IS THIS LOVE?(ドラコ)
それは呪文学の授業の後のことだった。
「君、杖を落としたよ。」
「あ、すいません。どうもありがとう。」
「いえ。」
心優しい少年が自分の杖を拾ってくれたようだった。
しかし次の瞬間…
「何だ。グリフィンドールの女か。全く、拾って損したよ。」
「ねえ!ハリーも、酷いと思うでしょう!?」
「うん…。でもなまえ、杖を落とすって一体…」
怒りが治まらない様子のなまえにハーマイオニーはやれやれ、というように溜め息をついた。
「で?それはスリザリンの誰だったの?」
「わからない…でもいけ好かない奴よ!周りにいた人達に見覚えがあったの…!」
人の名前をまだ覚え切れていないなまえだが、黒い瞳を潤ませて真剣に主張する。
「スリザリンのいけ好かない奴なんて多過ぎて見当も付かないよ。それより僕、お腹がペコペコなんだけどな。」
そろそろ夕食時である。すでに生徒達の多くは大広間に移動を開始していた。
「ロンの言う通りだわ。さ、夕食に行きましょう。」
ハーマイオニーの言葉になまえは渋々従う事にする。
まあ見つけたところで直接文句を言うなんてとんでもないが、睨み付けてやるくらいならできる。
なまえは階段を降りて行った。
次の日、なまえ達は魔法薬学の授業のため移動していた。
「ああでもなまえ。魔法薬学はスリザリンと合同だぜ。お探しの奴が見つかるかもよ。嬉しくないけど。」
ロンが思い切り嫌そうな顔をしながら言った。
「でも多分あいつは上級生よ。背が私より全然大きかったもの。」
少し遅れて来た4人は適当に座れる場所を見つけ荷物を置き、各自が授業の準備に忙しくなる。
賑やかだった教室が急に静かになったことでスネイプが教室に到着したことがわかった。
今日の授業は簡単なすり傷に効く薬であるが、材料にはヒキガエルなど傷に塗布する気が失せそうなものが沢山ある。
「ヒキガエルを塗るくらいだったら自然治癒の方が何倍もいいわ。」
なまえはピンセットを蛙に近付けながら言った。
「でもなまえ、この薬は本当に良く効くのよ。」
そう言うハーマイオニーの鍋の中はすでに完成間近にまでなっている。
なまえも材料を順番通りに入れ終わり、大鍋を掻き混ぜていると後ろからネビル・ロングボトムの短い悲鳴が聞こえてきた。
「ネビル?どうし…」
最後まで言い終わらないうちになまえの顔にヒキガエルが命中した。
反動で蛙は下に落ちたがなまえは飛んで来た方向を睨みつける。
離れたところでクスクス笑いをしている集団―。スリザリンの中でも特に高慢な奴らが犯人だろう。
「…誰よ?」
なまえは落ちた蛙に視線を向けつつ聞いた。
「僕だよ。ポッターを狙ったつもりだったんだけどなあ。大丈夫だったかい?」
あのクスクス集団の真ん中にいた綺麗なブロンドの少年が名乗り出た。
その顔には、見覚えがある。
あの杖を拾ってくれた少年だ。
あっちもそれに気付いたらしく、何かを言いかけた。
しかしなまえは無言でその少年の方へ歩み寄り、蛙を手渡しで返すとそのまま自分の作業を続ける。
クスクス笑いの集団は呆気に取られていて何も言って来ない。
スネイプがざわついた教室に一瞬顔をしかめたが、すぐに静まったため何も言わなかった。
「なまえ…大丈夫?僕、気付くのが遅かった…」
ネビルが申し訳なさそうに言う。
「大丈夫よ。それより早く完成させないと終わっちゃうわ。」
なまえはまだ全然終わりそうにないネビルの大鍋を見て言った。
授業が終わり提出用も完成したらなまえは足早に教室を出てハリー達を待った。
「なまえ!待っててくれたんだ。あ、ハーマイオニーはロンを手伝ってるけどすぐ来ると思う…。
それよりさっきはごめん。僕のせいだ。」
最初に出て来たハリーがなまえに言った。
「気にしないで。ハリーは悪くないし、あいつが悪いんだから。」
「ああ…さっきのはスリザリンのマルフォイって奴だよ。あまり近づかない方がいい。」
「あんな奴。頼まれたって近づかないわ。」
なまえは杖のことも含めてマルフォイに敵意を感じていた。
「次会ったらヒキガエルじゃ済まないんだから」
「それはないんじゃないか?みょうじ。とか言ったか。」
突然名前を呼ばれてなまえは驚き振り向いた。
すると大鍋を手にしたマルフォイの姿。
「…何か用かしら。」
今にも杖を手に取ろうとするハリーを軽く制止し、なまえが皮肉たっぷりに微笑んだ。
「君の大鍋。教室に置きっぱなしだったんだよ。それより君、まさか僕と同い年だったなんて。1年生かと思っていたよ。今日はちゃんと杖を持ってるか?」
その言葉になまえは自分が鍋を持っていないことに気付き赤面する。
「杖は勿論持ってるわよ。鍋、どうもありがとう。」
全力で目を逸らしながらなまえは鍋を受け取った。
「どういたしまして。ところでお前…名前は?」
「…みょうじ。」
わざとファミリーネームだけぶっきらぼうに答える。
一刻も早くここから立ち去りたかった。
「ファーストネームは?」
「…なまえ」
「ふーん、僕はドラコ。ドラコ・マルフォイだ。」
そう言って少し笑うマルフォイになまえは何が何だかわからない。
てゆーかあんたの名前なんか聞いてない。
…だけど奴は笑うと少しかっこいい。
「ハリー、もう行こ?」
なまえはまだ警戒しているハリーに声を掛け、階段を上って行った。
マルフォイは何も言わずにその姿を見送る。
…あのマルフォイって奴、案外良い奴なのかもしれない。
何故かあの笑顔が頭ら離れない。
この気持ちを俗に何と呼ぶんだったっけ?
『This is love.』
080830.
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