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For real?
]《R18》


 部屋に戻り、土方を待った。妙な気分だった。

 意味するところは理解しているし、仮にこれがアイツにとって必要な事で、避けて通れないならば、他のヤツとアイツがするなんて俺は考えたくもねぇし、俺に逃げ場はねぇ。
 でも、セックスは何月何日の何時から、しましょうと計画してするもんじゃねぇと思うし、初っ端から演技とは言え一方的に相手の自由を奪ってする行為に、俺はまだ躊躇いがあった。

 ほどなく、階段を登る音が聞こえ、チャイムが鳴り、土方が来たのがわかった。
 俺は扉を開け、土方を中に入れると、緊張している土方の頬に優しくキスをした。

「…早かったね。…大丈夫?」

 土方は頷くと、手に持っていた袋を俺に渡した。

「…これ…、道具…俺、最初手ェ縛られて…で、その…綿棒は……」

「…自分で買って来たの?んな事までしなくても…」

 憐れな程、ガチガチになっている土方にそう言うと

「…どんな事されたか、話してなかったし…俺が無理言ってんのわかってるし…お前に、用意までさせちゃ、なんか…」

 とつっかえつっかえ言葉を続けた。

 紐は…うん、そうだね、想像がつく。このボトルはボディーローションね、うん、わかる。けど、綿棒は?まさかとは思うけど、まさかそうなの?調べるついでに、SMを看板にしてる店の店員が書いてるブログとか読んだけど、そーいう用途なんだよな…。

 明らかに今、俺はビビッてる。しかし、それに追い打ちをかけるように、土方がポケットから一枚の紙を出し、少し震えてる手で俺にそれを渡した。

「…全部はもう、覚えてねェけど…ソイツがその時、俺に言った言葉…」

「…お前…そこまで…?」

 受け取った紙に書かれた言葉を読んで、この前土方に言った俺の言葉がその時を準えている事がわかり、胸が痛くなった。
 意味は全く違っても土方にとっては確かにソイツの言葉と重なったはずだから。

「…十四郎、俺、あの時…」

 思わず謝ろうとした俺に、土方はひしと抱きつき、

「それはもういいんだ。…やってくれ、銀時」

 そう言った。

「いっこだけ、お願いしていい?俺はお前を十四郎って呼ぶよ?やる事はその時の通りでも、してんのは俺。だから、俺はお前を殴る事は出来ねぇから。それは無理だよ?でも、本当に怖くなったら言って。それだけ、約束して」

 震えるまま頷いた土方を、俺はシナリオ通りに押し倒し、俺のベッドの脚に土方の両手を縛り付けた。



 土方の瞳は確かに恐怖の色があり、この行為の相手が俺だと強調するよう、土方の名前を呼びながら、過去の亡霊の台詞を真似ていく。

「お前がいけないんだよ、十四郎。お前が俺にこうさせるから」

 意地悪く言うと、土方の中心を服の上から鷲掴みにする。

「!!…っ…ぁぁっっ!やめっ…」

「やめるわけねぇだろ?イイコにしてれば、ご褒美やっから、楽しみにしてろよ」

 下からシャツをたくしあげ、左の胸の下に手をやると、土方の鼓動が激しいのを感じ、それだけで、もうこんな事は終わりにしたくなる。

 シャツを乱暴に引き裂き、白い肌を撫で回し、まだ反応の無い胸の突起に唇を寄せた。

 舌で何度か周りをなぞると俺の頭の上で、声を押し殺すような息使いが聞こえた。

「もう感じてんの?エロい身体してんね、十四郎は」

 そう言って、俺は突起を歯に挟み、クイクイと引っ張ってやる。もう片方は触ってやらず、下半身を弄る。

「…ひぁっ…あっ、それ…ダメぇっっ…」

 否定しているが、俺の口の中で、突起は固く尖ってきている。服の上から弄られている中心も芯を持ち始めた。
 それでも、俺は突起を虐めるのを止めず、更に歯を強くあててやる。

「…ひぅっ!いっ…痛いっ!ぁぁぁっっ!」

「…違ぇだろ?何て言うんだ、ちゃんと言え」

「…んぁっ…ち、乳首がぁぁぁっ…とれちゃうぅぅっ…!」

「はっ…取れちゃうほど弄って欲しいんだろ?」

「んんんっ…!ぁふっ…はぅっ!いじってぇぇぇ!」

 止まらぬ土方の喘ぎ声と、あまりにも従順な姿にクラクラしそうになっていた。

 と、同時に、その時から、セックスなど封印してただろう土方が、同じシチュエーションに身を置くだけで、こんな風に反応させるようにした過去のソイツに嫉妬心と新たな憎しみが芽生えた。

「おいおい、乳首だけでそんなに感じちゃうわけ?十四郎は。じゃ、そろそろお前の可愛いトコロ、本格的に虐めてやろうかな」

 俺は土方の下半身を剥き出しにし、

「ちゃんと見ろ。男に触られて感じるお前を見ろよ。見ねぇならお仕置きだよ?」

 そう声を掛け、ローションを土方の股間へ垂らし、俺の両手で広げていく。

 それを見る土方の羞恥心を煽るよう脚は大きく広げさせ、閉じれば慣らさずに入れると冷たく言う。
 ジュクジュク音を立てながら、ぬるぬるしたローション塗れの中心を扱き上げていく。


「…ぁぁぁっ…ふぁっ…んっ、ぎ、ぎんとき…」


 でも、その時、瞳を潤ませ、上気した顔で土方が俺の名を呼んだ時、愛しさが込み上げてそれ以上土方の希望に応えるのは無理だと俺は悟った。


 綿棒で尿道を?無理だろ?自由を奪って、言いなりにさせて、何が楽しい?
 そりゃ互いが楽しんでプレイの一環ならわからなくねぇよ。自分に、実はSっ気があんのも自覚してるし…。

 けど俺はレイプなんて御免だ。それに…、土方は俺に感じてくれてるんじゃねぇのか?
 ソイツに凌辱された時、こんな風にソイツを呼んだのか?

 沖田くんにも俺にも頑としてソイツの名前を言わず、ソイツの存在(それが過去であれ)を認めないと言葉にせずとも主張した土方が、一方的な行為の最中、こんな風に愛しさを滲ませて、相手の名を呼んだわけがない。

 俺は決して行為中、口付けないでくれと言った土方の願いを無視して、気持ちを込めて口付けながら、拘束を解いた。



 両手が自由になった土方がまだ息を荒くしながら、俺に問い掛ける。

「なっ、なんで…」

 その頬を撫でながら俺は言った。

「ベッドでしよう。記憶を塗り替えてぇのはわかってる。でも、俺はソイツのした事、言った事、これ以上なぞれねぇ…。叶えてやりてぇけど、やっぱり無理だよ。だって俺はお前が好きなんだよ?十四郎…」

「でも……」

「…だからね、二人で気持ち良くなろう。俺、お前を触るのが好きだよ?俺に触られて、俺を呼ぶお前が好きだ。記憶をなぞってはやれねぇけど、こんなセックスもあるってお前に感じてもらう事なら出来るかもしんねぇもん。どんなに怖がってもいいよ?嫌ならしねぇ。どんなに時間が掛かってもいいよ?俺は待つから。だからね、過去の真似事をすんじゃなくて、二人のセックスにしねぇ?それじゃだめ?」

 クタリとした土方を支え、すぐ側のベッドに寝かせ、俺も服を脱いでいく。
 それからまだ応えぬ土方の瞳を上から真っ直ぐ見下ろし、

「…好きだよ」

 そう言った。


   *****


 銀時が俺の願いを聞き入れ、その時のように俺を拘束し、その時の言葉を俺に投げかけながらも、その瞳の奥に辛そうな光があるのはわかっていた。

 苦悩しながら俺の望みを叶えようとする、そのひとつひとつに隠しきれない優しさを感じて、無意識に銀時の名を呼んでしまった。
 すると、銀時の動きがピタリと止まり、俺に覆い被さるように顔を寄せ、そっと口付けられると、腕が自由になった事に気が付いた。

 「なんで」と問い掛けた俺への返事は、俺があの話をしてから今日まで、俺には見せぬようにしながらも悩み続けたのだろうとわかるには十分で、その先に告げられた、とても簡単で、でもとても深い言葉に涙が溢れた。

「…ごめんな。お前がどんな気持ちで俺に頼んだか、わかってねぇつもりはねぇよ?俺もそのまま、してやるつもりだった。本当に。いや、すげぇ悩んだけどな。でもそんでお前が過去から解放されんなら、最後までするつもりだった、本当に」

 銀時は俺の目を見ながら、そう言って何度も俺の涙を指で拭い、まるで女にするような優しい仕草で頬を撫でた。
 けれど、そうされても俺は女扱いするなとも、護るような真似をするなとも思わず、本当はあれからずっと、心の奥底で、こんなあたたかい掌を求めていたのかもしれない。そう思って、銀時の手に自分の手を重ねた。

「…すげっ…や、だった…」

「うん、嫌だったよね」

「…おれっ…そ…ご…に、気をつけろ…言われたの、に…」

「…子供だったんだよ?十四郎の所為じゃない」

「けど…けど…やなのに…おれっ…何度も…」

「だって、そうしなきゃ、もっと酷い目に遭ったよ、きっと。それに、それは十四郎が望んだ事じゃなくて、無理やりそうされたんじゃん?俺ね、ちゃんと調べたの。男とする時、どこをどうすんのか」

「…えっ…」

 そこまで、してくれてたのか?躊躇いながらも?

「だってよ、間違った事して、痛い思いさせたくなかったしよ?女とすんのとそんなに変わりねぇだろとは思ったけど、そもそも身体が違うんだしよ?でね、気持ちが萎えていても、男の身体には、堪らないポイントがあるって知ったんだよ、俺。いや、そりゃお前も俺も男だしよ、生理的ナニはわかんだろ?けど、それ以外にもあるらしい。だから、お前が淫乱だとか、そんなんじゃねぇんだよ?ソイツはお前の無知に付け込んで、お前にそう思わせていただけ」

「……………」

「つか、知らなくても当たり前だよ、その頃から同性が好きだと自覚のあるヤツは知ってるかもしれねぇけど。それに、万人がそのポイントで感じるかって言ったら、そうじゃねぇだろうけど、大抵の男は堪んねぇらしいよ?まあ…もっと言えば、尿道だって、奥にそのポイントがあるみてぇだから、そこで感じる事も出来るみてぇだけどな」

「……………」

「…だから、俺が言いてぇのはさ、嫌なヤツにイかされた事をお前が恥じる必要はねぇってこと。俺だってさ、身体押さえ付けられてくすぐられたら、多分嫌でも笑っちまうよ。それと同じ気がするよ?」

「…銀時……」



 この感情は何だろう。同情されている気にはならなかった。口先だけで言葉を並べているようにも思えない。

「俺も男だし、気持ちより先に身体が反応する事もあるし、相手の合意があれば、特別な感情がなくたって、行為は出来ると思うよ。けどね…十四郎?お互いが好きで、お互いが求めてて、するセックスは何より気持ちイイんじゃねぇかな。少しづつ、相手のイイ所をみつけてってさ、攻めたり攻められたりしながらも、好きを共有しながらするセックスは最高なんじゃねぇかな。それは、お前の過去をなぞる行為をするより、ずっと昇華出来る事なんじゃねぇかな。それともこれは俺の願望?」

 銀時はそう言って俺にニッコリ笑って見せた。

 その笑顔で胸が苦しくなる。知らないから。こんな気持ちを俺は知らなかったから。

 空洞だった俺の心が満たされていくのを感じる。俺は何て言えばいい?こんなにあたたかいモノを受け取って、何を返せばいい?何を返せる?

 困ったように、笑みを浮かべた俺に

「…言って?」

 からかうように口の端を上げた銀時が言う。

「何て返事しなきゃなんねぇか、なんて考えねぇでいいから、言って?」

(…何…を?……)

「俺が好きだって、そう言って?十四郎?」












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