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小説(パロ)
act.2
ある晴れた昼下がり。
その日は、昨日と同じ繰り返しでたぶん明日とも同じような、そんないつもと変わらない1日のはずでした。
その日がいつもと違っていたのは、白ヤギさんの家のほとんど使われたことのない郵便ポストに、手紙が来たことを知らせる旗が、ぴょこんと上がっていたこと。

それは数十分前に遡ります・・・

「来た・・・」

この日も時間通りに、黒ヤギさんが自転車に乗ってやって来ました。飲んでいたいちご牛乳を置き、カーテンで顔を隠しながら、窓に顔を寄せる白ヤギさん。
キィとブレーキの音がして、黒ヤギさんの自転車が、白ヤギさんの家の前で止まります。白ヤギさんは、自分の家の前で自転車を降りる黒ヤギさんを見て、胸をドキドキを高鳴らせました。
自転車で通り過ぎる横顔しか見たことのない白ヤギさんでしたから、思えばこんなにしっかりと、黒ヤギさんの顔を見たことがありませんでした。
黒ヤギさんはうつむき加減で手紙の宛先を確認すると、それを郵便ポストに投げ入れ、手紙が来たことを知らせるポストの横の旗を上げました。それはほんの数分のことでした。けれども白ヤギさんにとっては、時がゆっくりと進むかのように感じられる瞬間でした。

そのあと、黒ヤギさんの姿が完全に見えなくなるのを確認してから、白ヤギさんはそっと手紙を取りに行きました。ポストを開けるとそこには

『オオエド村三番地 銀時さま』

と書かれた白い封筒が入っていました。
白ヤギさんはその手紙を手に取ると、まるで宝物のように大事そうに抱え、すばやく家の中に戻りました。そして、パタンと後ろ手にドアを閉めると、彼はまじまじとその手紙を見つめました。
それは何の変哲もない白い封筒に入った手紙でした。けれど白ヤギさんにとっては、とても特別な手紙でした。 そっと手紙に頬を寄せると何だか温もりが感じられるような気さえします。
彼はその日1日、手紙を眺めながら過ごしました。手紙の封を切る素振りは全くありません。仕事をする時も、食事の時も、手紙は彼の目の届くところに置かれていました。
そして夜… 白ヤギさんは、とうとう手紙の封を開けないまま、手紙をお菓子の空き缶にしまってしまいました。そして、その缶を大事そうに抱え、白ヤギさんは満足そうな笑みを浮かべると、そっと目を閉じました。


その日、白ヤギさんは夢を見ました。それは何だかとても幸せな夢でした。朝起きた時、夢の内容は忘れてしまっていましたが、とてもいい気分です。白ヤギさんは生まれて初めて心がきゅっと暖かくなるのを感じたのでした。

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あきゅろす。
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