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小説(パロ)
act.3
灯りを消した部屋の中に、蝋燭の炎だけがゆらゆらと揺らめいていました。ほのかに炎の熱が、肌に伝わって来ます。

「いいか、アレだぞ。その…あんま上手くなくても笑うなよっ」

黒ヤギさんは照れくさそうにそう言ってから、誕生日の歌を歌いだしました。緊張しているせいなのか、少しぎこちない歌い方ではありましたが、よく通るいい歌声だと白ヤギさんは思いました。

「ハッピバースデー ディア 銀時……」

あと少しというところまで歌って、黒ヤギさんは歌うのをやめました。白ヤギさんが顔をあげると、蝋燭の炎にてらされて、黒ヤギさんは優しい笑顔を浮かべていうのが見えました。

「誕生日おめでとう銀時。お前の誕生日を祝えて俺は嬉しいぜ。さっ、火を吹き消してくれ」

黒ヤギさんの笑顔に見とれていた白ヤギさんは、あわてて蝋燭の火を吹き消します。炎が吹き消されて、一瞬暗闇に包まれたかろ思うと、突然パーンという音がして、白ヤギさんは驚いて目を丸くしたまま固まりました。
部屋の明かりが点くと、黒ヤギさんの手にクラッカーがあるのが見えました。クラッカーから飛び出した色とりどりの紙吹雪が、白ヤギさんの頭にかかっています。

「あははっ、なに鳩が豆鉄砲くらったような顔してるんだよ!」

クラッカーを鳴らした張本人の黒ヤギさんが、驚いた顔をしている白ヤギさんを見て笑いました。

「と…十四郎!銀さんデリケートなんだぞ!心臓止まったらどうすんだ!」

そう叫んで、黒ヤギさんに飛びかかる白ヤギさん。けれど、本気で怒っているわけではありません。その証拠に口元がほころんでいます。
今まで、こうしてからかわれたり、じゃれついたりすることもなかった白ヤギさんですから、そういう相手がいることが嬉しかったのでしょう。

「うわっ、銀時!あぶねぇって!」

勢いよく白ヤギさんが飛びついたせいで、白ヤギさんと黒ヤギさんはそのまま床に倒れこんでしまいました。

「いって…ててっ……わりぃ、十四郎大丈夫か?」

下敷きになっている黒ヤギさんに訊ねると、背中を打った黒ヤギさんが、うめきながら答えます。

「だ、大丈夫だ…つか、重いぞ銀時、さっさとどいてくれ」

けれど、白ヤギさんが動く気配はありません。黒ヤギさんは、不思議そうに白ヤギさんを見ました。

「……オイ、銀時?」

じっと白ヤギさんが見つめてきます。いつになく真剣な眼差しの白ヤギさんに、黒ヤギさんの心臓がバクバクと音を立て始めました。

「そのまんま、動くなよ」

白ヤギさんの言葉に、え?…と言い掛けて、その言葉を飲み込む黒ヤギさん。白ヤギさんの顔がだんだんと近づいて、吐息がかかるほど近くなりました。
黒ヤギさんの心臓は、いよいよ早鐘を打ちます。黒ヤギさんは目をぎゅっとつぶって、体をこわばらせました。


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あきゅろす。
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