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ハルアベお隣さんパロF


一人暮らしで、部屋に一人という状況は当たり前だ。
なのに引っ越し二日目にして、俺は早くも一人という状況に孤独を感じてしまっている。



「ていうか、なんなんだあの人……」

昨日初めて会ったばかりなのに、もう平然と俺の部屋に上がってくる隣人、榛名元希。
「良い男」なんてこっ恥かしい表現が似合うような人で、これは未だに認めたくないのだが……どうやら俺は、榛名に惚れてしまったらしい。
昨日初めて会ったばかりの、しかも男に。流石に自分の正気を疑う。
でも、そうなんだけど。


「もうだめだ……」

ベッドに顔を埋める今の俺には、しゅううと頭から湯気を出している表現がお似合いだろう。
頭の中で俺に笑いかけてくる榛名の表情を思い浮かべて死にたくなる。

だめだ、好きだ。
だってもう、こんなにも会いたい。

この壁を隔てた向こう側に榛名がいると思うと、どうしようもなく身体が熱くなった。
俺は気を紛らわそうと、昼食のメニューを考える。
どうせ食料が必要だし、買い物に行って、ついでに近所を散策してみよう。
やりたい事は沢山ある。


ひとまず服を着替えて簡単な片付けをし、早速外に出た。
三月末の空気は素肌に心地好く、俺はアパートの階段を降りる前に深呼吸をした。
そして階段を降りようとすると、カンカンと下方から階段を上がって来る音がした。
住人の誰かだろうか、と身構えると、間もなく足音の主が現れた。

「……あ、こんにちは」

「こ、こんにちは」

階段から現れた人物は、榛名と同い年くらいと思しき男だった。
昨日の挨拶回りでは見かけなかったが、先に挨拶をしてきた所を見ると、どうやらここの住人で間違いないなさそうだ。
コンビニのレジ袋を提げたその男は、眼鏡の奥に温厚そうな瞳を見せて笑いかけてくれた。

「え、君もしかして、新しくここに入った人?」

「はい、阿部隆也っていいます。そこの、奥から二番目の部屋に、昨日越して来ました」

「ほんと?じゃあお隣さんだね。俺秋丸恭平。よろしく」

秋丸と名乗った男は、どうやら昨日留守だった、榛名と反対側のお隣さんのようだ。
優しそうな人で良かった、と榛名とはまた別の安心感を抱きながら俺は頭を下げる。
秋丸は笑って、話を繋いだ。

「どうしたの、早速どっか出掛ける?」

「はい、買い出しに行こうかなって……あ、この辺スーパーとかありますか?」
とりあえずぶらついてみるつもりでいたが、どうせなら聞いておいた方が早い。
そんな軽い考えで言ってみたのに、秋丸は予想外の提案を口にした。

「歩いて行ける距離なら3件くらいあるよ。俺も行きたいし、良かったら案内しようか」






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