2 「つーことで、俺が今回の任務に当たらせていただく奈良シカマ、」 『知っておる。早く行くぞ』 「え、ちょ、あんた1人かよ?」 『主には他に誰か見えておるのか?面白い眼であるな』 「いや、あんた仮にも一国の姫なんだろ?なんの護衛もなしに…」 『そんなことをしたら目立つではないか』 よく言う。 小さく毒づいた言葉は、"姫"に聞かれることなく風にかき消された。 火影室を離れ向かった先は、里の出入り口。堂々と聳え立つ門は一体何人の人を出迎え、そして見送ったのだろう。 この門を見る度に、また見られるだろうかと心に湧く不安は忍ならではのもの。 自然と視界に入る門に、今日もまたそんな想いを抱くのかと考えていた矢先、門よりも先に目に入ったのは同じ歳くらいの少女だった。 整った完璧な顔立ち、とは言わないまでも周りを取り巻く空気は目を見張るもの。事前に聞いてはいたものの、一国を治めるともなるとこうも違うのかと、彼女の身を包む朱の羽織りから目が離せなかった。 「何、見てたんだ?」 『忍風情が口を慎め』 「…すんません」 確かに気質はある。あるのだが、見た目はあどけない少女。 任務でなければ敬語を使うだなんて有り得ない。ましてや話したのは今が初めてではないのだ。 「…あー、さっき聞いていた通り、火影から直々に任務が下っ…りましたんで。」 『私が嘘をつくとでも思っていたのか?』 「いや、そういう訳じゃねぇ…ないです」 『………』 初めて話したのは、丁度任務の報告を終えた後。ぶらりと里を歩いていたところ、着いてこいと言われ、半ば強制的に火影室へと逆戻り。 そこで言い渡された新たな任務は、姫君の護衛と近辺調査。 ついさっき、ご苦労。暫く休んでていいぞ。とか言ってなかったか? 「一応護衛任務なんで…1人でウロウロしないでくれ…下さい」 『…不器用な奴。もうよい、普通に話せ』 眉をひそめて呆れたように、そう言った少女は再び門を見つめた。 俺には見えない何かが見えているのだろうか。だとしたらそれは瞳術なのだろうか。 もしかしたら俺は…めんどくせー事に巻き込まれているんじゃないのか、と本日何度目かの溜め息が漏れた。 『…これを、』 「え?」 『この門を、見ておった。来る者を拒まず、去る者を追わず。何とも心強いと思わないか?』 そう言う少女、もとい姫は無表情で。何を考えているのかわからない。 …やっぱり。 難癖ありそうだ。文字 [*前へ][次へ#] |