オレの秘書さん
ケース6 クローム髑髏
「ボス…報告書これで良い?」
「いつもありがとうクローム。骸のヤツ、オレが何回言っても報告書出さないからさ…」
申し訳なさそうに、クロームさんから書類を受け取るボスにクロームさんが微笑んで首を振る。
「気にしないで…ボス。……あの…」
私の方を俯き加減でチラリと見られたクロームさん。その仕草が可愛らしくて思わずドキリとしてしまいました。
もじもじとスーツの裾を手で弄るクロームさんに、ボスが穏やかに微笑まれて席から立ち上がられました。
「ちょっと休憩しようか。○○、クロームの分も頼むね」
『はい。では、準備いたしますのでお待ちください』
くるりと方向転換してキッチンに向かう私の心臓からはツキツキと変な音がしていました。
ま…まさか…
以前、ボスに好きな人が居るって…
クロームさんのこと?
いつもの2倍はかかってお茶の準備を終え、出来るだけゆっくりとボスとクロームさんの所へとカートを押してゆく。
あぁ…私ってば邪魔者です。
ここは空気を読んで席を外しましょう!
…そう思っていたのに、何故かクロームさんは私に隣へ座るように促し、どこから出したのかプリンを目の前に差し出されました。
「これ…美味しいの。○○とボスと食べたかったから…」
はにかむクロームさんに、さっさと退席する予定が崩れてゆきます。
『美味しい!凄く滑らか!』
美味しくてつい大きめな声が出てしまいました。
出来るだけ存在感を無くそうと思ったのに、これでは空気を読むどころか壊してしまってます。
「良かった…。ボス…どうしたの?」
クロームさんの言葉にボスの方を見ると、不機嫌そうに窓の方を向いておられました。
あぁぁ!折角の2人きりの時間が無くなって怒っていらっしゃいます!
どうしよう…すごく辛いです!
『あ、あの、私ちょっと用事を思い出したので、お2人でごゆっくりどうぞ!』
そう言って立ち上がったけれど、そこから動く事は出来ませんでした。
とっても困った顔でボスが私を見上げていいらっしゃって、私の考えている事をズバリと言い当てられたから…。
「○○さ…もしかしてオレ達に気を使ってる?」
きっと私の気の利かないセリフと不自然さに気を悪くされたのだとビクビクしながらゆっくりと頷きました。
すると、目の前のボスは盛大にため息をつかれ、隣のクロームさんからはクスリと僅かに笑いが漏れました。
「○○…私とボスは何もない…。ボスが好きなのは…」
「クローム!!○○は立ってないで座りな?クロームが折角○○のためにプリンを買って来てくれたんだから!」
表情を変えることなくサラリと否定して、ボスの好きな人を暴露しようとするクロームさん。
一方、まくしたてるようにして話を変えようとするボスに凄くホッとしてしまい、さっきよりもずっとずっとプリンが美味しく感じたのでした…。
相談? クローム髑髏の場合
(骸にもあんな顔で笑ったのかと思うと…ムカツク…)
(ボス…もう少し積極的にしないと…ダメ)
(クロームにそう言われると更にこたえるんだけど…)
(お2人がお付き合いしてないと分かったらドキドキが収まった…何故?)
'10.10.4up
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