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ハルアベ同棲SSA
 


「いただきまーす」
「はい、どーぞ」

食卓についた俺達は、お互い向かいあって手を合わせた。
食卓に並べられた料理に目を見張る。
白い湯気から香る白米の匂いが食欲を誘った。

「隆也、和食て難しいんだろ。お前すげーな」
「……食べて味見てから言って下さいよ」

隆也に促されて、里芋の煮物をつまんだ。
口に運んで噛み締めると、隆也は俺の眉の動き一つも見逃さんとばかりに俺の顔を凝視してきた。

「あの……どうで」
「うんうめぇ!隆也すげぇ、天才!」
「……いや、そこまで言われると逆に嘘っぽいというか……」

大袈裟に褒め称える俺に呆れ顔を返して、隆也は自分の箸を手に取った。
だけど俺は、隆也が一瞬だけ見せた安堵の表情を見逃さなかった。


続けざまに2、3個里芋を口にしてよく味わう。
隆也が正面で同じく煮物を食べながら首を傾げる通り、この煮物は少し味が濃すぎるような気がした。
まぁだとしても、俺は料理が出来ない。
この味付けの何をどう変えたら良くなるかが俺にも分からないので、何の文句もない。
ベタだが、隆也が作ってくれた料理なら、俺はなんだって良い。なんだって美味しいんだ。


隆也は俺との同棲が決まった時からその準備期間の間に、母親から家事全般と料理について習ったのだそうだ。
それまで家の手伝いもそこそこだった隆也の突然の変化に母親は戸惑ったそうだが、自立する為だと隆也が理由づけると、張り切って教えてくれたらしい。
同棲初日、家事を一通り終わらせた隆也が「俺、男なんだけどな」と呟いたのが印象的だったが、隆也のお母さんには感謝している。

「てかお前、あんま無理すんなよ。専業主婦じゃないんだし」
「主婦ってとこから間違ってますよ」
「主婦だろー、こんだけ出来れば」


隆也と微妙にお互いの気持ちが汲み取りにくい冗談を交わしながら、俺は薄い味噌汁をすすった。
これが今の、うちの味だ。






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