朝の天気予報は、当たらないようでほとんどがまんまと当たってしまう。
今日の天気は曇りのち雨、だった。
【降水確率80%】
パラパラと空から雨粒が落ちて来る。
地面に沢山の斑点を作ったそれは、やがてグラウンドの色を濃く塗り直していった。
練習が早めに切り上がったので、着替えを済ませた俺はカバンを漁って、奥底にあった折り畳みの傘を引っ張り出した。
その行為が合図であるかの様に、俺はいつもの一声を、今日もまた耳にしてしまったのである。
「隆也用意が良いじゃねーか!俺も入れろっ!」
降り続く雨のせいでますます暗くなった帰路には、何故かいつも一本の傘と一人の男が付き物だった。
コイツの性格上、常に折り畳みの傘を持って来る事までは望めない。
だがしかし朝の天気予報くらいはちょっとでも観て来いと。
俺は深く溜め息をついた。
「80%って言ってましたよ降水確率。こんな日くらい傘持って来たらどうっすか」
「俺は朝の時点で降ってなかったら傘なんて持って来ねーの!邪魔だし」
そんな話は全くもって奴らしかった。
ただそんな奴の為に、俺は左半分の肩と、膨らんだエナメルバックを濡らすハメになってしまうのだ。
「あー傘差すの疲れた!元希さんのが背高いんスから持って下さいよ」
「やだね!俺疲れてるもん」
「俺だって疲れてるんスけど…」
雨はずっと降り続いていた。
雨を吸い込んだ地面の匂いに紛れて確認出来る奴の匂いは、
何故かいつも、苛立っている筈の俺を安心させてくれるものだった。