小説(パロ)
act.2
「…き……銀時?…オイ、銀時っ!」
ハッとして目を覚ました白ヤギさんの顔を、黒ヤギさんが心配そうに覗き込んでいます。2、3度、目をパチパチさせると、白ヤギさんはゆっくりと息を吐き出しました。
「……夢か」
幼い頃から、何度も何度も繰り返し見ている夢です。ただ、今日みたいに会話したのは初めてでした。白ヤギさんは、額の汗を拭って深呼吸しました。
「準備出来たんで呼びに来たら、お前うなされてたぞ?」
今日は、白ヤギさんの誕生日でした。黒ヤギさんが、お祝いをしてくれると言って、家に来ていたのです。
「あんまいい夢じゃなかったみてぇだな」
そう言って、白ヤギさんの頭を撫でる黒ヤギさん。ふと、夢の中で頭を撫でてくれたあのヤギさんのことを思い出しました。
黒ヤギさんの手のひらは、同じように暖かくて優しくて、自然と白ヤギさんの目から涙がこぼれ落ちます。
「え?なんで泣いてんだ?…銀時、どっか痛ぇのか?」
白ヤギさんの手の甲に、ぽたりと涙が落ちたのが見えました。瞬きをするたびに、ぽたり…またぽたりと涙がこぼれます。
「ちがっ…そうじゃねぇ……けど、オレにも何かよく分かんねぇわ」
そんな白ヤギさんを見ていた黒ヤギさんは、思わず白ヤギさんを抱きしめました。そうしなくてはならないような気がしたのです。
「…考えて分かんねぇなら、もう考えんな」
白ヤギさんは何も答えませんでした。白ヤギさんは、まるで大きな子どものように無邪気に振舞うことがあります。それに振り回されることもありますが、黒ヤギさんはそれが嫌いではありませんでした。
「落ち着くまでこうしてろ。で、落ち着いたら一緒にケーキ食おうな」
黒ヤギさんの言葉に、白ヤギさんがぎゅっと抱きしめ返してきました。それが答えなのでしょう。少し息苦しい気もしましたが、白ヤギさんが泣き止むまで、黒ヤギさんは黙ってその背中をさすり続けました。
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