[携帯モード] [URL送信]

月の残り香
T
 

 いやあ、怖かったです、ベルゼブブ…。もうダメかと本気で思いました。まあ、ダメはダメだったんですけど。
 うーん…、色々思うところはありますが…。言いたい事もありますよ、ほんと。…でもそれはいずれまた。

 さて、今日は「変化(へんげ)」と「霊質(あるいは霊力)」のお話をします。

 前章でガブリエルとベルゼブブは変化が得意だと書きました。
 この変化、実は霊質と深い関わりがあります。

 俺達は実体こそありますが、「ヒト」と大きく違うところがあります。翼があることや、そもそも天界の住人であるのは大前提ですけど、肉体って意味での話です。
 天使は内臓から手足に至るまで「ヒト」に極めて近いんですけれど…。違いはそうですね、MP(マジックポイント)があるって考えてもらえますか?MPで構成されてると言ってもいいかな。MPがLP(ライフポイント)とも言えるから。

 「ヒト」は生まれた時からその細胞分裂の数が定められていて、それがだんだんゆっくりになり、やがて鼓動を止めますよね。
 しかし天使には「ヒト」でいう寿命がないんです。MPで何度でも回復し、身体を休める事によりMPがチャージ出来ると考えて下さい。

 皆幼子の姿で生まれますが成人した時の容姿は様々で、ラファエルのように少年のようにも青年のようにも見える天使もいますし、屈強な壮年に見える者もいます。
 この辺りの容姿や使命、能力は全て神の決められた事ですから、それ以上説明するのは難しいですがね。

 俺達が「ヒト」に近い姿なのは、「ヒト」を見守り助ける事が多いからです。
 手足が無いだけで、自分と違う姿の蛇を知らずに忌諱すると聞いた事がありませんか?それが理由とも言われています。
 ただいつも「ヒト」の姿とは限りませんし、仕置きを使命とする天使などはわざと恐ろしい姿のまま過ごしているケースもあるくらいです。天使は様々に変化してあなた方の傍にいる機会も沢山あるんですよ。

 霊質の強弱は称号で決まります。言いかえると、神に近い存在であればあるほど高いわけです。
 ですからルシフェルやベルゼブブ、四大天使達はそれが特出しているんですよ。
 神から与えられた使命を果たすのにそれを大きく削ることはないですが、戦いで傷を負えばその傷の分を失いますし、変化の苦手な天使が無理に変化をすれば、得意な者より余計に消費することになりますね。


 ガブリエルは慈愛の天使でもありますから、相手を安心させるためにそれはもう上手に自分の姿を変えます。要するに相手にとって受け入れやすい姿になるわけです。
 天界では、ラファエルが小さかった頃よく変化を使い遊んでいました。俺も何度も見たことがありますが、木の葉から下界の動物達にいたるまで驚くほど見事に化けていましたよ。

 ベルゼブブは…彼はいわば天界の暗殺者でしたから、勿論その相手に近づき存在を消すために変化を使ってました。あっさり消していたのか、じわじわとなのかは考えたくないですが。いずれにせよ華麗に変化し、相手の虚を突いていたに違いありません。

 俺もそれにまんまと騙されたわけなんですけれど…。

 ルシフェル、ミカエル、ラファエルもMPは高いですし、その気になればとても上手に変化しますよ。
 けれど得手不得手っていうのかなぁ。好き嫌いって言うんでしょうか。ガブリエルとベルゼブブのそれは、良かれ悪しかれ他に類を見ない素晴らしさなんです。
 しかも彼等は楽しんでますからね、ほんと、たちが悪いって言うか…。

 何度も言いますが、それに俺は騙されましたけどね…。(結構トラウマかも) 
 

 天使はこの霊力を使い怪我を治す事も出来ます。
 そうですね、内蔵が抉れた位で死んだりしません、基本的には。
 ただ、その身体の損傷に応じて、回復には時間がかかります。
 ただしベルゼブブがこだわった「目玉」(…「瞳」と言おう、俺)瞳だけは別です。あれはいわば、生まれた時神に頂いた贈り物のようなものです。
 下級天使に至るまでその贈り物は一人ひとり違います。俺達の使命や能力を表すそれを、皆大切にしているんです。
 シンボル。そう言っても良いかもしれませんね。この瞳に関しては多少の傷なら治せますけど、それこそ抉られたり潰されたりしたら元には戻りません。
 
 ならば天使を消すにはどうすれば良いか。これはその存在全てを消すしかありません。
 MPを0にするか、切り刻むのか…。ちょっとこれは想像したくないですよね。俺もです。
 けれど、例えばガブリエルやラファエルのように、癒しの力を持つ他の天使が力を貸してくれない限り、その状態になってしまったら、まさに塵となり消えてしまいます。
 


 さて、前章に引き続きこの章でも新しい天使が登場します。

 四大天使の最後の一人、ウリエルです。

 彼は『神の炎』と呼ばれ、所謂仕置人です。階級は熾天使ですが永遠の業火で罪人をさいなむと言われ恐れられています。開いた掌に炎を携えた姿で描かれることが多いですね。

 また彼はエデンを護衛する門番でもあります。天界とエデンは丁度回廊のような空間を挟んで繋がっています。この回廊の両側にエデン、天界それぞれの門があり、そのエデン側の門番をしているんです。

 墨色の巻き毛に尖晶石を思わせるくすんだ青い瞳。偉丈夫で豪快ではありますが、門番に相応しく非情な面も持ってます。
 エデンは特殊な場所ですので下界を含め外からの侵入には神経質になるんですよ。

 エデンに顔パスなのはラファエルくらいでしょう。彼はウリエルとも仲が良いらしくエデンの話で盛り上がる事も多いと聞きました。時にはウリエルが炎を自在に操りラファエルの歌声に合わせて舞って見せたり、天界でのゴシップをラファエルが話して聞かせたりしているらしいですね。

 彼はその使命から、ミカエルやガブリエルとは懇意にしているようです。ただ俺は直接の関わりが少なく、あまり言葉を交わした事はありません。けれど頼りになる仲間だと思って彼を見ていますよ。

 ウリエルを俺達は 辰馬 そう呼びます。 


 では物語を綴っていきましょう。「黄昏と黎明(第2章)」の直後からいきなり話は始まります。




[NEXT#]

1/7ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!