「………」 「………」 「………」 そこにあるのは沈黙。リタやエステルは唖然とユーリを見、レイヴンは青ざめながらユーリを見ていた。 「ゆ、ユーリ?」 その、もう一回言ってくれない? カロルの発言に注目を集めていたユーリ(なんだか疲れ気味な21歳)はもう一度口を開いた。 「俺、嫁に殺されるかも知れねえ」 で、冒頭に戻る。 いきなりの嫁発言。レイヴンは青年に越された…と一人なにか違うのだが他の三人(ジュディスはあらあらと微笑むのみ)は純粋にびっくりしていた。 うじうじとうざったい成人男性をずるずると引きずり帝都の入口から下町入口辺りまで来るとユーリは柱にかじりついて意地でも離れなくなった。 あまりにも情けない姿にカロルの眼が死んでいる。 「あ」 エステルが声をあげてみても暗雲を背負うユーリは知ったこっちゃない。 ユーリ以外はエステルの声に視線を戻せば、感嘆の声をあげた。 肩口で切られた蒼銀の髪に真っ赤な瞳が覗く酷く見目麗しい青年(仮)だった。買物帰りなのか紙袋を提げている。 顔が中性的で胸がないように見えるためたぶん青年というのがパーティーのおっさんの意見。 「わふっばうばうっ!」 その青年(仮)を見留めるとラピードがばたばたと尻尾を振り、その青年(仮)に駆け寄る。 すりすりと足下に擦り寄る珍しい彼の姿にエステルは羨ましそうな視線を投げ掛けた。 「!…ラピードっ!?」 青年(仮)はラピードを知っていたらしい。 まああんだけなついてたらねえ。と天才魔導士。 「ラピードが、いるっ…てことは」 きょろきょろと赤い瞳を動かし、それがある一点で止まる。 「………」 暗雲背負い未だ柱にかじりついたままの黒い青年にすうっと赤い双眸が細められた。 屈んでラピードに紙袋を渡す。それをしっかりとくわえるとラピードはパーティーメンバーの元へと帰ってきた。おかえりなさいラピード。紙袋をくわえているため無言だった。 「…おい黒助」 「その声…っ。!?」 地を這う低音だった。げしりとブーツの底で彼の頭を地面に押し付けた。そのままぐりぐりと足首回転。ぐぇっ。カエルが潰れたような声が出た。 「良い度胸だな連絡も寄越さずによぉ…!」 端正な顔に青筋が浮かび上がる。 どこから取り出したのか細身の刀を首筋にあてがい凄む。 「覚悟はいいか…?」 彼(仮)の身体から光が弾ける。もしかしなくとも。 「死んで詫びやがれ…!」 秘奥義発動だった。 「紹介するわ」 エステルにボトルかけまくってもらってグミ詰め込まれてライフが元に戻ったところでユーリが口を開く。 「俺の嫁さん」 「激しく不本意だが夫が世話になったな。悪かった」 女だったのか…。そっちが気になるパーティーメンバーだ。 「ふ、不本意ってなんだよアスカっ!」 「そのままの意味だローウェル」 「ローウェルって…おまえもだ「アスカという。見苦しいところを見せてしまい本当に申し訳ない」聞けって!」 「黙れ」 しょぼくれたユーリにカロルの眼が冷める冷める。 「で、何か言うことは?」 「すいませんでしたっ!」 町中での土下座にとうとうカロルが目を覆った。 一回かぎりだからな (肝に命じます) (ったく、選択誤ったかなあ) (!) (フレンに乗り換えようか…) (!!!) 男勝りな嫁さんが書きたかったんだ。 可愛らしい嫁さんは見かけるけどもっとはっちゃけさせたかったんだ。 夢主さんはユーリとフレンが居ないから結構下町で頑張ってるあたりストレス溜まったんじゃないかと思うよ。 2009.5.24 五十嵐 2009.5.26修正。?→仮へ。 |