ひと(ジェームズ)
学生時代ジェームズとあたしは同級生で、よく一緒にいた。
私がリリーの親友だったことで自然と話す機会があったのだ。(だって彼はリリーの追っかけだったんだから!)
一緒に授業をさぼったり、くだらない悪戯をしたり。
そんな日常の中で気付いたら私はジェームズに恋してしまっていたというわけだ。
あの頃、私はリリーになりたかった。
「結婚おめでとう。リリー、ジェームズ」
「ありがとう、みんな」
ジェームズ達が結婚して暫く経った頃、二人の家の庭で、仲間だけのパーティをした。
リリーの手作りケーキと一緒にコーヒーを頂いたのだ。
リリーとジェームズは照れ臭そうに幸せそうに笑ってシリウスから花束を受け取った。
「花はなまえのセレクトだぜ」
「そうなの?すごく綺麗ね」
小さな黄色と白の花に、それにバラの赤を合わせたなかなか派手な花束。
「なまえらしいね」
「ジェームズは派手好きだから」
眼鏡のレンズ越しに見えるジェームズの笑顔はヒマワリみたいで、私は自分が贈
ったバラより綺麗なのではないかと思った。
「…昔から僕となまえは似ているよね」
「嫌だよ私。リリーのストーカーだった男と似ているなんて」
向こうでみんなが談笑している。
私のとなりで、ジェームズは笑っている。
「なまえはいじわるだね」
「嫌だ人聞きの悪い。ジェームズの前限定ですよ」
「ははは。僕悪い事したかなあ」
私はジェームズみたいに上手く笑えないし。
「………でも、おめでとう」
「うん。ありがとう」
おまけに素直にもなれない。
「おーい!みんなで写真撮ろうぜ!」
シリウスの声で、私達二人の時間は終わった。
「写真だって。行こうよ、新郎様。」
「うん。ねえなまえ」
"君に逢えたことを幸せに思っているよ"
…ジェームズはそう言ってた。
私は全部無視して先を歩いた。
最後まで聞いてしまったらきっと泣いてしまうから
責めてしまうから
聞こえないふりをした。
あの日からずっと前に進まない自分が嫌になる。
リリーの真似をして飲んだブラックコーヒーは、今度は何だかしょっぱかった。
080303.
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