらい好きなの、と意地悪な瞳で見つめたら、
ゾクッとするくらい妖しい微笑で見つめ返された





「殺したいくらい」


「………!」





冷たい唇が、硬直した私の体に甘く噛み付き、重なるうちに熱を帯びてく



苦しくて、息が出来なくて…、このまま窒息してしまいそうで、



(だめ、限界)



…………でも離れたくなくて



このまま彼の口づけに殺されるのも悪くない



なんて、馬鹿みたいな思考を遮るかのように、ぎりぎりのところで、彼は唇を離した



難く錘っていた瞼をあけた―――――、至近距離で瞳がぶつかる



その瞬間、彼は小さく笑って、本気で殺っちまうとこだった、と



残酷なふりして伏せた瞳に、濡れたままの髪から雫が落ちて、火照る私の頬を静かに伝った



一瞬その雫が涙に見えて、泣いているのかと思って、思わずそのまま立たずんでしまう



しばらく沈黙が流れた後、先に口を開いたのは彼で、顔をあげたその瞳には、涙は滲んでいなかった





「ごめんな」



「え…?」





いつも泣かせてばかりでゴメン、て
いつになく真剣な顔して言うもんだから、どうしていいか分からなくて、一瞬固まってしまったけど、





「……な、なんだべ、いきなり〜」





らしくない台詞を笑い飛ばして、少し意地悪に瞳を覗いた





「そんな言葉、悟空さには似合わないだぞ」





からかう私に、彼は小さく微笑んで、やっぱり笑ってるお前が一番好きだ、と言った



今までにない程の優しい笑顔と話し方に、私は何故か泣きそうになって、





「……………馬鹿」





そんな言葉しか返せなかった



涙ぐむ瞳に彼がキスをおとす



くすぐったい感触に、軽く瞼を綴じて温もりを感じる




「チチ」





名前を呼ばれて瞳を開けば、これ以上、近付きようのないくらいに近い二人



視線が絡まり唇が重なるその寸前…



彼が口を開いたのと、私が目を綴じたのとは
どっちが先だったのかな…?





(今度生まれ変わったその時は、もっと上手に愛したい)







ああ、やっぱり貴方らしくない



また笑い飛ばしてやりたいけど
今となってはもうできない


貴方はもう
何処にもいない



溢れ続ける…、枯れない涙



もう止め方も忘れてしまったみたいで



(笑ってるお前が一番好きだ)



ごめんね、今は
泣き笑いさえできないよ
















優しく触れた唇も
強引な口づけも



包み込んでくれたその強さも



いつも、やめてと言っても聞いてくれない程、体中に刻んでいた跡を、一つとして衝けなかったその訳も



碧い瞳に寂しさ浮かべて
名残惜しそうに
何度も何度も名前を呼んでいたことも



その全てに意味があったこと、…逝ったあとで分からせるなんて



ホント貴方は
どうしようもない男



どうしようもない、ろくでなしね







(ちゃんと笑えよ)





馬鹿ね、
それはこっちの台詞





(下手くそ)





その言葉、そっくりそのまま、平手に掴んで貴方の頬に振り落としてやるわ



でも、
貴方を目の前にしたら
きっと叩くより先に泣いてしまう



本当は、後悔してる



あの時どうしても伝えるべきだったの



もう一人の貴方のことも
どうしようもないくらい
愛してた…、ってこと



ごめんね、謝るのは私も一緒



ずっと素直になれなくて
後悔ばかりが私を襲う



ああ、今なら
照れて言えなかった
好きの言葉も、愛してるも

何だって言えるのに



受け身ばかりだったキスも…何もかも
もっと上手に、我が儘に
本当の私らしく甘えたかった





ねぇ、まだ愛し足りないの




だから、私も…





今度生まれ変わったその時は
もっと上手に愛したい







END











あきゅろす。
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