オレの秘書さん
モノは言いよう
朝の会合から戻ってみえてからご機嫌のすぐれないボスは昼食をすまされてもずっと相変わらずのご様子。
何かよくないことでもあったのでしょうか…。
お優しいボスのことです、部下の方がお怪我でもされたのでしょうか…。
書類越しにチラリとボスの方を見ると、目が合ってしまいました。
「…オレの顔に何かついてる?」
険しい表情を崩されたのでホッとしたのですが、私が何故ボスを見ていたのかと聞かれて返答に困ってしまいました。
『…あの、何か考え事をされていらっしゃるようでしたので…』
そう言えば「ああ…」と指を顎に持ってみえたボス。
流石ボス、絵になります…じゃなくて!
「…○○にさ、同盟のファミリーから引きぬきの話があってね…」
『えっ!?』
引きぬき?
引きぬきって本人とひっそりと行われるのでは?と頭を捻る。
そんな私にボスは更にお話を続けられる。
「でね、オレとしてはいくら同盟ファミリーと言っても○○を渡したくないから丁重にお断りしたんだけど、本人の意思を確認したいってゴネられてさ…」
『はぁ…』
そんなに優秀でもない私を引き抜こうとしているファミリーの気持ちは有り難く思うけれど、私もボスの命令では無い限りここを離れたくはない。
「で、どう思う?」
『どうかと聞かれましても…。私はボスの命令でしたらそのファミリーに行きますが…』
自分で言って何となく寂しくなって声がだんだんと小さくなった。
「じゃあ行かなくていいよ」
ニッコリと効果音が付きそうなくらい笑顔を見せられたボスにとてもとてもホッとした。
すると、目の前で電話をかけ始めたボス。
「こんにちわ…沢田です。朝言っておられた○○のお見合いの話ですけど…」
お見合い!? 引き抜きじゃないの!?
確かにお見合いとかしたくないけれど…
開いた口の塞がらない私の前に携帯を差し出すボスの顔と携帯を交互に見る。
「○○からもお断りして?」
モノは言いよう
(ぼ、ボス!お見合いって初めからおっしゃってください!)
(え〜〜言いたくなかったんだもん)
(どんな我儘ですか!)
'10.6.29up
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