「榛名さんっ、て、カッコいい…よね!」
ハァ?と思いつつ横を見ると、やけにニヤついて嬉しそうな三橋がいた。
『コイツ…もしかして…』
【憧れのヒト】
「カッコいーって、どこが」
「えと、球…速い…し、男らしい、し…」
「どこが!性格はかなーりねちっこいぞ!…まぁ確かに顔はまあまあだが…」
ぼやっと頭の上に奴の顔が浮かんだ。
二カッと笑いかけてくる想像の中の榛名に、俺は背筋がぞっとした。
「思い出しただけで虫酸が走る…」
「そ、なの?」
「つか何いきなり。榛名が気になんの?」
ぼんっと三橋の顔が赤に染まった。
それを咄嗟に右手で隠す。
『え…嘘、だろ…』
もしかしたら俺の知らない間に、とんでもない事が起きてしまったのかもしれない。
「三橋ッ正気に戻れ!アイツはなぁ…すぐ人の事馬鹿にするしからかうし、キレやすくて根性無くて、人の気持ち考えもしねー最ッ低の…」
そこではっと我に返った。
三橋がぽかーんとして俺を見つめている。
『しまった…なんでこんなに熱くなってんだ俺…』
「阿部くん…て、榛名さんの事、本当によく見てたんだ…ね」
「は?」
「榛名さんの事ってなると、よく、話してくれる…」
俺は目をパチクリさせた。
「ダイジョ、ブっ!俺は榛名さん、をー、とらないーよー」
三橋はぴょんぴょんと運動場へ走って行った。
俺は呆然としたままその後ろ姿を見送る。
「…………ちょっと待て三橋!誤解だ!!!」
また脳内に浮かんできやがったアイツの憎たらしい笑顔を書き消して、
俺はマウンドに駆けて行った。