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大切なもの(レギュラス)


純血でスリザリンの彼と、混血でグリフィンドールの私、
恋人と呼べる仲になってからもう2年が経つ。

彼の家の事も少しは知っているし、覚悟はしていたつもりだった。



「僕、純血の女性とでないと結婚させてもらえないんです」

誰もいない空き教室で私の隣に座ったレギュラス・ブラックは寂しそうに言った。


「だからなまえとは一緒にいられない」


あまりにも突然で、何を言ったらいいかわからなかった。


「兄があんなだから僕が期待に応えないといけない。だから…」

普段は感情をあまり表に出さない彼が今日だけは悲しげな表情をしている。

付き合い始めた頃からこの空き教室はよく二人で来たが、いつもと違うことがみっつ。

いち、いつもお喋りな私が静かなこと。

に、いつも静かなレギュラスがよく喋ること。

さん、楽しい話じゃあ、ないこと。



「なまえならもっと良い人を見つけられると思う。それにどうせ別れなくてはいけないなら、今…」
「どうせとか言わないでよ」
「でも僕は…」


やっと言葉が出てきたかと思ったら、これか。


自分が心底嫌になった。

優しい彼は、ここで自分が涙を見せたら、傷ついてしまうだろう。


「これからは、また…」
「良いお友達に戻りましょう、でしょ?大丈夫だよ」
「うん…」


あはははっていつも私がレギュラスを馬鹿にするときにやる笑い方。

上手く笑えたかな。



「…ねえレギュラス、私の事好きだった?」
「……好きだった」
「良かった。私もだよ」


彼は複雑そうな顔をして、弱々しく微笑んだ。

自分が言ったのが現在の話か過去の話か、もしくは両方かがよくわからない。

あっちはどう解釈したのかがすごく気になるけど。


「私ね、家族想いなレギュラスが好き」
「別に家族想いって訳じゃ…」
「よし、もう寝よ寝よ!眠いしお腹空いたし。」
「ああ、僕は先生に用事があるから先に戻って。」
「うんっ、ばいばーい」


鳥肌が立つくらいの作り笑顔で走るように部屋を出た。
涙は部屋を出た途端になって溢れてきて、止まらない。



寮の談話室に戻るとシリウスが私に何か言いかけた。

こっちの事情を知ってかどうかわからないが、私はそれを無視して部屋に戻った。




本当に大切なものを手放すのが、こんなに悲しいことだったなんて。

涙が零れそうになってきて、ぎゅーっと枕を抱きしめた。


「がんばれ。レギュラス」


ずっと応援してるから




080919.
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