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ハルアベ同棲SSE



「ん……」

窓から差し込む光の眩しさと体勢の違和感から、俺はじんわり眠りから覚めた。
それと同時に、今自分が置かれている状況を確かめる。
ソファーに、俺、掛け布団、朝。
俺はシンプルに物事を把握し、そしてはっと息を飲んだ。
ただでさえ低血圧な朝なのに、俺は重ねて顔を青くした。

「たか、や……っ」

反射的な独り言を呟いて、辺りを見渡す。
ついでに目に入って来た時計が指す時刻は8時30分。
今日が休日でなければ、とっくに寝過ごしていた所だ。

「あ、元希さん、おはようございます」

朝っぱらからあたふたしている俺に、リビング前のドアから隆也が顔を出して声を掛けた。
俺は何故か急激にほっとして、目をこすってソファーから起き上がった。

「すごいですね、ずっとぶっ通しで寝てたんですか?俺、起こさずにいたんですけど、寝違えたりしてないですか?」

何やら本の束を抱えながら、隆也は滑らかに言葉を紡ぐ。
その様子を見ると、隆也は俺より随分前に目覚めていたようだ。

「や……大丈夫。ショックではあったけど……自分に」

「そう」

自分なりに意味深な発言をしたつもりだったが、隆也は特に気にも留めず、あっさり流されてしまった。

「とりあえず、顔洗って食パン焼いて食べて下さいよ。バナナジュースは冷蔵庫、机の上のもどうぞ」

手でざっくり指し示して朝食を促しながら、隆也はテキパキと自分の作業を続けた。
その動きの良さに感心し、しかしそれとは正反対にだらだらと洗面所へ向かう俺に、隆也は思いついたように声を掛けた。

「それと、元希さん」

「んー?」

「俺、早起きして今家の事を色々済ませちゃってます。あとこれ片付けたら、もうバッチリです」

「……なにが?」

隆也の言葉の意味を汲み取れず、素直に訊ねてみる。
すると隆也は意図的なイタズラっぽい笑みを浮かべて、こう言った。

「これが終わったら、もうする事もないんです。だからその分の時間を、元希さんにあげられますよ」



ずばーん。
そんな音を立てて、俺の心臓は、ばっちりど真ん中を撃ち抜かれた。
隆也の魅力に、俺は理屈抜きに、単純に、射抜かれてしまったのである。

「すぐ飯食って準備する!」

踵を返し、大股で駆ける。
早く、早く、一秒でも長く。


背を向けたリビングから、
「今日は良い天気ですねぇ」
と、隆也の悠長な独り言が聞こえた。






あきゅろす。
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