小説(パロ) act.1 (なんだ?…足が動かねぇ。体が石のようだ) 白ヤギさんが視線だけ下におろすと、体が小さくなっていました。幼い頃に戻ってしまったようです。一体、何が起きているのか分からない白ヤギさん。 「銀時!こっちに!」 突然、自分の名前を呼ばれて、呼ばれた方を振り向くと、タオルケットを片手に走って来るヤギさんが見えました。 そのヤギさんは、そのタオルケットで白ヤギさんの体をくるむと、白ヤギさんを抱えあげました。抱えられた肩越しに見えたのは、他の子ヤギたちが逃げ惑う姿と、それを追う黒くて大きな影。 「いいですか?僕がいいと言うまで、静かにここに隠れているんですよ?」 そこは、大きな古い時計の中でした。タオルケットを被ったまま、白ヤギさんはこくりとうなづきます。すると、そのヤギさんはにっこりと微笑んで、頭を撫でてくれました。 「銀時は、いつもいい子ですね」 それは暖かくて優しい手でした。パタンと時計の蓋が閉められ、白ヤギさんの視界は真っ暗になりました。 時計の中で耳を澄ませると、物が倒れる音やガラスの割れる音、バタバタと騒がしい足音……そして叫び声が聞こえてきました。怖くなって、タオルケットをぎゅっと握り締めて耳を塞ぐ白ヤギさん。 そのあとはどうなったのか分かりません。耳を塞いでいるのに、時計のチクタクという音だけがやけに耳に響いて、白ヤギさんはさらに強くタオルケットを握り締めました。 それからはずっと闇でした。まるで、出口のない闇を彷徨っているようでした。 [次へ#] [戻る] |