オレの秘書さん
仕事の邪魔は恋路の邪魔
今日の夕食後も書類とにらめっこのボス。
そんな執務室をノックする音がしてリボーンさんが入ってみえました。
「おいツナ。またリリーが来たぞ」
普段表情をあまり顔に出さないリボーンさんがニヤニヤと笑う一方、ボスは盛大にため息をつかれました。
「はぁ、追い返してよ…仕事中なんだし」
執務イスから立ち上がるボスはネクタイを締め直し、扉の方へ歩いてゆかれます。
「マフィアは女に優しくするもんだと何回も言ってるのがまだ分かってねぇのか?それに、この時間に来た理由が分からないお前じゃないだろ?」
「…尚更追い払え」
壁にもたれたリボーンさんがボスに何かを耳打ちされて、ボスから一瞬冷やりとした空気が漂って私はそちらから目を離せずに見つめているとリボーンさんと目が合いました。
「○○…悪いが客にお茶を頼めるか?」
「おいっリボーン!」
『承知いたしました』
何故か慌てるボスの横を通り過ぎ、紅茶の準備のためキッチンへと向かいました。
カートに載せたティーカープ達をカチャカチャ音を立てて応接室へと向かい控えめにノックをしました。
「どうぞ…」
ボスのお声にゆっくりと扉を開けると応接ソファでお客様がピッタリとボスに寄り添っておいででした。
「失礼いたします」
何故か急に緊張感に襲われて慎重にカートを押し、温めておいたティーカップをソーサーの上に置く。
「ねぇ、綱吉様。今日こそお部屋に行ってもいいでしょう?」
「申し訳ありません。未だ執務が残っておりますので…」
耳に嫌でも入ってくるボスとリリーさんの会話に、ボスのお仕事の邪魔をしないで欲しいなぁと考え事をしていたら熱くなったティーポットに指が振れて思わず声を出してしまいました。
「どうしたの!?」
すぐ近くで聞こえた声に驚いて顔を上げるとボスが心配そうな顔で私のすぐ横に立っていらっしゃいました。
『大したことありませんから!』
私は慌てて手を隠そうとするけれど、ボスに手を掴まれてしまいました。
「綱吉様がお優しいのは素敵ですけど、使用人のことなんて放っておけばよろしいのに…」
「悪いけど帰ってくれる?」
「えっ!?私…がですの?」
「リリー、君に言ってるんだけど?」
私の指を見つめたまま、聞いたことのない低く地を這うような声にリリーさんがビクリと肩を揺らし、私も足が震えました。
『ぼ、ボス!これくらい平気ですから!』
「大丈夫じゃない。ただでさえお嬢様に仕事の邪魔されてるのに、○○に怪我されるともっと困る」
手を引っ込めようとするけれどボスは私の手を放して下さらず、憤慨した様子のリリーさんが私たちの横を通り過ぎ際に聞いたことのない暴言を吐いて部屋から出て行かれました…。
「早く冷やさなくちゃ!」
『ボス、リリーさん怒ってらっしゃいましたよ!私のことは自分で出来ますから彼女を追いかけて下さい!』
私の手を引き水場へと歩くボスの背中に大きな声で話しかけるのに無視をされます。
無言で蛇口を捻ったボスの手ごと私の赤くなった指に冷たい水が当たる。
ボスとほぼ密着した状態に私の顔の方が火傷したみたいに赤い気がしてきました。
「…助かったよ○○」
『え!?どうしてですか?私の方こそお手を煩わせて申し訳ありません』
頭の上から優しい声で言われて意味が分からず自分の失態を謝るしかありません。
「あのヒトしつこくてさ…。これで邪魔されないで済むね」
同盟マフィアのご令嬢を怒らせたというのに楽しげにされるボスにオロオロしつつ、でもこれで仕事の遅れは微々たるものになりましたね…
『ボスは本当にお仕事熱心ですね!早く終わらせられるよう私も頑張ります!』
「……そうだね」
仕事の邪魔は恋路の邪魔
(…ボス、指の感覚が…)
(ダメ!たくさん冷やさないと水ぶくれが出来るよ!)
((折角君に触れていられるんだからもう少しだけ…))
'10/7/9up
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