[携帯モード] [URL送信]


ガサガサ。ガサガサ。
痛っ、おいおい枝かよ。額掠っちまったー、って…ちょっと待て。


「何でこんなとこ通ってんだ、俺?」

『…気にするな』

「気になるっての!アンタはアンタで歩きだしたら無口になるし!」

『喋ることがない』

「…歳は?」

『レディに何を聞く』

「…趣味は?」

『瞑想』

「…特技は?」

『黙り込むこと』

「…婚約者は?」

『お前に興味はない』

「……」


ダメだ。何がダメって俺はこんなキャラじゃないんだ。
初めてなんですけど。ここまで一方通行な会話初めてなんですけど。

未だ土の色が見当たらない獣道に、不安と不満の色を隠しきれない。そんな忍、シカマルの前を歩く朱に包まれた少女は、惑うことなく前を進んでいる。
姫と聞いていたものだから、周りには護衛の者や牛車なるものがあるかと思えば、意外にも少女は1人だという。そして彼女は見上げていた門から目を離し、振り返ることなく里を後にした。


『おい、忍。お前…木の上跳べるか?』

「…人並みには」

『私を抱えて跳べ。東の方角へ向かって、だ』
「東の?それって逆方向じゃ、」

『ここからは、歩いていくには困難な道が続く。早くしろ』

「…へぇーへぇー」


わかりましたよっ、と言いながら手早く地面…とは言えない地を蹴る。
もちろん姫も忘れずに、俗に言うお姫様だっこをして。音もなく近くの大木に飛び移り、チラリと姫を見やれば、行け。と目でのご命令。

何を考えてんだか…全く読めねぇ。

俺自身も分かりやすい奴ではないと自他共に認めているが。こいつは俺以上に読めねぇんじゃないかと、ふと思ったその時だった。


『向かっているのはお前も察しているように故郷とは全くの別方向。そこに、私は用がある』

「な、用って…帰郷するんじゃないのかよ?」

『…木の葉の里へ依頼したのは父上だ。私は1人でもよかった』

「1人、って…」

『だから』

「…」

『…この森を抜けたら、お前は帰れ。任務はそこで終わりだ』


肌に感じる風はやけに冷たく、抱えている少女には顔色を伺うことを拒まれているかのよう。


『もう、これ以上…』

関わりたくないのに。


下を向くことを赦されない状況で、昆虫の羽音よりも小さくか細い声が耳に届いた。



[*前へ][次へ#]

あきゅろす。
無料HPエムペ!