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ハルアベお隣さんパロC


先日買ったばかりの折り畳み式机を出して、俺はそこにお湯を入れたカップラーメンを二つ置いた。

「タカヤは春から大学生だろ?」

「え、なんで知ってるんですか」

榛名が予言者のようにはっきりとした口調で当ててきたので、俺は目を丸くしながら尋ね返した。

「本棚に参考書あるし、てかこの時期ここに越してくんだからそうかなーって」

「洞察力あるんですね、榛名さんて」

「だって俺も去年の今頃ここに越して来たんだぜ」

ニカッ、と独特の爽やかで豪快な笑顔を見せて、榛名は言う。

「え……じゃあ、俺の一コ上?」

「そう」

なんだ、もっと上かと思ってた。
なんとなく肩の力が抜けて、それから改めて榛名の顔を眺める。
端正でありながらも飾り気のないその顔は、嬉しそうにカップラーメンを見つめていた。
視線がこちらに向いていないのを良い事に思う存分観察していたが、ふいに顔を上げられて俺は慌てて目を逸らした。

「つか、年下っつー確信があったから最初からタメ口なんだぜ。あと多分もう三分経った!」

榛名はそう言うや否や、カップラーメンの蓋を取って旨そうに麺を啜る。
つられてがっついてみたが、猫舌の俺にはまだ早いようだった。

「でさ、タカヤは春からどこの学校行くんだよ」

どうにか追いつこうと麺をはふはふ冷ます俺に、榛名は更に質問を投げかける。
冷ました麺を頬張るか話を優先させるか思案して、仕方なく麺をスープの中に戻した。

「こっからバスで一本の、武蔵野大学ですよ。通学しやすいんで、このアパート選んだんです」

そう言った直後、一瞬榛名の表情が固まった。
けれどすぐにぱあっと目を輝かせて、榛名は身を乗り出す。

「マジで!?俺も!俺も武蔵野!」

「へ?うそ」

後輩じゃん!すげー、お隣さんが同じ学校かよ!と榛名は心底嬉しそうに顔を綻ばせる。
対する俺は、榛名の無邪気な笑顔を見て、再び胸の奥に妙な感覚を覚えていた。
それは胸騒ぎに似た、渦巻くような、熱さ。


「あのさタカヤ、俺ちょくちょくこっち遊び来ても良い?」


部屋には俺達しかいないのに、榛名は内緒話のように声を顰めて俺の顔を覗き込んだ。
思わずどきりとして、でも今度は目を逸らす事も出来ずに、俺は操られるように頷いた。


「は、榛名さんが良ければ……」


榛名の目が緩やかに細まる。
その時の俺にはしなやかで美しく、優しい笑顔に見えたのだが、後の俺が見ればそれは策士の笑みだと危険信号を送ったに違いない。
もちろん、この時の俺は知る由もなく。


「元希、でいいよ」


どんなに後の俺がやめておけと叫んでも、どうしても止められなかった。
俺の頭に触れる温かい掌に、俺は確かに、恋愛感情を覚えた。






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