[携帯モード] [URL送信]

小説(パロ)
act.1
放課後、ふと気づくと俺は屋上の扉の前にいた。考えごとしながら階段を上ってたせいで、どうやら自分の教室のある階を過ぎちまったようだ。
別に用はなかったが、なんとはなしにドアノブに手を掛け、回してみる。…鍵は掛けられていなかった。俺は、そのまま重い扉を開く。


開けた途端、茜色の空が視界いっぱいに広がった。俺は、真っ赤に焼けた太陽に目を細める。こんなに空が焼けているのを見るのは、久しぶりだ。そういや、こんなふうに空を見上げることも、最近はなかったかもしれねぇな。
何故だか、昔、赤とんぼを追ったことを思い出した。あん時は良かった…小難しいことは何にも考えずに済んだ。ただ、毎日楽しく過ごすことしか考えてなかった。

(そういや、かくれんぼしてる時、自分が鬼になると総悟のやつ、よく俺らをほったらかして勝手に帰ってやがったな)

せっかく思い出に浸ってたってのに、総悟のせいで何かムシャクシャしてきやがった。明日、総悟の野郎に八つ当たりしてやるか…そんなことを思いながら、俺はもっとよく空を見るために、一歩を踏み出す。
…その時だった。視界の端で何かが動いたのに気づき、俺は視線を向けた。

 
赤い髪が見えた。炎のように燃える赤い髪……いや、赤く見えたのは、夕陽に焦がれた銀髪。背筋がゾクッと震える。


屋上のフェンスにもたれ掛かって、どうやら寝てるみてぇだ。見かけない奴だな。スーツを着てるってことは、ここの生徒じゃねぇのか。
起きる気配はない…好奇心なのか、その銀髪に惹かれたのか、俺は足音を立てないように近づいた。

そっと手を伸ばす。指先が少しだけその髪に触れる……思ったよりも柔らけぇ… …


「……何してんの?」


指先が触れた数秒、そっちに気をとられてる間に、いきなり手首を捕まれた…狸寝入りだったのか!俺は慌てて、手を引っ込めた。そいつは、眠そうに一つ欠伸をしながら伸びをする。

俺はバツが悪くなって、ろくに相手を確認もしないまんま、その場から走り出した。一瞬だったが、そいつと視線が合った。その瞳は、空と同じ…いや、それよりも赤く…赤い…血のような色をしていた。

[次へ#]

1/2ページ

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!